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【インタビュー】「言葉で伝えることが得意ではない」原口元気が文章を書き始めた理由

©Racco

 近年、自分の考えや想いをSNSや動画などを通じて、自ら発信する人たちが増えている。

 サッカー界も例外ではなく、いろいろなプラットフォームで、いろいろな現役、OB、関係者が発信している。

 ハノーファーでプレーする日本代表MF原口元気もその一人だ。

 原口はすでに自身のTwitterやInstagramのアカウントは持っていたが、2020年2月21日から、文章を中心にイラストや音楽、映像などの作品を個人、企業が発信できるウェブサイト『note』を始めた。

 多くの選手たちがSNSやYouTubeをやる中、「伝えることが得意ではない」という原口が、なぜ“文章”で伝えることを選んだのかを聞いた。

インタビュー=小松春生

■自分が言葉にすることがすごく大事

原口元気

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―――noteを始めてから5カ月ほど経ちました。周囲のリアクションや手応えはいかがですか?

原口 面白いですね。もともと、あまり言葉で伝えることが得意ではなかったのですが、セカンドキャリアでは監督をやりたいと考えた時、誰かに何かを伝えなければいけないことが増えるので、自分が言葉にすることがすごく大事だと思い、その練習もかねて、始めたんです。自分が考えていることを発信しようと考えた時、『note』かなと。SNSは文字で伝えるには字数に限りがありますし、文章にすることが勉強になるかなと。取材で受け答えすることと、自分で文章にすることは違うので、いい経験になっています。今のところは読者を気にせずというか、書きたい内容を書いています。読者の方の好みや考えもそれぞれですから、興味があるものがいくつかあってくれればいいかなと思って書いています。

 購読してくれる人含め、人はそれぞれ違うので、まずは自分が経験して面白いと感じたことや、若い選手、コーチに読んでもらえたらいいかなって意識はしていますけど、結局は自分が書きたいことを伝えるためですね。

―――文章を書くことで頭の中が整理されますし、一度書いたものを見直した時、自分の考えと違う表現になっていることに気付くこともできます。考えを体系立てられることをメリットとしてnoteを始めたと思いますが、個人的にはサッカーに限らず自分と同じような道を辿ろうとしている人たちへ伝えたいこともあるのかなと感じました。取材などでの言葉を聞くと、年々、次の世代へ伝えたいことが増えている印象があります。

原口 監督になりたいと考えた時、経験などを伝えたいけど、うまく言葉に乗せないといけないなと。どうしても感覚的な話が多くなるので、うまく言葉にする練習はnoteでできていますね。インタビューなどでも、自分が思っていることをもっと明確に伝えられるようにしたいですし、うまく伝わっているのかな、と感じるころもありました。

―――動画ではなく文章を選んだ理由は何でしょう。動画では一方的に言葉にして、それが相手に正しく伝わるかを確認したり、修正したり、フィードバックを得ることが難しい側面があることが理由なのかな、と思いましたが。

原口 それもありますけど、例えばYouTubeは真面目なものよりも、娯楽性があるものが好まれるのかな、と自分で見ていても思うので。ちょっと硬い文章でも読んでもらえれば、と考えた時にnoteなのかなと。もちろん動画で硬い内容のものを発信している方もいますけどね。

―――確かに動画については僕たちもYouTubeをやっていますが、真面目なテーマの時ほど再生回数が伸びない傾向があることにジレンマを抱えることもありますね。原口選手は2月からnoteを始めていますが、他の選手も国内外問わず、自粛期間中に自分と向かう時間が増えたり、発信することの重要性を感じて、文章や動画で何かを伝えようとする人が増えました。

原口 それぞれにスタイルがあると思うので、InstagramでもYouTubeでもnoteでも、合ったやり方でいいと思います。もちろん内容がバラエティなものでもいいと思います。たまたま、僕が選んだのはnoteというだけですから、僕は僕のやり方、みんなはみんなのやり方でいいと思うし、発信することは大事ですから。僕も発信することはあまり得意ではなく、SNSの更新率がいいわけでもなかったですけど、noteはしっかり続いていきたいと思っています。

―――発信する人が増えた一方、意見交換などで建設的な議論になればいいんですが、そうならないケースもよくあります。

原口 僕は説教のようなものにならないようにしたいなと。上から目線で「こうしたほうがいいよ」ではなく、アイデアのちょっとしたヒントになればいいかな、くらいのスタンスで書いています。僕のことがすべて正解だとは思っていないですし、キャラクターによって僕のやり方がまったくハマらないこともあると思うので。少しでもヒントになってくれれば、その規模が何千人でなく、数人でもいればいいかなって。どちらかというと自己満足というか、僕の勉強のためなので。

■夫婦でやってきたことは本当に大きな財産

原口元気

©Racco

―――考えの変化が多い20代で海外へ拠点を移し、ドイツでの生活も6年が経過しました。思考や言動が変化しているように感じますし、影響を与えた存在としてnoteにも登場する谷川聡さん(筑波大学准教授)と、2015年にご結婚された奥様が挙げられると思います。

原口 そのポイントは正しいと思いますし、いろいろな人との出会いで変わった部分はありますけど、一番は環境ですね。ダメだと終わり、という甘えられない環境に6年も身を置いることが大切でしたし、大きかったと思います。日本では、すぐに助けてくれる人が近くにいるけど、ドイツではだいたい1人。だから自分自身で考えて、問題にぶつかった時にうまくすり抜ける能力は、すごく伸びました。だから急に「ボランチでプレーして」と言われても、それなりに対応できるようになったのかなと。もちろんさっき挙げてもらった人との出会いは大きかったです。

―――以前、アメリカ拠点で活動しているギタリストのMIYAVIさんにお話を聞いた時、仕事以外で日本人と交流したり頼ることは、甘えになるので避けていると話していました。原口選手はそういったことは?

原口 あまりコミュニティに入りたくないんですよね(笑)。もちろん助かる部分はありますけど、僕がマメじゃなかったりするので、付き合いとかが面倒くさくて(笑)。しかも、ベルリンやデュッセルドルフにいた時は日本人も多かったですけど、ハノーファーは本当にいないので、何か困ったことがあれば、英語やドイツ語の先生に何とかうまく伝えて、切り抜けています。

―――noteで「自分の気持ちをコントロールする4つのルール」について書かれた時、4番目のルールで「監視の目」として奥様の存在を挙げられていました。甘えられない環境の中、奥様の存在は多大なる助けになっていますね。

原口 本当に夫婦で互いに助け合いながら、ですね。友達も数人しかいないですし、ハノーファーは周りに街もないので、日本人もいない。問題があった時は2人で解決していきます。今は、英語やドイツ語をお互い下手なりにも扱えるようになって、誰かに助けを借りるのではなく、2人で乗り越えていける環境ができてきたので、それが結婚してからの5年、2人で頑張ってきた証明なのかなと。

 2人でやってきたことは本当に大きな財産です。日本で生活すると「なんて便利な世界なんだ」と感じますし、ドイツでは大変なことがたくさんある。2人で頑張って来られましたし、一番近くに味方がいることは大きいですね。

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