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安部裕葵がバルセロナで得る様々な経験…東京五輪世代のリーダーへ

2020.01.04

[写真]=金田慎平

「選手みんなで共通意識を持ってできましたし、ミーティングで森保さんも一緒に守備のことを突き詰めたので、短期間であれだけ一体感を持って戦えました。試合後の雰囲気を見ても分かるように、みんなすごく楽しそうですし、充実感もあった。こういう環境を提供してくれた人に感謝したいです」

 2019年の日本代表活動のラストとなった12月28日のU-22ジャマイカ戦。森保一監督率いるU-22日本代表は試合開始から凄まじい勢いでプレスをかけ、ボールを奪いゴールを量産した。自ら得たFKで中山雄太の先制ゴールをお膳立てし、自身もPKで5点目を奪い、卓越したドリブルで相手を翻弄した安部裕葵は満足そうな表情を浮かべていた。

 昨年7月のバルセロナへの電撃移籍から約5カ月間。バルセロナBに在籍し、今季前半戦はセグンダB(3部相当)で15試合4ゴールという実績を残してきた。初めての海外挑戦の戸惑いや野心あふれる仲間たちとプレーする喜びや悔しさ、トップに呼ばれない不完全燃焼感など本人の中では様々な感情が渦巻いたはずだが、それらを全てを受け入れて前へ突き進もうとしている。そんな貪欲さが久しぶりに合流したU-22日本代表の一戦に表れていた。

「クラブには若い選手が多いので、もちろん競争もあります。でも得点シーンなんか見ればみんなが喜ぶ。競争の中にお互いを称え合う関係があるいい関係があるので充実しています。日本に戻ってきて、そういう関係の素晴らしさをより感じました。みんな五輪を意識していて競争がある中、いいコミュニケーションが取れた。普段と違う環境で得た知識や情報を取り入れて、これからのサッカー人生に生かしたいと思います」

 特にコミュニケーションの部分では、自らリーダーシップを発揮しようという強い意欲を押し出していた。ともに2シャドーを形成した旗手怜央が「ミーティングで音頭を取ったのは雄太くんだったり、裕葵だった」と話す通り、20歳の安部よりも年上の選手も多い中、積極的に意見を言い、チームの意思統一を図るように努めたのだ。

 ジャマイカ戦で見せた強力なハイプレスも、安部が「ボールを奪われた瞬間、後ろに下がるのはきついから、前に走ることがすごい大事だと思う」と強調したことで全員の意識が変わった部分は少なからずあるだろう。「前3枚とボランチ2枚、両サイドを含めて本当に全員が共通意識を持てていないとああいう守備はできないので、監督をはじめとして細かく突き詰めてやれれたのは本当によかった」と安部自身も手応えを口にした。そうした守備意識の高さこそが、名門クラブで学んできた財産なのだろう。

 海外の名門クラブにいれば、自分の考えや意見を主張しなければ成功は手にできない。安部が尊敬する本田圭佑もそういうタイプの選手だった。中学時代に本田が経営に携わるS.T.FOOTBALLCLUBでプレーした安部は、日本人離れしたメンタリティに磨きをかけているようだ。東京五輪も1つの重要な通過点ではあるが、それ以上に実現しなければならないのがバルセロナでのトップチーム昇格と公式戦出場だ。それを果たすためにも、バルセロナBでより一層、ゴールとアシスト数を伸ばし、目に見える活躍を示す必要がある。

 弱冠20歳の安部のキャリアがどう転ぶかは誰にも分からない。2020年になった途端、トップでプレーする可能性もゼロではない。バルセロナBの新年初戦は1月5日のエスパニョールB戦。トップのリーグ戦も同日のエスパニョール戦から再開される。彼はどのタイミングで表舞台に抜擢されるのか。期待は高まる一方だが、どんな時も冷静で賢くプレーできる彼ならば、成功への確実に切り開き、そのチャンスをつかめるはずだ。

「U-22ジャマイカ戦の成果をどう持ち帰る? 持ち帰るというか、やっぱり日々の積み重ねなんで。ただ、こうやってみんなとできたことですごい心が満たされたので、すごくいい経験になりました」

 清々しい笑顔を見せた安部にとって2020年は自身のキャリアを大きく左右する重要な年になる。持ち前の高度なテクニックと戦術眼に磨きをかけ、点の取れる怖いアタッカーへと変貌してほしいものである。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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