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“有言実行”の決勝進出…独自のスタイルで王者撃破へ【ルヴァン杯決勝/北海道コンサドーレ札幌】

2019.10.24

[写真]=Jリーグ

 北海道コンサドーレ札幌がクラブ史上初のタイトル獲得を目指し、JリーグYBCルヴァンカップ決勝に挑む。1996年にクラブが発足して以降、J1昇格とJ2降格を繰り返し、いわゆるエレベータークラブの典型的な例として目されてきたクラブが、そこからの脱却を果たしいよいよ念願のタイトル奪取へと迫っている。日本最北の地方都市クラブが、新たな歴史をここに記そうとしているのだ。

 ファイナル進出を果たしただけでも札幌としては初の快挙であり、「素晴らしい結果」だとも言える。だが、地元出身のキャプテン宮澤裕樹はこう言い切る。

「ここでタイトルを獲るのと逃すのとでは大きく違う。逃したならば、『そういえば、あの年の札幌は結構頑張っていたよね』と数年後に言われて終わる程度。しっかりと歴史に残すにはあとひとつ、絶対に勝たなければいけない」

クラブ史上初の決勝へと導いた“ミシャスタイル”

ペトロヴィッチ監督は攻撃的なスタイルでチームを強化 [写真]=Jリーグ


 エレベータークラブからタイトル争いへと導いたのは、“ミシャ”ことミハイロ・ペトロヴィッチ監督だ。ポゼッションをベースとした攻撃的なスタイルでサンフレッチェ広島や浦和レッズをJ1上位に押し上げた東欧の指揮官が昨季から就任し、北の大地でも攻撃的サッカーを標榜してチームを強化。ミスを恐れず、積極的に仕掛けていくマインドを選手たちに叩き込み、昨季はJ1残留を争うどころかクラブ史上最高の4位でフィニッシュし、ACL出場権を競うところまで持っていった。

「クラブのポテンシャルや都市の規模を考えれば、札幌はもっともっと強くなれるはず。過去に対戦をしたときから私はそう感じていた」という予感を、自らの手腕によって現実のものとしたわけである。そして今季についても開幕前から「タイトル獲得を目指す」とぶち上げ、この通り。“有言実行”とは、まさにこのことだろう。あまりにも素晴らしい手腕だと言わざるを得ない。

 基本フォーメーションは3-4-2-1。この布陣がトランスフォームし、攻撃時にはボランチが最終ラインに下がって両ウイングバック、さらには左右CBを高い位置に押し上げて前がかりになる。守備時には両ウイングバックが下がって5バックのような形になる。この部分については広島、浦和時代のスタイルと共通していると言っていい。ただし、この札幌で築かれたミシャスタイルは、標榜するのはパスサッカーながらも、徹底したハードワークと要所での堅守速攻がうまくミックスされ、ソリッドさが増している。攻から守へとトランジッションした際のリスク管理の部分がより洗練されつつある印象だ。このファイナルの舞台でも、状況に応じてプレー選択を変える札幌版のミシャサッカーで強者・川崎フロンターレから勝機を見出すつもりだ。

多くの選手が色々な思いを重ねて…

準決勝では鈴木武蔵のゴールでガンバ大阪に勝利。クラブ史上初の決勝進出を果たした [写真]=Jリーグ


 気がかりなのはここにきて若干、負傷者が出てきているところ。直近のリーグ戦で途中退場した宮澤や、準決勝も含めて大事をとったチャナティップなど出場可否が不透明な選手がいるため、チームの総合力が問われる決戦となるだろう。

 川崎との対戦といえば、昨年9月に等々力で戦い0-7のスコアで大敗した試合のインパクトが大きい。華々しいファイナルを前にわざわざこの試合を振り返ることが不粋なことは十分に承知しているが、どの選手も「あの試合の悔しさは忘れられない」としており、この大舞台で借りを返そうと気持ちを高めている選手もいるだろう。エレベータークラブからの脱却を見事に果たした彼らである。いつの日か絶対に0-7の借りを返す日がやってくるような気がしているし、それがこのファイナルの舞台ならばいいな、と心のなかで願っておきたい。個人的な感情で恐縮だが。

 不粋ついででさらに振り返らせてもらうと、韓国人GKク・ソンユンは2015年に札幌加入をするまでは公式戦出場ゼロの選手だった。いまやJ1屈指のキッカーである福森晃斗も出場機会を求めて川崎から札幌に移ってきた選手だ。ストライカーのジェイも2017年途中に加入した際は無所属の立場だった。主に右サイドでハードワークを見せている白井康介も湘南ベルマーレでは思うような活躍ができず、愛媛FCに戦いの場を移してから札幌の目に留まった。多くの選手が色々な時期を経て、色々な思いを重ねてこの舞台まで駆け上がってきた。前述の宮澤の言葉を否定するつもりは毛頭ないが、現時点ですでに十分素晴らしい。どんな結果になろうとも、ファン、サポーターは彼らがこのファイナルへと歩んだ足跡をきっと忘れはしない。

 さあ、新たな1ページを書き記す時がきた。夢じゃない。世の中では「現実は厳しい」というフレーズをよく見聞きするが、すべてがそうとは限らない。札幌の選手たちが大観衆の埼玉スタジアムのピッチへと足を踏み入れる姿は、まぎれもなく素晴らしい現実だ。

文=斉藤宏則

北海道コンサドーレ札幌 予想スタメン


▼GK
ク・ソンユン

▼DF
進藤亮佑
キム・ミンテ
福森晃斗

▼MF
白井康介
深井一希
荒野拓馬
菅大輝

▼FW
鈴木武蔵
チャナティップ
ジェイ

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