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“ヤット超え”を狙う長友佑都の挑戦…思い出の地・グラーツでリスタートへ

2020.11.09

約1年ぶりの代表戦出場に期待がかかるマルセイユの長友佑都 [写真]=Getty Images

「長友(佑都)の経験を日本代表に生かせるところが非常に大きいし、経験の浅い選手に背中で見せてくれると思います。もちろん経験だけでポジションを与えることはないし、本人には競争意識を持ってほしいですが、それを言わなくても彼はつねにチャレンジ精神を持っている。練習から100%を出し、チームに活力を与えてくれる存在です」

 森保一監督にこれだけの絶大な期待を寄せられる男が、ようやく日本代表に戻ってくる。10月2連戦を体調不良で棒に振った長友佑都(マルセイユ)が満を持してチームに合流。11月13日のパナマ・17日のメキシコ2連戦に挑むのだ。

 会場のオーストリア・グラーツはイビチャ・オシム元代表監督の居住地として知られている。A代表デビューが2008年の長友はオシム時代を知らないものの、この地には特別な思い入れがあるはず。というのも、2010年南アフリカワールドカップ(W杯)直前にイングランドと真っ向勝負をした場所だからだ。

 最悪の状態で事前合宿地・ザースフェー入りした当時の日本代表は、田中マルクス闘莉王の「俺たちは弱い」という強烈な一言を機に超守備的戦術へと舵を切ることになった。その重要な初戦がイングランド戦だ。長谷部誠が初キャプテンを務めた歴史的一戦で、左サイドバックの長友は対面に位置したテオ・ウォルコットを完封。南ア本番に大きな弾みをつけたのだ。

「ウォルコットは絶対に止めたかった。メチャメチャ速かったけど、自分の間合いを持って対応したらいいということはわかった。いつもの相手より半歩下がって守ることを心掛けた」と本人は息を弾ませてコメントしていたが、ここで得た自信が南アでの“エースキラー”としての活躍につながる。カメルーン戦でのサミュエル・エトー、オランダ戦でのエルイェロ・エリアという両キーマンを阻止し、16強入りの原動力となったことで、彼の人生も大きく開けたのは事実だろう。

 あれから10年という長い時間が経過し、長友は34歳になった。森保監督が言うように過去3度のW杯出場とイタリア、トルコ、フランスでの足掛け11シーズンのプレー経験は今の日本代表には不可欠と言っていい。

 加えて言うと、左SBとしての存在感は他を寄せ付けない。10月のカメルーン戦でチャンスを与えられた安西幸輝が選外となり、今回は左右SB併用型の室屋成と菅原由勢、ボランチとの掛け持ち型の中山雄太がバックアップ要員となるが、実績・経験・安定感のすべてで長友に分がある。8月に赴いた新天地・マルセイユでは直近6日のストラスブール戦のように右SBを担うこともあるが、本人の中で長年積み上げてきた左の感覚が薄れているはずがない。それを存分に発揮してくれれば、指揮官やチーム全体に安心感を与えられる。1年ぶりの代表戦というブランクを感じさせない一挙手一投足が改めて求められるのだ。

 彼が最後の日の丸を背負った1年前の2022年カタールW杯アジア2次予選・キルギス戦では、井原正巳(柏コーチ)が持つ国際Aマッチ122試合出場という歴代2位の記録に並んだ。「1位に君臨されているヤット(遠藤保仁)さんを本気で目指していこうという野心がより一層強くなりましたね」と本人も目を輝かせていた。が、コロナ禍で今年の代表戦が6試合分中止になり、152試合という大記録を持つ遠藤の背中はまだまだ遠い状態だ。

 それでも諦めを知らないのがこの男。飽くなき向上心を持つ長友に限界はない。

「佑都君は本当にモチベーションを高く持ってやっていますし、すごくポジティブな方なので、いつもいい刺激しかもらっていないです」とチームでも同僚になった酒井宏樹も太鼓判を押していた。味方の援護射撃も力にして、まずは今回の2連戦で単独2位に躍り出て、30代後半まで日本代表の絶対的地位を維持する布石を打つことが肝心。そのためにも思い出の地・グラーツで最高のリスタートを切る必要があるだろう。

 そこで1年前のキルギス戦を改めて振り返ると、長友のいる左サイドにロングボールを放り込まれ、守備で苦労するという予期せぬ事態に見舞われた。もちろん相手布陣とのミスマッチも大きかったが、「ロングボールはなかなか難しい部分がありますよね、体格差がありますから」と本人も反省の弁を口にした。そのうえで「もっと早くポジションを取っていけばいいプレッシャーをかけれたかもしれないし、ポジショニングも改善の余地がある。反省すべきところはして、能力をどう伸ばしていくかを考えていきたい」と負けじ魂を爆発させていた。その後、1年間はガラタサライで外国人枠から外されたり、コロナでサッカーができなくなるなど未知なる出来事の連続だったが、代表の左SBで自分が何をすべきかはつねに考えていたはず。その成果を出し切るのが今なのだ。

 2018年ロシアW杯出場国のパナマとW杯決勝トーナメント常連国のメキシコはまさに絶好の相手。チームとしても10月のコートジボワール戦に続いて白星を挙げ、紆余曲折の2020年を締めくくれれば理想的だ。背番号5はそのけん引役にならなければいけない。現代表で最多キャップ数を誇る年長者の意地と高度な質、そしてリーダーシップをピッチ上で示して、「長友佑都ここにあり」を今一度、多くの人々に印象付けてほしいものである。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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