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蹴るコース、キッカーの順番、日本「0%」とクロアチア「100%」…W杯の“PK戦事情”を分析

2022.12.05

2006年大会のクロアチア戦でPKをストップする川口 [写真]=Getty Images

 FIFAワールドカップカタール2022では、現在決勝トーナメント1回戦(ラウンド16)の熱戦が繰り広げられている。5日には、日本代表が史上初のベスト8進出を懸けてクロアチア代表と対戦。前回大会準優勝の強豪との試合は激戦必至だろう。90分、場合によっては120分間でも決着がつかず、勝負がPK戦に委ねられる可能性もある。

 そこで、今回はW杯におけるPK戦について予習しておこう。

■PK戦の歴史

[写真]=Getty Images

 PK戦が導入された1978年大会から前回の2018年大会まで、これまでW杯では30回のPK戦が行われてきた。初めてW杯の試合がPK戦にもつれたのは1982年大会の準決勝。西ドイツ代表とフランス代表による欧州勢対決は、西ドイツの“ドリブルキング”ピエール・リトバルスキー、フランスの“英雄”ミシェル・プラティニのゴールで1-1のまま延長戦へ。延長戦では互いに2点ずつ奪い合って3-3となり、PK戦に突入した。結局、西ドイツ代表がW杯初のPK戦を5-4で制して勝ち上がったが、決勝でイタリア代表の前に屈して準優勝に終わっている。

 その1982年大会は決勝トーナメントがわずかに4試合。次の1986年大会から決勝トーナメントが現在のラウンド16制となったのだが、同大会は決勝トーナメント16試合のうち3試合でPK戦に突入した。1982年大会から前回の2018年大会までの過去10大会で、決勝トーナメントは計148試合。そのうち30試合がPK戦に突入しているので、PK戦までもつれ確率は「20%」。決して低くはない数字だろう。

 今大会では、ラウンド16のここまでの4試合がすべて90分内で決着。「20%」という確率を考えると、ラウンド16の5試合目となる「日本代表vsクロアチア代表戦」はPK戦までもつれる可能性が高まっている。ちなみに、現在のラウンド16制になった1986年大会以降、PK戦が行われなかった大会は1つもない。

■PK戦の蹴り方

 これまで、W杯では30回のPK戦で「279本」ものPKが蹴られてきた。そのうち「196本」が決まっており、成功する確率は「70%」と決して高くない。その中でも、蹴るコースによって成功率は変わってくる。イギリスメディア『BBC』によると、しっかりと左右を狙って蹴ったシュートが決まる確率はそれぞれ「74%」となっており、右と左のコースでは差がないという。一方で、ゴール中央に蹴ったPKが決まる確率は、63本中36本で「57%」まで下がってしまう。

 実は、GKに止められる確率というのは、どこに蹴ってもおよそ21%で大して変わらないそうだ。しかし、ゴール中央を狙ったシュートは枠外に外れる可能性が高いという。11%がクロスバーに嫌われ、さらに11%がバーの上に外れている。ちなみに左右を狙っていれば枠に嫌われる確率は3%、枠外に外れるのは1%だ。

 そのため、『BBC』が勧めるのは左右のどちらかを選んで蹴ることだ。もちろん、その裏をかいて中央に蹴って決める作戦もあると思うが、過去のデータを信じるのならサイドを狙うべきなのだろう……。

■PKキッカーの順番

 PK戦では、蹴る順番によって成功の確率が異なるが、最初の5人のキッカーのうち3番目までは似たような確率となっている。『BBC』によると1番手のキッカーが決める確率は「75%」で、5人の中で最も高い。PKを最も得意とする選手が1番手を蹴ることが多いため、こういったデータになっているのだろう。続く2番手は「73%」、3番手も「73%」と上々の確率を誇っている。しかし、そこから急に成功確率が下がっていく。プレッシャーが増していくからだろうか、4番手は「64%」、5番手は「65%」となっているのだ。

 また、W杯の歴史においてPK戦が6人目以降の、いわゆる“サドンデス”にもつれたのは30回のうち2回しかない。それが史上初のPK戦となった1982年大会の「西ドイツ代表 3-3(PK 5-4) フランス代表戦」と、1994年大会準々決勝の「スウェーデン代表 2-2(PK 5-4) ルーマニア代表戦」だ。どちらも6人目で決着がついており、7人目以降にもつれたことは一度もない。ちなみに6人目のキッカーの成功率は「50%」となっている。

 さらに、両チームのキッカーに区別を付けず、1~10人目と数えた場合、最も成功率が高いのは2番目(後攻の1番手)と5番目(先攻の3番手)で「77%」となっている。一方で、最も成功率が低いのは8番目(後攻の4番手)の「61%」だ。

 このデータから導き出されるのは、各チームの4番手と5番手の重要性だろう。だからといって、当然のことだが最も優秀なPKキッカーを5番手に置くのは愚策かもしれない。過去30回のPK戦を経験した計60チームのうち、5番手まで回らなかったチームが21チームもあるからだ。

 今年2月のアフリカネーションズカップ決勝戦のセネガル代表vsエジプト代表戦もPK戦での決着となり、セネガル代表が4-2で勝利したのだが、敗れたエジプト代表はエースのFWモハメド・サラーを5番手に置いており、彼まで順番が回ってこなかったためキッカーの順番について批判を集めていた。

■先攻か後攻か

 これまで、PK戦は先攻が有利だと言われてきた。一部の調査結果では先攻の勝率が「60%」とされており、明らかに先攻が有利だと信じられている。しかし、国民の期待を一身に背負うW杯のような究極の大舞台ともなると、先攻も後攻も関係ない。これまでの30回のPK戦では、先攻が15勝、後攻が15勝と全くのイーブンなのだ。

 ただし、最近は先攻と後攻で少し優劣が出てきている。前回の2018年大会ではPK戦が4回行われたが、4回とも後攻のチームが勝利している。W杯では直近6回のPK戦で、すべて後攻のチームが勝っている。ちなみに、それ以前は9回連続で先攻チームが勝利しており、何か流れのようなものがあるのかもしれない。

日本代表のPK戦

[写真]=Getty Images

 過去に日本代表がW杯でPK戦を経験したのはわずかに一度だけ。それが2010年大会のラウンド16・パラグアイ代表戦だ。試合はスコアレスのまま延長戦でも決着がつかず、PK戦に突入。後攻の日本代表は、PKに絶対の自信を持つ遠藤保仁が1本目を決めると、キャプテンの長谷部誠も2本目を確実に仕留めた。しかし3番手の駒野友一のシュートが、クロスバーに嫌われてしまう。4番手の本田圭佑が落ち着いて決めるも、先攻のパラグアイ代表に5本とも決められてしまい、3-5で涙を呑んだ。5番手には順番が回ってこなかった。

■クロアチア代表のPK戦

[写真]=Getty Images

 対するクロアチア代表は、これまでW杯でPK戦を二度経験している。その二度とも、準優勝に輝いた前回の2018年大会の時のものだ。クロアチア代表はラウンド16のデンマーク代表戦(1-1、PK 3-2)、ベスト8のロシア代表戦(2-2、PK 4-3)と、どちらもPK戦を制している。そのため、W杯でのPK戦勝率は「100%」。どちらも後攻で、しかも自分たちもPKを失敗しながら勝っているのだ。

 彼らの勝因は、PKストップに絶対の自信を持つ守護神ダニエル・スバシッチの存在だった。デンマーク代表戦ではPKを3本も止め、ロシア代表戦でも1本セーブ(さらに枠外が1本)した。スバシッチは、どちらの試合も相手の1本目を止めてクロアチア代表に流れを持ってきていた。

 だが、そのスバシッチは今大会には出場していない。さらにクロアチア代表は2試合で3本もPKを失敗しており、必ずしもPKのキックが上手いとは言えない。そのため、PK戦に突入しても日本代表に勝機は十分あるはずだ。

■各国のPK事情

 過去のデータだけを見れば、W杯での日本代表はPK戦での勝率が「0%」。一方でクロアチア代表は「100%」となっている。しかし、あまりにも母数が少ないデータなので気にする必要はない。ちなみに、W杯の歴史において2回以上PK戦を経験しながら勝率100%を維持しているのは2チームだけ。それがクロアチア代表とドイツ代表(西ドイツ代表時代を含め)である。ドイツ代表に至っては、4回もPK戦を経験しながら4回とも勝利している。

 また、W杯で最もPK戦を経験しているのはアルゼンチン代表の「5回」。結果は4勝1敗と優秀な成績を残している。一方で、イングランド代表、スペイン代表、イタリア代表は4回のうち1勝と、PK戦を苦手にしている。

 果たして今大会はどのようなPK戦が見られるのか。決勝トーナメントの戦いは、最後の最後まで目が離せない。

(記事/Footmedia)

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