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「東京五輪は難しい」から真のエースへ…小川航基のJ2移籍から起死回生の3得点を決めるまで

2019.12.18

香港戦でハットトリックを達成した小川 [写真]=Getty Images

「最近得点が取れてなかったですし、代表活動でも得点が取れてなかった。FWが得点を取れてない時間帯が続きましたし、不甲斐ない自分がいて、その中でゴールを決められて正直、ホッとしました。『(小川が本来の姿を取り戻したのは)あの試合からだったよね』と言われるように、もっともっと点を取っていければいいと思います」

 スタメン全員を入れ替えて戦った14日のEAFF E-1サッカー選手権2019・香港戦。相手との大きな実力差があったとはいえ、日本は5-0で圧勝。開幕から2連勝を飾り、2013年韓国大会以来のタイトルに王手をかけた。

 圧勝の原動力となったのが、A代表デビュー戦でハットトリックを達成した小川航基だ。10日の初戦(中国戦)は出番なしに終わり、「僕は現状、(FWの)一番手じゃないかもしれないけど、いくらでもひっくり返せると思っている。そのためにも(今大会の)残り2試合が非常に大事になってくる。そこで監督を納得させなきゃいけないし、何かしらのインパクトを残さないと今後厳しい。やっぱり得点ですね」と強調していた。まさに“有言実行”の華々しい結果を残すことに成功したのだ。

 同い年の遠藤渓太も「小川を見てたら分かると思いますけど、あいつはああやってエゴを前面に出していくプレーヤー。そういう部分は見習えればいい」とリスペクトを口にしていたが、いい意味で自我を出せたからこそ、周囲に驚きを与える結果を残すことができたのだろう。

 身長186㎝の恵まれた体躯を誇る小川は、2020年東京五輪世代の“エースFW最有力候補”と位置付けられてきた選手だ。2017年のU-20ワールドカップでも堂安律や冨安健洋らと主力の一角を担っていた。が、グループステージのウルグアイ戦で左ひざを負傷。長期離脱を強いられたのが暗転の始まりだった。このシーズンはほぼ試合に出ることができず、2018年シーズンも定位置奪取には至らず、J1リーグ13試合出場で1ゴールという物足りない結果に終わった。

 そして、プロ4年目を迎えた今季も序盤はベンチを温める日が続き、「新加入選手との競争にも勝てず、立ち位置的にも厳しくなってきた。このままじゃ東京五輪は難しい」とも本音を吐露していた。

 自身が苦悩する傍らで、1つ年下の上田綺世が急成長を遂げ、U-22日本代表でも着実に地位を築いていった。森保一監督も、ボールを収められてゴールもチャンスメークにも長けている万能型FWへの信頼を日に日に強め、今年6月には上田をコパ・アメリカに招集するほど大きな期待を寄せた。この時、ジュビロ磐田のサブだった小川はトゥーロン国際トーナメントに参戦したが、上田との差を痛感したに違いない。

 こうした厳しい現実が環境の変化を決断させた。7月に自身初となるJ2の水戸ホーリーホックへレンタルで赴くと、水を得た魚のように生き生きとした姿を取り戻した。移籍直後にゴールを挙げ、短時間で「やれる!」という手応えを得たことも大きかった。

「残留争いをしているチームから、J1昇格争いをしているチームへ行ったことでメンタル的なところの充実がすごくありました。出場機会をもらって最初にポンポンと点を取れたので、みんなが僕を見てくれるようになった。僕がうるさく『ボールをくれ』と要求したこともあるけど、それも大事なことですからね」と笑顔をのぞかせた彼は、新天地でようやく自分らしさを取り戻し、半年間で7ゴールをゲット。復調のきっかけをつかんだ。それが代表活動にもプラスに働き、今回の香港戦でのブレイクにつながったのだ。

 これで上田とのポジション争いも横一線、あるいは「一歩リード」と言えるところまで来た。18日の最終決戦となる日韓戦はコンディション優先で上田のスタメンが有力となったが、絶好調の小川にも出番はあるはず。むしろ相手が疲れてきた時間帯の方がゴールという結果を残しやすい。大会得点王に手が届く可能性も高まりそうだ。

「日韓戦っていうのは誰もが注目しますし、僕たちもその試合が一番大事になるのはよく分かっています。絶対に負けてはいけないし、勝つために最高の準備をしていきたいと思ってます」と彼の大一番に対するモチベーションは非常に高い。

 韓国も日本と同じ2連勝。攻撃の方はセットプレーからしか得点できていないが、無失点でここまで乗り切っている。キム・ミンジェ(北京国安)やキム・ヨングォン(ガンバ大阪)らDF陣は高さと強さを兼ね備えている。小川と言えども、1人では競り勝てないと見られるだけに、周囲と息を合わせつつ、いい連携を構築しながらゴールを狙っていくことが肝要だ。

「私が求めるFW像は何よりもゴールを取れる選手」と森保監督は公言している。その理想像に近づく上で、日韓戦での得点というのは非常に大きな意味がある。半年後に迫った東京五輪の真のエースFWの座を手にするためにも、今回は持ち前の勝負強さを最大限発揮しなければならない。小川航基にはこれまで積み上げてきた全ての力を出し切り、千載一遇のチャンスをモノにしてほしいものである。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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