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【サッカーに生きる人たち】選手と創り上げた日本初の女子プロサッカーリーグ|岡島喜久子(WEリーグチェア)

[写真]=須田康暉

 本インタビューは、JAPANサッカーカレッジとサッカーキングの共同企画によって行われました。サッカー界の最前線で活躍されている方々に取材し、それぞれの仕事に対する思いやビジョンをお聞きする全3回の連載企画です。第1回となる今回は、WEリーグの初代チェアを務める岡島喜久子さんにインタビューを実施しました。

インタビュー・文=竹澤琴未(JAPANサッカーカレッジ|サッカービジネス科2年)

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「サッカーに対する愛情は絶対に大切だと思います」

 そう語るのは、昨年7月にWEリーグの初代チェアに就任した岡島喜久子さんだ。日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」開幕から約3カ月が経った今、開幕に至るまで、そして開幕を迎えての思いを岡島さんに聞いた。そこでは、“選手と一緒に作り上げるリーグ”など、Jリーグとは大きく違う素敵な面を多く知ることができた。

■チェア就任を引き受けたわけ

「2018年に開かれたメキシコオリンピック50周年記念パーティーで、元Jリーガーの金田喜稔さんと同席しました。その際、『君みたいな人に、日本の女子サッカーに貢献してほしい』と言われ、当時プロリーグ創設に向けて動いていた女子サッカー関係者と知り合うきっかけになりました。はじめはボランティアとして陰ながらお手伝いをしていましたが、正式にお話をいただき、私自身、日本の女子サッカー界に愛情があるのでWEリーグの初代チェアをお引き受けいたしました」

 岡島さんがチェア就任を引き受けた背景には、自分自身の体験からサッカー界に身を置く女性の環境を変えたいという思いがあったという。

「日本では、サッカーをする方は圧倒的に男性の方が多いですよね。長らく『サッカーは男性のスポーツである』と考えられてきたので、女性であるということが大きな障壁になっていました。私は1977年に台湾で行われたAFC女子選手権(現AFC女子アジアカップ)に参加しましたが、その頃、女子は日本サッカー協会に登録すらできませんでした」

 WEリーグが掲げる理念に、次のような言葉がある。「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」。この理念をとても大切に考えている岡島さんは、WEリーグに「WE ACTION DAY(理念推進日)」という制度を導入した。

「リーグに所属するのは11クラブ。どうしても1クラブが休みになってしまうので、そこで何をすべきか考えました。そこで、単に『休み』とするのではなく、理念を推進する日にしようと。選手たちがSDGsやジェンダー平等の理念に沿った活動をする日です。選手たちがSDGsのことを学んだり経験しながら、WEリーグの理念を体現できるのは意義があると思ったんです」

[写真]=WEリーグ

 実際、この「WE ACTION DAY(理念推進日)」によって選手自身も成長し、理念について真剣に考える機会になっているという。

「さらに、『クレド』という行動規範を作りました。各クラブから1人ずつ代表を出してもらい、3度ミーティングを行ったんです。その中で私たちは宿題を出しました。『私たちはファン・サポーターのために、〇〇を約束します』、『私たちは将来を担う子どもたちのために、〇〇を約束します』、『私たちは地域・社会のために、〇〇を約束します』……。その〇〇の部分を自分のチームに持ち帰って全員で話し合ってほしいという内容です。これまで選手たちがチームの皆とそういった話し合いをする機会はなかったですし、他のチームの意見を聞く機会もありませんでしたが、選手たちは非常に楽しみながら取り組んでくれましたね。その話し合いの結果、選手から挙がってきた言葉を持ち寄って、それをもとに『クレド』を決定しました。『クレド』を作るこの過程で、選手たちにWEリーグの理念がどんどん伝わっていった感じがありましたし、非常に成長してくれたと思います。それに、『自分たちでリーグを盛り上げていこう』という気持ちが芽生えたことで、SNSの投稿数も増えたんです」

■「プラス3200人」という壁

 そうして“世界一の女子サッカーリーグ”を目指し、リーグとクラブ、選手が一丸となって作り上げたWEリーグが今年9月に開幕した。しかし、来場者数は伸び悩んでいた。

「INAC神戸の開幕戦は5000人が上限のなか、4123人と多くのお客様にご来場いただきました。しかし、クラブによっては観客数が伸びていかず、1000人を切った試合もありました。第6節までの全試合平均来場者数は約1800人にとどまっています。2019年のなでしこリーグの1300人と比べると30パーセント以上多い数字ですが、あくまで私たちが目標としているのは5000人です。リーグにもクラブにも、やらなくてはいけないこと、できることがもっとあると思っていますので、引き続き注力していきたいと思っています」

[写真]=WEリーグ

 目標とする観客数には届いていないものの、WEリーグには、“女性であるからこそのJリーグにはない魅力”がたくさんある。三菱重工浦和レッズレディース対大宮アルディージャVENTSの“さいたまダービー”では、互いのサポーターが選手に拍手を送るという光景を目にすることができた。

「例えば浦和の場合、男子の試合では『勝負事だから』とマスコットはピッチに出てこないんですが、女子の試合では出してくださっています。それに、男子では現在、浦和と大宮はJ1とJ2でカテゴリーが違うためダービーを行えません。それもあってか、ファンの皆さんも楽しみにしていただいたのかなと思います。WEリーグでは埼玉県に3つチームがあるので、ぜひ盛り上げていきたいと思います」

 最後に、私たちJAPANサッカーカレッジの学生のように、サッカー界で活躍することを目指す学生に向けて言葉をいただいた。

「サッカーに対する愛情は絶対に大切だと思います。仕事が楽しくないのであれば、その仕事は向いてない。そう思って違う仕事を探した方がいいと思っています。仕事は楽しくあるべきです。もちろん、楽しくない日もあるかもしれませんが、『やっていてつらい』仕事は向いてないと考えて我慢せず転職した方がいい。好きなことを仕事にできるのは、非常に幸せなことです。だからサッカーに対する愛情があるうちは、ぜひ『女子サッカー界に役立つ人になりたい』という思いを持って頑張ってほしいと思います」

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