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日本を勝たせる選手に 鎌田大地がチュニジア戦で得た教訓

2022.06.15

チュニジア戦で先発した鎌田大地 [写真]=金田慎平

 2002年の日韓ワールドカップグループステージ第3戦から、ちょうど20年の節目である6月14日。日本代表は当時と同じ大阪の地でチュニジアと激突した。森島寛晃、中田英寿の2ゴールで快勝し、道頓堀に大挙したサポーターが飛び込んだような熱狂を取り戻すべく、今回も圧勝してほしかった。

 ところが、カタールW杯出場国の北アフリカの雄は想像以上に強かった。「12日間で4試合という非常に厳しい日程だったが、我々の方が戦略的にいい形で挑めた」とジャレル・カドリ監督が胸を張ったように、彼らは日本の攻守の要である遠藤航を徹底マーク。中盤を制することを試みた。そのうえで前半は強固な守備で日本を跳ね返し、じっと耐えてスコアレスで折り返した。

 日本のスペースが空いた後半に入ると畳みかけ、55分に吉田麻也のミスを誘ってPKを得ると、モハメド・アリー・ベン・ロムダンが左隅に決めきり、1点をリードする。さらにGKからのロングキックから再び日本守備陣の背後を突き、吉田、板倉滉シュミット・ダニエルの処理ミスを引き起こして2点目をゲット。後半アディショナルタイムには前がかりになった日本をあざ笑うかのように3点目を決め、チュニジアの圧勝。日本にしてみれば、6月4連戦のラストで飾るどころか、課題だらけの最終戦になってしまったのである。

「チームとして4試合目で、2試合はすごくいい試合をして、ブラジル戦は0-1でしたけど、まだまだ差を感じた。今日に関しても、うまく行ってない中で仕留め切るところだったり、0-0のタイミングで失点しないところだったりを突き詰めていかないといけない。我慢しないとダメだなと思います」

 左インサイドハーフで先発し、途中からトップ下に入った鎌田大地は厳しい現実を前に悔しさをにじませた。

 彼が悔恨の念を抱くのも当然だろう。35分にこの日最大のビッグチャンスを迎えたからだ。右の伊東純也が縦へ突破し、絶妙のクロスを入れた瞬間、浅野拓磨と鎌田が一気にギアを上げてゴール前へ侵入。ファーの鎌田が完全フリーの状態になり、合わせるだけで1点が転がり込む状況だった。が、無意識に力が入ったのか、体が前のめりになり、ミートしきれなかった。

鎌田大地

[写真]=金田慎平

「外したシーンは全然覚えていない」と背番号9は呆然としたが、「自分が決めていれば全然違う内容になっていた」と反省の弁も口にした。W杯のような大舞台になれば、ここまでのビッグチャンスはそうそうない。1試合に1本か2本巡ってくるかと言っても過言ではない。それをモノにできなければ上に行けないことを、UEFAヨーロッパリーグでバルセロナをはじめとした強豪を次々と倒して王者に輝いた彼なら誰よりもよく分かっているはず。これが本番ではなかったことをよかったと考えるしかない。

 ただ、鎌田本人が「ああいうところに入っていけるのは他のインサイドハーフにはないところ。怖いところに顔を出せていると思う」と前向きにコメントした通り、鎌田が6月シリーズでゴールの匂いを感じさせたのは確か。最終予選で主力だった田中碧守田英正のコンビよりは鎌田と原口元気、あるいは久保建英のコンビの方が攻撃面で相手の脅威となったことは事実だ。それを森保一監督がどう評価したかは定かではないが、鎌田の決定力が日本のカギになりそうな予感は少なからずある。

 とりわけ、三笘薫との関係性は重要だ。チュニジア相手なら、彼がドリブルで1人2人と剥がせることが分かったのだから、その動きに合わせてどう中に入るか、フィニッシュに厚みを持たせるかをすり合わせていけばいい。

「自分が行くだけになって、カウンターを受けることは本大会ではやってはいけない。チームとしてどう攻めていくのかという決まり事を持たないといけない」と、三笘自身も問題提起をしていたが、アイデアと創造性に長けた鎌田なら彼の個の打開力に頼らない工夫をつけられるはず。本番までの時間は限られているが、得点力アップにつながりそうな形を何とか構築してほしい。「日本を勝たせられる存在」に飛躍すべく、試行錯誤を続けていくことが肝要ではないか。

 それと同時に、鎌田自身はここから5カ月間で最高のパフォーマンスを出せるようにコンディションやメンタル面を引き上げていく必要がある。「(来シーズンのCLにも出場できる)フランクフルトより上のクラブを見つけるのは難しい」と、今回の代表活動序盤に話していたため、現時点では残留が基本線と見られるが、今夏の移籍が完全にないとも言い切れない。鎌田に意中のクラブからオファーが届けば心が動く可能性もある。

 プレミアリーグの強豪などへ赴けば、出場機会は確約されない。4戦シュートゼロに終わった南野拓実がリヴァプールで苦しんだことを見れば、リスクを冒すのは賢明ではない。ただ、「11月にW杯があるということは特に考えていない」とも発言しているように、本人は行くと決めたら一歩を踏み出すだろう。そのあたりの判断が彼自身と日本代表の今後を大きく左右すると言っていい。

「今回の4試合はいろんなことをトライできた。ポジティブに捉えるしかない」と鎌田は切り替えて前を向いている。その先にあるのは果たしてどんな未来なのか…。何を選択したとしても、「勝負を決められる存在」に飛躍し、日本代表に非凡な能力と経験値を還元してもらいたい。チュニジア戦で得た教訓をしっかりと生かすところから再出発してほしいものである。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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