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三好康児が川崎を決勝に導く“恩返し弾”…「苦しんだ時期」を支えたチームの温もり

2017.10.08

2ゴールで川崎を決勝へと導いた三好康児(左上)[写真]=Getty Images

 自分でも「今日、来るな」と感じていた。今大会初出場、初先発となった三好康児が29分と49分に2得点を挙げて、川崎フロンターレを決勝に導いた。

 実は三好が決めたこの2ゴールは、ともに森谷賢太郎が起点となったもの。前日に森谷とゴールを予言するやりとりがあったようで、三好は「賢太郎くんから『明日、点取るよ』って言われていて、僕も『あざす! 僕も取る気がします』と言い返していた」と、そのエピソードを明かした。

 4日前に行なわれた、アウェイでの2017JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第1戦。川崎は前半だけで3点を先行され、後半になんとか2点を返したものの2-3と第1戦を落としていた。

 悲願の初タイトルに向けて、どうしても負けられないホームでの第2戦。序盤からベガルタ仙台ゴールを攻め立てる。19分に家長昭博、中村憲剛、森谷、そしてエドワルド・ネットが絡んで川崎らしい美しいパスワークを披露し、ゴールの予感がし始める。そのシーンから10分後。

 森谷がゴール前にスルーパスを送ると、中村がゴールを背にしてボールを流す。「抜け出した時に『来た!』と思った」と、そこに走り込んできたのが三好だった。

「正直、シュートとか『もう入るだろ』っていう感じで。そんなに意識したわけでも、見えていたわけでもなかった。でも、トラップの時点でどこに打っても入るかなと思っていたので、狙ってというよりは『入れ!』という感じでした」

 そして49分の2点目。再び森谷がボールを持つと、右サイドを駆け上がってきたエウシーニョにパスを送る。エウシーニョが右足でシュートを放ち、GKが弾いたところに、三好がいた。

「本当に賢太郎くんから俺が受けて、そのままゴールに行ければという思いで中に入っていきました。そうしたらエウシーニョがいい形で抜け出してくれてラッキーでした」

 5月に韓国で行われたU-20ワールドカップでの三好の活躍は記憶に新しい。しかし新チームが始動してまもない時期での離脱は、必ずしも三好に良い結果をもたらさなかった。チームに戻ってきてからのリーグ戦での出場時間はわずか47分。出場機会に恵まれない日々が続いた。自分に何が足りないのか。ここまでを振り返り、「それを探すのに苦しんだ時期でもあった」とこぼした。

 そして「気持ちの部分が大きかった」ことに気付くことができた。「出場機会に恵まれないことで、練習から気持ちの面で劣っていることがありました。出たらやれるのになと思いながらも練習でアピールできていないこともあったので、そこの気持ちの折り合いは難しかった」。

 そんな中でも、監督を始め、先輩たちは温かかった。

「周りが(僕が感じていることを)感じ取ってくれて、ご飯に連れて行ってくれたり、声を掛けてくれたり、何が足りなくて、何を持っているのかを教えてくれたり。それによって自分の考え方も変わってきた。時間は掛かったけど、この終盤戦は自分の存在が大事だとみんなから言ってもらえていたので、監督もそうですし、(小林)悠くん、(谷口)彰悟さん、憲剛さんにも言ってもらえていたので、それを信じて、それが自分の糧になったんだと思います」

 自分自身のモヤモヤを吹っ切るゴールは、先輩たちへの恩返し弾でもあったのかもしれない。「ここで吹っ切れて、今日やれたことは大きかったかな」。

 ついに悲願のタイトル獲得に向けて、川崎は最後の扉をこじ開けた。2007年と09年での決勝戦を当時アカデミー生として観戦していた三好は、アカデミー生ながら「悔しい思いをしていた」と振り返る。その思いを、今度は自らの手で晴らす番だ。「次、勝つことが本当に一番欲しているもの」。三好は力強く、そう言い切った。

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