2019.06.14

届かない優勝トロフィー…メッシ率いるアルゼンチン代表に足りない3つのポイント

“シルバー・コレクター”のアルゼンチン代表が抱える問題とは? [写真]=Getty Images
海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファーとマルチに活動を展開中。

 アルゼンチン代表は、コパ・アメリカでなかなか結果を出せずに苦しんでいる。

 2004年ペルー大会、2007年ベネズエラ大会は、いずれも決勝でブラジルに敗れて準優勝。自国開催で優勝が至上命題とされていた2011年アルゼンチン大会では、準々決勝でウルグアイに敗れる屈辱を味わった。2015年チリ大会、そして2016年にアメリカで開催された100周年記念大会でも決勝進出を果たしたものの、ともにPK戦でチリに敗れ、タイトルを逃している。

 直近の5大会で準優勝が4度。アルゼンチン代表は当代最高のフットボーラーであるリオネル・メッシを擁していながら(メッシのコパ・アメリカ出場は2007年大会から)、近年のコパ・アメリカでは一度も優勝トロフィーを獲得できず、“シルバー・コレクター”の様相を呈している。いったいその原因はどこにあるのか。今のアルゼンチン代表に不足しているものを、3つのポイントに絞って解説していこう。

①リーダーシップの欠如

キャプテンを務めるメッシだが、仲間を鼓舞するようなタイプではない [写真]=Getty Images

 近年のアルゼンチン代表は、主にメッシがキャプテンを務めている。6月8日に行われたニカラグアとのテストマッチでも彼がキャプテンマークを巻いて先発していたので、恐らく今大会でもキャプテンはメッシということになるのだろう。10番を背負い、チャンスメイクからフィニッシュに至るまで攻撃の中心的役割を一手に担い、おまけにキャプテンも務める。メッシへの“一極集中”が甚だしい状況だ。

 メッシがこれらの役割を一手に担えるだけの強烈なパーソナリティの持ち主であれば、何ら問題はないだろう。だが、よく言われるように彼は繊細な性格で、他者と積極的にコミュニケーションを取るわけではなく、プレーに集中することで自らのリズムを作り出していくタイプ。ダニエル・パサレラやロベルト・アジャラ、ディエゴ・シメオネ、フアン・パブロ・ソリン、ハビエル・サネッティ、ハビエル・マスチェラーノといった歴代のキャプテンはリーダーシップを発揮して選手たちをまとめ上げる存在だったが、メッシは自らのプレーでチームを牽引する。チームが苦境に陥った際に鼓舞したり、敗れた時にチームメイトに声をかけたりすることは、ほとんどない。先人たちと同じ姿勢をメッシに求めるのではなく、その役割を担える人材がいないことが問題視すべき点だ。

②ワールドクラスの守備者不在

今回のコパ・アメリカでチームの中心になると見られるアルマーニ(左)、オタメンディ(中央)、フォイス(右) [写真]=Getty Images

 攻撃の中心は、誰が何と言おうとメッシだ。さらに今大会のチームには、セルヒオ・アグエロアンヘル・ディ・マリアパウロ・ディバラといったタレントも揃っている。では、守備の中心は? すぐに名前が出てこないところに、アルゼンチン代表が抱える問題の深刻さが見て取れる。

 GKはフランコ・アルマーニアグスティン・マルチェシン、エステバン・アンドラダの3人が招集された。それぞれ32歳、31歳、28歳だが、キャップ数はアルマーニとマルチェシンが4試合、アンドラダが1試合。強豪国のゴールマウスを任せるには、かなり不安がある陣容と言えるだろう。

 DF陣はマンチェスター・C所属のニコラス・オタメンディが中核だが、彼はクラブで不動の地位を築いているわけではなく、その他の面子も経験値の面で不安を残す。ミランダマルキーニョスチアゴ・シウヴァを擁するブラジル代表や、ディエゴ・ゴディンホセ・ヒメネスが立ちはだかるウルグアイ代表に比べると、タレント力では劣っている。21歳のフアン・フォイスには近未来の守備リーダーとして大きな期待がかかっているものの、まだ大きな信頼を寄せる存在にはなっていない。

③メッシを操り、メッシに操られるタレントの不在

ジオヴァニ・ロ・チェルソはエースと“共鳴”できる可能性を秘めているが…… [写真]=Getty Images

 バルセロナには今も昔も、メッシを操り、メッシに操られるタレントが数多く在籍してきた。過去にはシャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタ、ロナウジーニョ、サミュエル・エトオらがいたし、現在ではイヴァン・ラキティッチルイス・スアレスフィリペ・コウチーニョなどが顔を揃える。彼らは、どこにボールを出せばメッシの能力を最大限に生かせるか、メッシに預けた後、どう動けばパスが戻ってくるのかを熟知しており、それが効果的な攻撃を生み出すことにつながった。

 しかしアルゼンチン代表では、メッシにボールを預けて「あとは任せた」となることが多い。リオネル・スカローニ監督も「メッシが近付いてきたら離れてスペースを空けるように。メッシがバイタルエリアに進入したら下がるように。メッシは独力で敵陣を突破し、決定的な仕事ができる唯一の存在だ」と選手たちに説いているという。実際、上述のニカラグア戦でメッシが先制点を決めた場面では、ドリブルを仕掛けるメッシに連動する動きは皆無で、アルゼンチンの選手たちは棒立ちでその動きを眺めるだけだった。これではメッシが封じられた際、他の手が打てなくなる。

 ただ、ニカラグア戦ではそのメッシとジオヴァニ・ロ・チェルソがプレー面で“共鳴”する場面が垣間見れた。メッシがロ・チェルソを探してパスを出し、リターンを受ける場面があり、またロ・チェルソがアグエロやマティアス・スアレスにラストパスを供給する場面もあった。ロ・チェルソが他の選手を繋ぎ合わせることができれば、メッシが前線で孤立する状況が解消されるかもしれない。

文=池田敏明
写真=Getty Images

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