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2020年は“攻撃的特徴”を前面に! 今季ACL初参戦の神戸を力強くけん引する山口蛍

[写真]=兼子愼一郎

「(PK戦で)さすがにあんなに外すとは思わなかった。相手が外して自分たちが決めれば勝ちっていう状況の中で、どこかのタイミングで自分が行こうかなと考えていました。運もあるでしょうけど、僕のところでしっかり決められたのはよかったと思います」

 両軍合わせて9人連続PK失敗──。リーグ戦やカップ戦、あらゆるプレーオフを含めてJリーグ史上初となる珍事が起きた8日のFUJI XEROX SUPER CUP 2020。ラストキッカーとなった山口蛍は冷静に右足でゴールネットを揺らし、負の連鎖を断ち切ると同時に神戸に2020年シーズン初タイトルをもたらした。

 しかしながら、試合後、報道陣の前に現れた彼に喜びはなかった。自身のゴールも含め、3度もリードしながら90分間で勝ち切れなかった不甲斐なさの方が脳裏に色濃く焼き付いていたのだろう。

「勝利という結果はホントによかったですけど、課題は沢山あったので…。点は取れると思うし、手ごたえも感じているけど、やっぱり失点は減らしていかないといけない。去年も相当失点が多かったから。後ろを3枚にして、ウイングバックがいて、言ったら5枚で戦ってる状況で3失点もするのはちょっとどうかなと。時間がない中でしっかりやっていかないと、徐々にボロが出てくる可能性もあると思うんで、改善しないといけないですね」と気を引き締める。

 こうやって苦言を呈するのも、JリーグとAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を掛け持ちする厳しさを熟知しているから。山口はセレッソ大阪時代の2011年、2014年、2018年と3度のACL参戦経験があるが、前者2回はACLで16強入りを果たしながら国内リーグで低迷。2014年はJ2降格の憂き目に遭っている。2018年はJ1こそ7位とまずまずだったが、ACLでは1次リーグ敗退とやはり苦しんだ。そんな苦い過去があるからこそ、目の前の課題を1つ1つクリアしていかなければならないという思いが強いのだ。

「このチームのアドバンテージは、アンドレス(・イニエスタ)やトーマス(・フェルマーレン)といった国際経験豊富な選手がいること。彼らはそういう戦いには慣れていると思う。それプラス俺もおるし、(酒井)高徳もいる。経験をいろんな選手に伝えながらやっていきたいですね。試合ごとにチームを全部変えるのは難しいけど、要所要所で選手が入れ替わることもあると思うから、その中でチームとしてうまくできるように持っていけたらいいかなと感じています」

 今年30歳の大台を迎える山口はリーダーシップを前面に押し出そうとしている。セレッソ時代からあらゆる大会に出続け、休みなく働いてきた“鉄人”に対するトルステン・フィンク監督の信頼は絶大だ。今こそ自慢のスタミナと献身性を大いに披露して、チームをいい方向へと導いてほしい。

 ドイツ人指揮官が今季の彼に期待するもう1つの重要ポイントが、マルチな能力だ。ゼロックス杯を見ても分かる通り、スタートポジションは3-6-1の右ウイングバックだったものの、田中順也が投入された後半途中からはほぼ右ウイングの位置に上がってアタックに比重を置いていた。自らのインターセプトから奪った3点目は目に見える成果と言っていい。

 もともとセレッソユース時代は背番号10をつけて攻撃の軸を担っていた選手だけに非凡な得点センスを備えているのだが、その能力をより発揮してほしいというのがフィンク監督の願いなのだろう。

「前でやる以上は結果が求められますし、ホントに今回は3トップの前みたいな感じの位置だったんで、よりゴールを求められていると意識しながらやりました。ただ、その分、相手にカウンターを繰り出された時に(カバーできる位置に)いられないもどかしさはすごくあった。自分が後ろまで戻るシーンも何度かありましたけど、一番前にいれば常に戻っているわけにもいかない。これからはいろんなポジションをやると思うんで、それぞれでもっとうまくできるようになっていけたらいいかなと感じます」

 本人も言うように、今季はボランチやインサイドハーフに加えてウイング的な役割も求められる見通しだ。それぞれの位置でいかにして絶妙な攻守のバランスを取るべきかを見出すことができれば、彼はもう一段階上の領域に飛躍できるはず。今年秋から始まる2022 FIFA ワールドカップ カタール アジア最終予選で森保一監督から重要な役割を託される可能性も高まっていきそうだ。

 イニエスタやフェルマーレンといった世界最高レベルのプレーヤーたちと日々を過ごすことで「再びワールドカップの大舞台に立ちたい」という思いは日に日に強まっていることだろう。これまでの山口はあまり欲を面に出すタイプではなかったが、そろそろ殻を破ってもいい頃。ベテランというべき年齢に差し掛かってきた背番号5の一挙手一投足に注目しながら、神戸の動向を興味深く見守っていきたい。

文=元川悦子

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