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【インタビュー】中山雄太 五輪で得た「根拠のある自信」を胸に

2021.09.14

中山雄太

 東京オリンピックでは左サイドバックを主戦場に全6試合出場、先発は5試合と日本のベスト4に貢献したズヴォレ所属の中山雄太

 新たに取り組んだポジションで大会期間中、着実に成果を見せた。五輪代表での活動が終わり、所属チームはもちろん、A代表での活躍が期待をされる中山に現在の思いを聞いた。

インタビュー=川端暁彦
取材協力=アシックス

■五輪で根拠のある自信を持てた

中山雄太

[写真]=Getty Images

―――東京五輪は4位という結果でした。率直に振り返っていかがですか。

中山 目標である金メダルへ届かなかったですし、スペインに敗れたあとに銅メダルも獲得できなかった。結果で言えば、悔しい気持ちで終わった大会でした。ただ、いまは悔しい気持ちというのは違う気持ちになっています。大会に臨むに当たって「成長していく大会にする」ということを思っていて、その点では手応えもすごくあったなと感じています。

―――手応えは例えばどういうところでしょう?

中山 まずは自分がオリンピックに向けて取り組んできたことがしっかり表現できたことです。そして何より、自分がオリンピックを目指して「ずっと成長していくんだ」という意気込みと変わらない気持ちのままにオリンピックの本大会も戦い抜けたことは大きかったと思います。自分のやってきたことに対して根拠のある自信を持てました。

―――中山選手は左サイドバックとして出場しましたが、特にディフェンスのところで手応えもあったんじゃないでしょうか。

中山 もともと自分はディフェンスの向上を求めて海外に出たところがあります。昔から自分のプレーを観てもらっている方は分かると思うのですが、攻撃に特長があって守備に課題の多い選手だったと思います。そこが今回のオリンピックではディフェンスのところをストロングにできました。先ほど言った根拠のある自信にできたというのは、まさにそういう部分です。

―――特に1対1、個で守らなきゃいけないような場面でその成長は凄く感じました。

中山 1対1での守備は逆サイドの酒井宏樹選手からも言われていた部分なので、そこは発揮できていたところもあったと思いますけど……。でも、僕はどちらかと言うと良いシーンよりも悪いシーンが印象に残るタイプなので、「まだまだだな」と思い知らされるところも多かったですね。

―――それはどういうシーンですか。

中山 どのシーンというのではないんです。お手本であり、まるで先生のような存在でもあった逆サイドの酒井選手、トップ・オブ・トップのあの人を基準に考えさせてもらったとき、マイボールにしている回数だったり、防ぎ切れている回数という点で「まだまだだな」と思わされ続けました。すべてのシーンにおいて向上の余地があります。

―――やはり酒井選手とともに国際大会を戦い抜けたのは大きな経験値に?

中山 酒井選手に限らずなんですけど、ただやっぱり僕にもたらす影響の大きさという意味では、同じサイドバックなので大きかったと思います。直接アドバイスを仰ぐことも大会を通して一番多かったとも思いますし、こうやって僕が手応えを感じられているのも、経験のある選手たちのおかげというところはあります。

―――「酒井選手」という明確な基準を作れたことで、大会を通じて成長し続けることができたということもありますか。

中山 間違いないですね。「今ちょっといいプレーをしたな」と自分では思ったことでも、酒井選手と話したら「それはできて当たり前だから」ということになったりもしましたからね。「もっとこうしたほうがいい」ということも言ってくださいましたし、そこは本当に大きかったなと思います。

■対世界における“課題”

中山雄太

[写真]=Getty Images

―――ボールを持ったあとのプレーとしてはどう評価してますか。

中山 どちらかと言うと、後ろで作る感覚でプレーする機会が多かったと思います。新たな手応えとしてはクロスの精度のところを大会前から入念に取り組んできたので、出せたところはあります。これは先ほど言った「やってきたことが根拠のある自信に」という部分でもありますね。

―――スペイン戦では、前田大然選手のヘディングに繋がったクロスもありました。

中山 (アシストという)数字として残せれば良かったですが、自分としては「よし、次はもっと良いクロスを上げるぞ」という感じで、気にせず次のプレー、次のプレーといけていたと思います。ただ、攻撃の回数自体は自重していたところもあったので、そこは課題に感じた部分でもあります。

―――チームとして世界大会を戦う上での課題はどう感じましたか。

中山 ボールを握るというコンセプトで言えば、実際に握れるのが一番ですけれど、スペイン戦のような試合も出てくると思います。ただ、ああいう展開になる中でも、意外と皆さんが想像していたよりも粘り強い守備は見せられたのではないでしょうか。その中でも相手より少ないなかでもチャンスは作り出せていたと思います。ただ、これは僕自身についてもそうなのですが、日本だと「守っているから、ボールを持ったらカウンター」となりがちですよね。守って取ったからこそ、一回ボールを持って押し込んで、相手がカウンターを狙うような状況をもっと作ることも必要なんじゃないかと思いました。

―――一概に良し悪し言えない部分だと思いますが、「奪ったボールをカウンター」で、ある程度行けてしまうシーンも多かったですし、チャンスもありました。あれを決め切っていれば良かったという見方もあると思いますが、一方で、結果としてその繰り返しの中で疲弊してしまった面もあるのではと感じます。

中山 確かに結果論ですけれど、そこはあったんじゃないかと思います。やっぱりチームとしての課題は探さなければいけないですし、同じようなインテンシティで守って、同じようなインテンシティで攻めるということを続けるのは、中2日で臨んだ試合ということを考えても、スマートじゃなかったんじゃないかとは感じています。

―――ただ、日本の強みでもありました。

中山 準決勝のスペイン戦まで日本がボールを握っている時間が長い試合が続いていたので、そこから特長を出せていましたよね。例えば、タケ(久保建英)とリツ(堂安律)、そして酒井選手が絡んでいく右サイドの攻撃を発揮できていました。その前の親善試合にしても、ガーナ戦もそうでしたし、ジャマイカ戦もそうですけれど、僕らがボールを持っている中で彼らのクオリティを活かし、活かされていくというのがあった。そして僕は彼らほどのスキルがないので分からないところもあるのですが、彼らって、スペインのような相手を前にしてもカウンターで行ける感覚があったと思います。

■見方を覆せるような攻撃を

中山雄太

ズヴォレで今季もプレーする中山雄太 [写真]=Getty Images

―――実際、行けてなかったわけではないですよね。

中山 これが全く行けていないのであれば違う判断をすべきでしたが、そうではなかったですよね。そこは本当に難しい部分だったと思いますし、全体の擦り合わせが必要でした。「彼らが行けるなら、それに合わせて僕らももっと押し上げていくぞ」という考えもあるじゃないですか。自分たちの状態や試合の状況も考えなくてはいけないですし。だからこそ、こういう大会で勝っていくためには、より突き詰めていく必要があるなと感じています。

―――そこはスペインを相手にしても、日本の選手が「これは勝てないな」という感覚にはなってなかったからこそ、でもありますよね。

中山 そうですね。守る時間も長かったですけれど、チャンスもクリエイトできていて、あの内容でもチームとしては「いける」という感覚は確かにあったんですよ。だからこそ、課題をクリアにしていけば、より「いける」という感覚もいま持てています。負けたときは本当に悔しかったですけれど、次に繋げられる敗戦になると今は感じられています。

―――その意味で、A代表とW杯への思いはさらに強くなったのでは?

中山 オリンピック前からその気持ちは持っていましたけれど、大会が終わって自分が目指せる大会がW杯だけになったというのもあって、必然的に気持ちは強くなったと思います。

―――そのために、特に強化していきたいポイントはありますか。

中山 攻守の強度をもっともっと上げなければいけないと思っています。あとは前線に絡むような回数を増やしていきたいですね。タイプ的にというか、先入観としても、中山雄太という選手は後ろに重きを置いて、後ろからクリエイトするタイプだと思われているんじゃないでしょうか。そうした見方を覆せるような攻撃を見せられるようにしたいですね。

―――もともと攻撃的なポジションもやっていた選手ですし、もっと出せるイメージはありそうですね。

中山 オリンピックではチームコンセプト的にも自重せざるを得ないところがありました。ただ、そこは自分の力不足でしかないと思います。攻撃で結果を出せていれば、自然と「行っていい」となると思いますから。だから攻撃のところでもっと力を付けて、試合の中でどんどん発揮していきたいなと思っています。


【中山に聞く“アシックスブランド”】


―――東京オリンピックでは日本選手団の公式ウェアをアシックスが手がけました。その中でメーカーを代表する立場として参加しました。

中山 テレビで他の競技を見るたび、胸にロゴが見え、僕が金メダルを取ったわけではないですが、思うものはありました。同時に僕自身、当たり前のように何年も着用させていただいていますが、オリンピックでも誰でも着ていて、首からかけた金メダルの横にアシックスのエンブレムがあることはすごいことなんだと、忘れていた部分を再認識しました。着用させていただいていることが当たり前ではないんだ、ということですね。

―――大会は中2日で6試合をこなす過密日程でしたし、クラブに戻れば海外の様々なピッチに適応しつつ、代表戦があれば移動もあります。スパイクは疲労やケガの防止などのためにも重要な用具です。

中山 アシックスを履くことの良さは足へのストレスがなく、サッカーに100%集中できることです。過密日程の中で履き続けてもスパイクのクオリティが落ちないんです。負担がかかることで形状が変わることもありえますが、そういったこともなく履き続けられる部分は、僕のプレーを支えてくれる大きな要因ですね。

―――耐久性は若い世代になるほど重要ですね。

中山 間違いありません。若いからこそ足の変形につながってしまう恐れもありますし、足への負担は様々なことにつながってしまいます。プロももちろんですが、若い子はよりこだわったほうがいいと思います。

―――日本を代表するブランドの一員として、今後どういった姿を見せていきたいですか。

中山 僕ができることはスパイクを履き、最高のプレーをすることです。僕自身、小さい頃に、すごい選手のスパイクはマネしたくなると感じていたので、そういったプレーを出せるように日々意識をして、その結果、「中山が履いているアシックスを履きたい」と思ってもらえるようなプレーできればいいですし、それが最大限の感謝と言いますか、アシックスさんへのお返しだと思うので、頑張りたいと思います。

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