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3年ぶり海外遠征は世界へのチャンス 野心燃やすU-19日本代表MF中村仁郎への期待

2022.05.31

ガンバ大阪MF中村仁郎 [写真]=J.LEAGUE

「3年ぶりの海外ですし、たぶん日本とは環境含めて全然違うので、そこで違いを見せれば、海外のスカウトの人たちにも目に留まる。自分は絶対に海外行きたいと考えているので、結果を残せたらいいと思っています」

 U-19日本代表が参加し、5月31日に初戦を迎える第48回モーリスレベロトーナメント(旧トゥーロン国際大会)。2019年以来の海外遠征に向け、並々ならぬ野心を前面に押し出すのが、ガンバ大阪で売り出し中のMF中村仁郎だ。


 JFAエリートプログラムU-13から年代別代表に名を連ね、2016年のスペイン遠征、2017年のUAE、オランダ遠征、2018年のバル・ド・マルヌU-16国際親善トーナメント、2019年のインターナショナルドリームカップなど、数多くの国際舞台に立ってきた中村は“エリート中のエリート”と言っていい。

 しかしながら、若き新星も2020年以降のコロナ禍で世界の舞台から2年半も遠ざかってしまった。日本サッカー協会の反町康治技術委員長が「U-16代表が今月の欧州遠征でノルウェーやルーマニアといったトップではない国に勝てなかった。それだけ強豪との差が広がっているということだ」と危機感を募らせたが、中村のような海外志向の強い人間にとっては耳の痛い話。欧州を見れば、ジャマル・ムシアラ(バイエルン)、ジュード・ベリンガム(ドルトムント)ら同世代の逸材が異彩を放っていることもあり、焦燥感を募らせているに違いない。

 だからこそ、中学時代から過ごしているG大阪で目に見える結果を出そうと躍起になっていた。中村は2020年12月19日の清水エスパルス戦でJ1デビュー。高校2年生のJ1出場は宇佐美貴史堂安律以来というから、大きなポテンシャルが伺えた。けれども、トップ昇格を果たした今季は開幕からベンチ外が続き、予期せぬ挫折を味わった。

「トップに上がり、カタさん(片野坂知宏監督)の下で試合に出て活躍しようと思っていましたが、なかなかうまくいかなかった。気持ちが折れて、頑張ることをやめそうになった時期もありました」

 そこで相談したのが、信頼する両親だった。

「『お前は真面目やから、逆にしんどい思いをしているだろうけど、このままずっと頑張り続けていたら試合に出られるようになるから』と前向きな言葉をかけてもらった。それを信じて続けていたら、4月からベンチに入れるようになり、5月からはスタメンも掴めました。ケガ人やコロナとかチーム事情もありましたけど、自分としては努力を継続できるようになって。そこは成長したと思っています」

 中村も言うように、今季のG大阪は宇佐美や倉田秋ら主要選手がケガで次々と離脱。想像以上の苦境に直面している。そういう時期に出番を与えられたのだから、「自分がやらないといけない」と責任を痛感しているはず。サッカーに年齢は関係ないとは言いながらも、18歳で攻撃陣を背負う状況というのは、宇佐美や堂安にもそこまで経験がないだろう。大きな重圧のかかる中、見る者を驚かすパスセンスやチャンスメイクを要所で見せつけているのだから、やはりただ者ではない。

 今回のモーリスレベロは、持ち前の頭抜けたスケール感を発揮する絶好の機会。本人も「自分の世代の代表やし、チームを引っ張っていく気持ちでやりたい。まずは数字を残して結果を出したいと思っています」と目をギラつかせた。

「エースの自覚はあるのか?」という問いかけにも「まあ…」と照れ笑いを浮かべつつ、「そうなれたらいいですけど。自信を持ってやれたらいいと思います」と力を込めた。本音の部分では、同い年の松木玖生(FC東京)、チェイス・アンリ(シュトゥットガルト)とともに1カテゴリー上のAFC U-23選手権に参戦したかったに違いないが、選外になった以上、2023年のU-20ワールドカップを視野に入れて全力を注ぐしかない。

 振り返ってみれば、堂安も2017年U-20W杯直後にフローニンゲンへレンタル移籍し、1年後には日本代表入りを果たしている。中村も5歳上の先輩の”黄金ルート”を踏襲すべく、まずは近い将来の海外移籍を勝ち取り、2026年のW杯へと突き進んでいくことが肝要だ。

「堂安選手は自分が目指している1人の先輩。堂安選手が先により高いレベルに行ってくれれば、そこに向かって走り続けるだけなので、目標設定は容易かなと思います。僕の持ち味はポジショニングとボールを持ったところ。そこは海外の選手にも『負けへん』という自信はありますし、自分が違いを見せられれば、チームも波に乗っていけると思う。堂々と戦っていきたいですね」

 今季J1で頭角を現した北野颯太セレッソ大阪)、升掛友護柏レイソル)、J3得点ランキングトップタイの横山歩夢(松本山雅FC)らとともに、アルジェリア、コモロ、コロンビアといった強敵揃いのグループを突破することが第一関門となる。3年前の同大会で決勝まで勝ち上がった先輩たちの再現を果たすべく、攻撃の中核を担う中村には非凡な攻撃センスを思い切り発揮してもらうしかない。

 近い将来、日本の攻撃陣を担うであろう創造性あふれる背番号8の一挙手一投足から目が離せない。

取材・文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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