2016.04.08

【プレビュー】G大阪ユース宮本恒靖監督の「調理法」に注目/高円宮杯プレミアリーグWEST

宮本恒靖
G大阪OBの宮本恒靖氏(写真は2005年)。今季からユースの監督を務める [写真]=Getty Images
2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

 高円宮杯プレミアリーグWESTも今年で5年目を迎えた。発足当初は上位グループと下位グループの実力差が大きい年も少なくなかったが、近年はその差も縮まってきている。昨季、上位常連だった名古屋グランパスU18が降格ギリギリにまで追い詰められた末に、奇跡的な残留を決めたのは象徴的な出来事だった。

 そんなリーグに今季から熊本県立大津高校と神戸弘陵学園高校の2チームが加わることとなった。大津は2013年にもこのリーグに参加して降格となった経験を持つが、実は東西通じて「返り咲き」を果たした初めてのチームとなる。「公立校には難しいと言われるリーグ」と平岡和徳総監督が言うように、毎年コンスタントに戦力を保つことや費用負担などのオフ・ザ・ピッチの部分も簡単ではない。ただ、だからこそ公立校が挑む価値もあると信じての挑戦だ。

 戦力を維持するという意味では、プレミアリーグでしばしば起きる現象が、「ピークの戦力をそろえた学年で昇格し、戦力の落ちたその翌年のリーグで苦戦する」というパターン。かつて大津がDF植田直通(現鹿島アントラーズ)、MF豊川雄太(現ファジアーノ岡山)を擁した年に昇格し、その翌年に唇を噛む結果となった。今回も二人がプロ入りした学年が卒業していった次シーズンである。平岡監督は「難しい問題ですよね」としながらも、GK前田勇矢、MF杉山直宏といった昨年からの選手に加えて、「いいメンバーが来てくれた」(平岡監督)という新1年生も活用しながら戦い抜く考えだ。一方、神戸弘陵も昨季のメンバーの多くが卒業。MF谷後滉人など好選手もいるが、戦力的には苦しい面もある。それだけに谷純一監督は「試合ごとに選手を上手く、強くしていきたい」と意気込む。

 一方、西日本の高校サッカー勢で唯一初年度から残留を続けているチームもある。今年1月の高校サッカー選手権を制した東福岡高校である。「本当に毎年大変ですよ」と言う森重潤也監督は同時に、「少しずつ(プレミアリーグでの戦い方が)分かってきた部分はある」と蓄積された経験値が財産になっていることも明かす。Jクラブユースに対抗することも考えて力を入れたフィジカル面の強化は、選手権での優勝という形に結実した。新たに10番を背負うMF藤川虎太朗、アンカーの鍬先祐弥、高性能サイドバック(SB)小田逸稀、新主将のDF児玉慎太郎など核になる選手も昨季リーグ2位のチームから残っているのは大きい。「今年こそは(優勝を)狙いたい」と児玉主将も力を込める。

 ただし、EASTと違って一度も覇権を譲っていないWESTのJクラブユース勢も黙ってはいない。沢田謙太郎監督を迎えて2年目となるサンフレッチェ広島F.Cユースはその方針も浸透。「昨年より、もう少しやれると思う」と指揮官の表現は控えめだが、地力のあるチームなのは間違いない。昨季タフな残留争いに巻き込まれた経験も、選手を鍛えるという意味ではポジティブだった。最注目は飛び級でU-19日本代表候補に呼ばれているGK大迫敬介だが、「去年一番成長した」と沢田監督が太鼓判を押す新主将のDFイヨハ理ヘンリー、強気のプレーが光るMF仙波大志、多彩な技術を持つFW満田誠、攻撃の中心となるFW山根永遠などタレントは豊富。スタートダッシュが決まれば、頂点も見える陣容だ。

 タレントという意味では、セレッソ大阪U-18も外せない。メンバーリストにはU-19日本代表に選ばれ続けている左利きの左SB舩木翔や、競り合えてパスもさばけるセンターバック森下怜哉、豊富な運動量でかき回しながらゴールに迫るMF斧澤隼輝、U-16日本代表のパワフルFW山田寛人といった選手が居並ぶ。ただ、今季からC大阪U-23がJ3リーグに参戦している影響で、彼らがU-18チームで出場するかは定まっていない。U-16日本代表の新1年生MF喜田陽、DF瀬古歩夢といった選手たちも含めて総力戦の運用で選手を鍛えてリーグを戦い抜くこととなりそうだ。

 一方、同じ大阪のライバルであり、昨季のWEST王者でもあるガンバ大阪ユースは今季からクラブレジェンドの宮本恒靖氏を新監督に抜擢。前監督の梅津博徳氏がコーチに回る形でサポート体制も作り、初めての監督業を支えている。「まだ監督と呼ばれるのは慣れていないので戸惑う日々」と宮本監督は言うが、開幕前の練習試合では前からハメ込んでいく守備を試行するなど、いままでのG大阪ユースでは見られなかった形も実践。両足から精度の高いキックを見せるFW食野亮太郎など個性のある選手はいるだけに、監督の「調理法」に注目が集まる。

 同じ関西勢でしばしば優勝を争ってきた京都サンガF.C. U-18とヴィッセル神戸U-18も名選手が監督を務めるという共通項がある。京都はかつて日本代表で宮本氏と激しくポジションを争った森岡隆三監督を迎えて2年目のシーズンとなる。昨季は監督にとっても手探りの部分があっただけに、選手の課題を把握した今季のアプローチに注目が集まるところ。186センチの大型で左足のキックが光るDF麻田将吾など力のある選手を各ポジションに擁する。一方、神戸を率いる野田知監督はかつて横浜マリノス(現横浜FM)の黄金時代を支えた名ボランチ。昨季は優勝争いに関与しない初めてのシーズンとなってしまったが、MF野田樹、安井拓也、FW永澤竜亮など当時のメンバーが半数ほど残ったチーム力のベースは高く、優勝候補の一角を担う。

 昨季昇格初年度で3位に入った大分トリニータU-18は、今季から中村有新監督を迎えて挑戦のシーズンとなる。勝負強いGK真木晃平、大分らしい強健さを持つDF戸髙航汰、多彩な技術と驚きのセンスを持つMF酒井将輝など個性のある選手たちをどう組み合わせていくか。開幕前に負傷者が続発してしまった点の克服を含めて、経験豊富な指導者の手腕に対する期待は大きい。

 そして昨季ギリギリの残留だった名古屋U18も新監督を招へい。かつて森山佳郎氏(現・U-16日本代表監督)の相棒として広島ユースを支えていた山崎真氏が指揮を執る。育成に一家言を持ち、「僕は正直に言って、やり切るだけ」と語る熱血漢が、名古屋の選手たちとどういった化学反応を起こすのか。個の力のベースはあるだけに、大化けの期待もあるシーズンとなる。

文=川端暁彦

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