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タフなアジアの戦いで得難い経験…U-19日本代表、W杯へまず第一歩

本戦出場権を獲得したU-19日本代表 [写真]=佐藤博之

 百聞は一見に如かず――。アジアの戦いで得られた経験値は何事にも代え難い。厳しい環境で勝ち抜き、選手たちは逞しさを増してラオスの地を後にした。

 冨樫剛一監督が率いるU-19日本代表が9月12日から18日までラオスで行なわれたAFC U20アジアカップウズベキスタン2023予選に挑み、4戦全勝の成績でグループCを1位で突破。アジアカップ本大会の出場権を獲得した。本大会には2023年5月下旬にインドネシアで開催されるU-20ワールドカップ出場への出場権が懸かる。

 今予選を振り返ると、チームには多くの不安が付き纏っていた。コロナ禍の影響で海外経験がほぼなく、選手たちの経験値は過去のチームと比較にしても乏しい状態。U-19以前の世代別代表ではここ2年、異国の地に遠征をしておらず、今年2月下旬に初の活動を行なって以降の海外遠征も6月にフランスで行なわれた『モーリスレベロトーナメント』(旧・トゥーロン国際大会)しかない。特にアジアのチームとは8月の国内合宿でU-19ベトナム代表と対戦しているが、アウェイの地で戦った経験は皆無。そうした事情を踏まえ、冨樫監督も「(強いのはサッカーが盛んな)ヨーロッパ、南米だけではない。本当にいろんなものを感じて欲しいし、一次予選を周りがどう感じているかわかりませんが、たくさんのモノを持って帰れると思う。4試合をしっかり戦いたい」とラオスとの初戦前日にアジアで戦う意義を説いていた。

 実際に今大会は4試合を通じて、多くの経験ができたのは間違いない。

 4-0で勝利したラオスとの初戦はスコアだけを見れば快勝だったが、目の前の敵以外と戦う必要があった。試合前日のトレーニングでは隣のピッチで同組のパレスチナが練習をしていたため、メニューの一部を変更。試合当日も大雨の影響でキックオフ時間が30分後ろ倒しとなり、ピッチコンディションも水溜りができる最悪の状況となった。ウォーミングアップもグラウンドでできず、室内とグラウンドの端で行なうのみ。ラオスがピッチ内でアップを始めたのを見て、内田篤人ロールモデルコーチの号令で日本も一度はコート内に入ったのだが、二転三転して端っこに追いやられるアクシデントもあった。試合中も水溜りを避けるべく、GKへのバックパスを避けながらセーフティーに試合を運んでいく。そうした状況下でのプレーはほとんどの選手が初めてだったが、「雰囲気もそうですけど、全てが日本では味わえない。この経験はとても大きかった」(DF菊地脩太/V・ファーレン長崎)。

 2戦目のグアム戦は9-0の大勝で、内容でもスコアでも相手を圧倒。3戦目のパレスチナ戦も相手に退場者が出た影響もあったが、8-0の完勝で予選突破に王手をかけた。迎えたイエメンとの最終戦。引き分け以上で1位、敗れれば2位に転落して他グループの結果次第で突破が決まるというシュチュエーションだったが、序盤から苦戦を強いられてしまう。カウンターを狙いながらマンツーマンで守ってくる相手に対してリズムを掴めない。前半は1本もシュートを打てず、後半も僅かに2本。78分にMF佐野航大ファジアーノ岡山)の左CKからオウンゴールを誘発して決勝点を奪ったものの、薄氷を履む戦いで勝利を掴んだ。以前はアジアの地域を東西に分けて予選を行なっていたが、今回からレギュレーションの変更で中東勢と戦えた点もチームにとっては大きな意味があった。

佐野航大

佐野航大 [写真]=佐藤博之

 選手個人を見ても、ラオスで過ごした僅かな期間だけで大きく成長をしている。とりわけ、最も大きな変化を見せたのが佐野だった。5月下旬のモーリスレベロトーナメントでは決して序列が高いわけではなく、ボランチやインサイドハーフのポジションで当落選上にいた選手。だが、クラブで出場機会を増やし、合流直前のJ2ではプロ初ゴールも記録。良い状態で代表に合流すると、ラオスとの初戦で先発フル出場を果たす。ターンオーバーを敷いた影響でグアムとの第2戦は出場機会を得られなかったが、続くパレスチナ戦とイエメン戦も90分間ピッチに立った。

 ボランチの選手では最も出場時間が長く、ゴールに絡む活躍も見せて勝利に貢献。パレスチナ戦では前半途中からキック精度を買われてインサイドハーフから左ウイングにポジションを移し、正確なクロスからチャンスを演出しただけではなく、ファーサイドからクロスに飛び込んで先制点をお膳立てした。一戦毎に逞しさを増して結果に結び付けてきたのは確かだ。

山根陸

キャプテンの山根陸 [写真]=佐藤博之

 佐野自身も手応えを感じており、「今予選では3試合で90分間試合に出て、芝は日本で感じられないモノがあり、戦術的にも相手のフィジカル面もフランスとは違う経験を得られた。これはプラスの経験にしないといけない」と振り返る。他の選手も普段とは異なる環境を経て、大きな気付きを得た。キャプテンの山根陸横浜F・マリノス)は言う。

「積み重ねという部分で、チームとしてやりたい形もちょっとずつ増えてきていると思うし、それと同時にもっと良くなるなっていうのがある。それはチームだけではない。個人としてもそうですし、アジアの戦いというところを含めて、色々吸収できたと感じている」

北野颯太

10番を背負った北野颯太 [写真]=佐藤博之

 U20アジアカップまで残された時間は半年もない。現状ではまだまだ物足りず、北野颯太セレッソ大阪)も「正直、このままの状態だったら怪しい」と危機感を募らせる。世界の舞台で躍進することはおろか、予選突破ですら果たせなかったとしても不思議ではないだけに、今回の経験を本当の意味で力に変えるためにも選手たちがJリーグなどでどのような成長を見せていくのか注目したい。

取材・文=松尾祐希

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