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ラウタロ・マルティネス 名門復活のキーマン【雑誌SKアーカイブ】

2020.04.02

[サッカーキング No.008(2019年12月号)掲載]

長らく続いたユヴェントスの一強時代に、ついに終止符が打たれるかもしれない。
開幕6連勝と好スタートを切ったインテルは、そんな期待を抱かせる。
しかし同時に、多くのインテリスタがこう思っている。
今シーズンこそは、信じていいのだろうか?
彼は言う。「今シーズンのインテルは一味違う」と。

インタビュー・文=セルヒオ・レビンスキー
翻訳=井川洋一
写真=ゲッティ イメージズ

コンテの指導と采配で変化するチーム

──今シーズンのインテルは、アントニオ・コンテ新監督のもとでいいチームになったと思う。
僕もそう思うよ。昨シーズンから、すべてが変わったんだ。コンテ監督はチーム全体を向上させている。彼はフットボールとともに生きていて、あらゆるディテールを突き詰める指揮官だ。彼ほどのこだわりを持った監督には会ったことがない。

──ディテールとは?
練習ではとにかくインテンシティにこだわる。気の抜けたプレーは一切許されないんだ。トレーニングと試合への準備も徹底している。相手をとことん研究して、僕たちがやるべきことを事細かに伝えてくれる。それから、選手たちが口にするものにも、的確な指導をしてくれるんだ。インテルには専属の栄養士がいて、選手の体の回復や改善に適した食事法を提案してくれる。各分野のエキスパートの力を借りて、監督はチームや選手が今どんな状態なのかを知り、何が必要なのかを常に考えている。だから、チームも個人も成長できているんだと思う。

──インテルのサッカーは、具体的にどう変化した?
まず、メンタリティが変わったと思う。今シーズンのチームはすごく攻撃的である一方で、どんな状況でも慌てることがない。おそらくそれは監督の影響だけでなく、新しく入ったディエゴ・ゴディンの存在も大きい。ウルグアイ代表やアトレティコ・マドリードで長年ディフェンスの要だった彼は、これまでに培った経験をチームメートに伝え、安心感をもたらしてくれている。攻撃陣では、ロメル・ルカクやアレクシス・サンチェスといった各国の代表選手が加わった。的確な補強で隙のない陣容ができた今のインテルは、コンテ監督の指導と采配のもとで、どんな相手にも対応できるようになった。

──セリエAはかつて、世界一のリーグと謳われていたけど、今ではイングランドやスペインにその座を奪われてしまった。チャンピオンズリーグを見ても、2010年のインテル以降、イタリアから優勝チームが出ていない。
そうだね。

──実際にセリエAでプレーして、君はどう感じている?
まだ1年ちょっとしかプレーしていないけど、レベルはとても高いと感じている。CLで国外のクラブと対戦しても、決してウチが劣っているとは思わないし、一流の選手たちが集まってきている。まあ、ユヴェントスは頭一つ抜けているかもしれないけどね。でもナポリやアタランタ、ローマ、そして僕らインテルといった上位陣の実力はほぼ互角だと思う。クラブの練習施設やスタジアムの状態も素晴らしいよ。

──最近、バルセロナが君の獲得を狙っていると報じられたけど、スペインでプレーしたいとは思わない?
現時点では、全く思わない。ここでのサッカーに完全に集中しているし、生活に何の不自由もない。今はインテルで成功したいと思っている。でも、将来のことは分からない。リオネル・メッシとプレーできるチャンスが訪れれば、それを喜ばない人はいないだろうね。

──今シーズンは前線でコンビを組むルカクと、とてもいい関係を築いているように見える。欧州屈指の破壊力を備えた2トップと言ってもいいだろう。
ロメルが加入して、まずその大きくて頑丈な体に驚かされたよ(笑)。彼はナイスガイでスペイン語も話すから、すぐに打ち解けることができた。いや、彼の言語力は本当にすごいんだ。もともとネイティブのフランス語とオランダ語のほかに、英語、ポルトガル語、スペイン語、スワヒリ語を話せるし、ミラノに来てたった3カ月でイタリア語を覚えてしまった。彼はプレーだけでなく、コミュニケーション能力にも優れている。すでにチームでも重要な存在になっているよ。

セリエA屈指の破壊力と評されているL・マルティネスとルカクのコンビ[写真]=Getty Images


──君のイタリア語は上達している?
日常会話はできるようになってきたけど、まだまだメディアの前で話せるレベルではないかな(笑)。彼女は「もうできるんじゃない?」と言ってくれるんだけど、自信がなくてね。年が明ける頃までには、実現できるといいんだけど。

──10月末時点で、インテルは公式戦で2敗しかしていない。これはチームの成長とも言えるけど、敗れたバルサとユーヴェとの間にレベルの差は感じた?
確かに負けはしたけど、どちらも1-2の接戦だった。幸運にも僕は両試合でゴールを奪えたし、前向きに試合を終えられたよ。それにコンテ監督はいつもこう言っている。「タイトルを獲得したいからといって、そこだけを見るのはよくない。目の前の一戦一戦に集中することが大事だ」って。だから、僕は負けたあともネガティブな感情を引きずらないようにしている。逆にいくつかの重要な勝利のあとには、自信が深まった。まだまだシーズンは長いけど、ユーヴェにプレッシャーをかけることができていると思う。

──今シーズンこそ、タイトル争いは白熱するかな? ユーヴェの一強時代が8年も続いているけど……。
彼らは相変わらず強いけど、今シーズンのインテルは一味違う。ユーヴェの後ろにぴったりとつけているし、最後は彼らの9連覇を阻止できると信じている。きっとファンも、今シーズンこそ僕らがスクデットを取ると信じているはずだ。それはイタリアのカルチョ全体にとってもいいことだと思う。

※この記事はサッカーキング No.008(2019年12月号)に掲載された記事を再編集したものです。

 

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