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浸透続ける“湘南スタイル”! クラブに根付く哲学が勝ち取った「優勝」の二文字

2018.10.27

横浜FMを下し、ルヴァン杯を制した [写真]=兼子愼一郎

 実は昨日から、湘南ベルマーレがこの試合に懸ける並々ならぬ決意を感じていた。

 毎年、決勝前日の公式練習はスタジアムで1時間程度行われるのだが、湘南はなんとその前にサブグラウンドで非公開練習を実施したのだ。決戦を前に“2部練”をするクラブは今まで見たことがない。公式練習終了後、この事実を主将の高山薫に伝えると「えっ! そうなんですか! 湘南の2部練はあるあるなので(笑)」と、“逆にしないんですか?”くらいの勢いで言葉が返ってきた。

 そして迎えたファイナル、キックオフから湘南の持ち味であるアグレッシブな姿勢を示す。主審のホイッスルと同時に全員で一気に相手ゴールを目指すと、岡本拓也がいきなりシュート。さらに猛プレスをかけて相手陣内でボールを奪い、秋野央樹がフィニッシュ。開始わずか30秒で2本のシュートを放った。この試合で2シャドーの一角に入った石川俊輝は「言っていいのかわからないので……」と明言こそ避けたが、試合開始から「意志を示す」というチーム内での約束事はあったようだ。

 横浜F・マリノスのビルドアップに対しては、全員が連動した素早いチェックで攻撃の芽を摘んでいく。すると36分、またしても相手陣内でマイボールにすると、ドリブルで持ち上がった杉岡大暉が左足を一閃。貴重な先制点を挙げた。ボール保持率ではマリノスが64%と圧倒するも、ピンチらしいピンチもなく前半45分間が終了。曺貴裁監督も「前半はほぼパーフェクト」と選手たちを称えた。

杉岡のミドルが炸裂する [写真]=金田慎平

 後半はマリノスがさらに圧力をかける展開となったが、全員が体を張った守備でゴールラインを割らせない。「押し込まれる展開となりましたが、味方との距離感も近く、話せる環境だったので集中力は保ちやすかった」と3バックの中央を任される坂圭祐。ラスト10分はほぼ自陣でのプレーを強いられるも「事故がない限りは大丈夫だと思っていました」と守り抜く自信があったという。

 そしてタイムアップのホイッスル。昨季を含めJ2優勝の経験は2度あるものの、トップレベルでのタイトル獲得は1994年の天皇杯以来。曺監督はアカデミーの生徒たちから事前に色紙が贈呈されたことを明かしつつ、このルヴァン杯優勝は「クラブ全体の勝利」であることを強調した。

「ただ『勝ってください』『頑張ってください』『優勝してください』ではなく、8割くらいの子が『湘南スタイル』とか『湘南魂』という言葉を書いていました。小学生がそういったことを書くことに驚き、涙が出そうになりました。これはクラブ全体の勝利だと思います。僕はたまたま監督という立場でしたけど、いろいろな人がこの日を待ちわびていたと思います。今ここにいることを幸せに感じていますが、ここはゴールではなく通過点。ここからチームがどう変わっていくのか。そこに対しての責任は感じています」

 今年4月には“結果にコミット”でおなじみ、RIZAP(ライザップ)グループの傘下入り。「2020年までのタイトル獲得」を当初は目標に掲げていたが、初年度でいきなり頂点に立った。J2降格を経験しながらも、曺監督のもとで“湘南スタイル”を確立し、それはクラブの“ブレない哲学”となった。信じ抜いた先に待っていた念願のタイトルは、湘南というクラブをさらに加速させるきっかけになったことだろう。

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