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10月の最終予選で再ブレイクへ…PSVで力強い一歩を踏み出した堂安律

2021.09.13

AZ戦でゴールを記録したPSVの堂安律 [写真]=Getty Images

「今の心境をシンプルに答えると、決まったところで自分の力を出すというのが選手として、プロとして一番しなくてはいけないこと。自分の行きたいところはあったりしましたけど、もうしゃあないので、しっかりと取り組んでいきます」

 2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選最初の2連戦となったオマーン戦(吹田)と中国戦(ドーハ)を経て、堂安律は2年ぶりに復帰したオランダの名門・PSVで新たな一歩を踏み出した。

 菅原由勢との直接対決となった11日のAZ戦。背番号25をつけるアタッカーは先発こそ外れたものの、56分からピッチに立った。そしてラスト7分というところで、右サイドから自らドリブルでボールを運び、ペナルティエリア右外の位置から豪快に左足を一閃。ダメ押しとなる3点目をゲットする。チームの開幕4連勝に貢献するとともに、力強い再出発を飾ったのである。

 10月の代表ウイークまでの間には、ヨーロッパリーグ(EL)グループステージ3試合を含め、ここから公式戦が6試合。堂安の出番は確実に増えていくはず。そこで目に見える結果を残し、チーム内での序列を引き上げることができれば、日本代表での活躍も見えてくる。10月のサウジアラビア(7日=ジェッダ)・オーストラリア(12日=埼玉)2連戦は最終予選最大の山場。ここで「救世主」となるべく、一気に調子を上げていくしかない。

 今回の9月シリーズ2連戦で彼がピッチに立ったのは、オマーン戦の63分以降だけ。アディショナルタイム含めて約30分間の出番を与えられ、森保一監督が喉から手が出るほどほしかったゴールを奪う大役を任されたが、引いて守る相手を攻略しきれなかった。チームもまさかの敗戦。5日後の中国戦ではスタメン入りも噂されたが、出番なしに終わってしまった。

 この試合で東京五輪で看板コンビを結成していた久保建英が鮮烈な印象を残すのを目の当たりにし、「自分も負けてはいられない」という思いを強めたはず。「ここからは自分たち若い世代が流れを変えていく必要がある」という自覚も強めたのではないだろうか。

「自分の役割はチームを勝たせる数字を出すこと。それがウインガー、アタッカーとして一番評価されることなので。そこは東京五輪で直面した課題でもあるし、どんどん出していければいいかなと感じています。これからは五輪世代が台頭して、A代表のメンバーに入り、スタメンにもどんどん名乗りを挙げていかないといけない。そこは僕も責任を持っていますし、しっかりとアピールして、試合に出られるよう頑張りたいと思います」

 本人も代表期間中にこう語気を強めていたが、傑出した得点源の不在というのは、今の日本代表の最大の課題と言っていい。絶対的1トップの大迫勇也が徹底マークを受け、トップ下に入る鎌田大地や久保とのタテ関係を寸断してくるチームが多い中、やはりサイドから推進力を持った崩しを増やしていかなければ、膠着状態から脱することはできないだろう。

 加えて言うと、10月シリーズの第1戦・サウジアラビア戦は伊東純也が出場停止。中国戦で右ひざを負傷し、全治1カ月と診断された古橋亨梧の出場も絶望的になり、9月シリーズを途中離脱した南野拓実の状態も不透明だ。森保監督は久保を右に回してトップ下に鎌田を入れるという中国戦後半にトライした布陣も視野に入れているかもしれないが、普通に考えれば堂安の先発が最有力。それを確実にするためにも、この1カ月間、PSVで得点に直結する結果がほしいのだ。

 オランダ1部首位の名門を率いるロジャー・シュミット監督は2020年4月に就任。堂安が本格的に一緒に仕事をするのは、今季からということになる。パーダーボルンやザルツブルク、レヴァークーゼンで高い手腕を発揮した指揮官は若手を引き上げ、能力を発揮させるのに長けている。堂安も最大限よさを引き出してもらえるだろう。ハイレベルなタレント集団だけにチーム内競争は厳しいが、AZ戦のように明確な結果を残し続ければ、信頼関係も深まり、スタメンの座にも近づいていく。

「東京五輪を戦ってみて、日本人の特長である粘り強い守備とかオーガナイズされた守備というのは世界でも通用すると思いました。そこはスペインやメキシコとやっても問題なかった。だけどスペインなんかは、体格的に小柄でもしっかりと止めて蹴る技術を徹底してボール保持をしてきた。その大切さは改めて感じました。僕らも強豪相手にできるような技術とメンタリティ、フィジカルを持ち合わせていかないといけないと思います」

 堂安は自身が感じた課題をつねに意識して、所属クラブで基本的な部分から1つ1つ積み上げていくはず。地味なトレーニングの蓄積しか、ゴール前の精度と迫力を研ぎ澄ましていく術はない。東京五輪の時も大会直前から1次リーグまでは好調だったが、その後は相手に封じられて、やや調子を落とした。こうした好不調の波を作らないように努力することが、名将・シュミット監督に認められる大きなポイントではないか。

 いずれにしても、PSVでコンスタントな活躍を見せなければ、日本代表の主力の座は奪い返せない。もともと森保ジャパンが発足した3年前、堂安は右サイドのファーストチョイスであり、伊東純也はサブだった。その後、伊東がベルギーで目覚ましい成長を遂げたことで、2人の位置づけが入れ替わった。そんな苦い経験をしている堂安は今、何をすべきかをよく理解しているに違いない。再ブレイクを果たすべく、重要なこの1カ月で一気にスパートをかけてほしいものだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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