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タレント不在も狙うは初優勝…キーワードは「頭を使えば、より良く走れる」【U20イタリア代表】

2019.05.23

初優勝を狙うU-20イタリア代表 [写真]=Getty Images

 42年の歴史を持つU-20ワールドカップ(2005年まではワールドユースの名称)にイタリア代表が2大会連続で出場するのは今回が初。史上最高位となる3位を獲得した前回大会に続いての出場だ。

 この年代には、ユヴェントスFWモイーズ・キーン、ローマMFニコロ・ザニオーロ、ブレシアMFサンドロ・トナーリといったスター候補が控える。昨年夏に開催されたU-19欧州選手権で準優勝し、この大会の出場権を獲得する原動力となった3人だ。しかし、U-19欧州選手権後、予想を上回る成長を遂げた3人は、U-21を飛び越え、すでにフル代表入りを果たした。クラブでも主力としてプレーしている上に、フル代表のユーロ予選、来年の東京五輪予選を兼ねたU-21欧州選手権へのダブル招集も見込まれることから、U-20ワールドカップの招集は見送られている。

 U-21が欧州選手権で最多5回の優勝を誇り、U-19も欧州で3度優勝の実績を持つイタリアだが、このU-20のカテゴリーでは2017年の3位が最高位。前回大会までは、1987年と2005年、2009年に記録したベスト8が最高の成績だった。2017年大会を指揮したアルベリコ・エヴァーニは現在フル代表の助監督を務め、代わって、2018年欧州選手権で準優勝に導いたパオロ・ニコラートが同大会後からU-20の指揮を執っている。

 1966年12月21日生まれのニコラートは、選手としてプロのカテゴリーでプレーしたことはないものの、キエーヴォ下部組織のコーチを担い、指導者として名を挙げた。13-14シーズンにはU-19キエーヴォを指揮し、プリマヴェーラで優勝。翌シーズンはレーガ・プロ(3部リーグに相当)のルメッツァーナの監督に引き抜かれた。初めて指揮官を務めたプロ・カテゴリーでは際立つ功績を残すことはできなかったが、キエーヴォ時代の指導力がイタリア・サッカー連盟(FIGC)の目に留まり、2016年にU-18の指揮官に抜擢され、U-19、そしてU-20と指導の舞台を上げている。

ニコラート

指揮を執るのはパオロ・ニコラート監督 [写真]=FIFA via Getty Images

「頭を使えば、より良く走れる」。これがニコラート・イズムだ。「チームにはこのような国際的なレベルで試合をする機会がなかった選手が多くいる。それでも選手たちは、イタリア代表のユニフォームのために、意欲を持ちベストを尽くそうとしているように私には思える。とてもよく働くチームで、選手間にはリスペクトがあり、仲も良い。トップレベルで継続してプレーする幸運に恵まれたものもいる。そういった選手が技術的にも精神的にもチームを支える柱となるだろう」と国際経験の高い選手への期待を示した。

 また、日本、メキシコ、エクアドルと戦うグループステージについては「おそらく最も骨の折れる組。しかし、強豪チームとも戦う覚悟は備わっている。多くの選手を輩出した昨年のU-19欧州選手権でグループ内での存在感を際立たせたように、驚かしたいという意欲にあふれているんだ。選手達が当たり前の結果に満ち足りることがなければ私としては満足だよ。私は、選手たちが何か特別なものをやり遂げるのをこの目で見てみたい」と大会を1週間前に控えたインタビューで答えている。

 キーン、ザニオーロ、トナーリの“A代表組”を欠くが、各ポジションに質の高い選手を擁している。GKではアレッサンドロ・プリッツァーリ(ミラン)が、レオナルド・ロリア(ユヴェントス)とマルコ・カルネセッキ(アタランタ)を抑えて定位置を確保することは間違いないだろう。ミランのチームメイトで1歳年上のジャンルイジ・ドンナルンマの後継者として期待され、17歳で挑んだ前回大会でもゴールを守っている。ウルグアイ代表との3位決定戦では初出場にもかかわらず、PK戦で2本のシュートをセーブして勝利に貢献。その名を世界に轟かせた。17-18シーズンにはレンタル移籍したセリエBのテルナーナで19試合に出場するなど、すでに豊富な経験を持つ。

プリッツァーリ

ゴールマウスを守るのはプリッツァーリか [写真]=Getty Images

 経験面では左サイドバックのルカ・ペッレグリーニも申し分ない。今シーズン、ローマではセリエAの4試合とチャンピオズリーグの2試合でピッチに立った。冬にレンタル移籍したカリアリでも12試合に出場。思い切りの良い攻め上がりと脚力を生かした突破が魅力だ。右サイドバックには、ラウル・ベッラノーヴァが出場されると目される。U-19で19試合に出場し、ニコラート監督に重宝されてきた存在。今冬の移籍市場でミランからボルドーへの移籍が決まったが、今シーズン終了までレンタルの形でミランに留まった。

 センターバックには、ダヴィデ・ベッテラ(ペスカーラ)、マッテオ・ガッビア(ルッケーゼ)、アレッサンドエロ・ブォンジョルノ(カルピ)の3人が控える。ベッテラはインテル下部組織の出身で、2018年の1月にアタランタによって700万ユーロ(約8億6000万円)の移籍金が支払われたほど将来性を買われている。U-19イタリア代表では主将も務め、今冬にはペスカーラにレンタル移籍した。ただし、チームがセリエA昇格プレーオフに参戦しているため、合流はプレーオフを終えてからとなる(準決勝第1戦:22日、第2戦:26日、決勝トーナメント第1戦:30日、第2戦:6月2日)。主戦場のセンターバックだけでなく、守備的MFもこなせるユーティリティのガッビアは、昨年夏にミランからルッケーゼにレンタル移籍。カテゴリーは下位のセリエC(3部リーグ)ではあるが、今シーズンは29試合に出場し研鑽を積んだ。190センチの長身で、屈強なフィジカルを生かした対人プレーで威力を発揮するブォンジョルノは、トリノが保有権を持つ。昨年4月のクロトーネ戦でセリエAデビューをし、今シーズンはカルピの一員としてセリエBの18試合に出場した。

 ザニオーロとトナーリが不在の中盤は、昨夏のU-19欧州選手権で主力の一人だったフィリッポ・メレゴーニ(ペスカーラ)が3月にじん帯断裂の大ケガを負い、今大会の招集から外れている。アタランタ下部組織出身で将来性も高く、主将を務めていただけに、大きな痛手となってしまった。それでも質の高いMFは少なくない。

 アンドレア・コルパーニ(アタランタ)は、プレーメーカーながら今シーズンのプリマヴェーラで10得点を記録。利き足の左足から繰り出すラストパスの精度も高く、5つのアシストをマークしている。トナーリに代わってチームの心臓となり得る期待の中心プレーヤーだ。ダヴィデ・フラッテージ(アスコリ)は、アタランタと同様に育成に定評のあるローマの出身。ローマ退団を表明したダニエレ・デ・ロッシを目標とするプレーヤーだ。サッスオーロからレンタル移籍した今シーズン、セリエBで32試合に出場。運動量が豊富でテクニックも高く、二列目からの飛び出しで得点も狙う。ドメニコ・アルベリコは、このチームで唯一の“国外組”。ドイツのプフォルツハイム出身でU-15とU-16のカテゴリーではドイツ代表でプレーした。現在もホッフェンハイムIIに所属し、両サイドでプレーする利便性が評価され、ニコラート監督によって招集される運びとなった。

コルパーニ

チームの中心として期待がかかるコルパーニ [写真]=Getty Images

 FWにはイタリアが最も期待を寄せる選手がいる。アンドレア・ピナモンティ(フロジノーネ)だ。インテルからレンタル移籍した今シーズン、残念ながらチームを残留に導くことはできなかったが、27試合に出場し5得点をマーク。トップリーグでコンスタントにプレーした経験を持つ希少な存在で、フィジカルと機動力を併せ持つダイナミックなプレーが売りだ。豪快なプレーヤーといえば、ジャンルカ・スカマッカ(サッスオーロ)を忘れてはいけない。195センチの強靭なフィジカルを持ちながら、非凡なテクニックを兼備する巨体アタッカー。ローマとPSVの下部組織でプレーした経験があり、今シーズンはオランダのズウォレにレンタル移籍した。イタリア代表のアンダー世代ではU-16以降、攻撃の中心選手として得点を重ねてきた。昨夏のU-19欧州選手権、ポルトガル代表との決勝でも1ゴールを挙げており、ニコラート監督の信頼は厚い。

 そして、今大会で10番を託されたのがクリスティアン・カポーネ(ペスカーラ)だ。この若者もアタランタが数多く輩出した有望株の一人で、15歳のときにはリヴァプールからの誘いを受けた経緯もある。今シーズンはメレゴーニ、ベッテラと同じく、アタランタからセリエBのペスカーラにレンタル移籍してプレー。ベッテラはセリエA昇格プレーオフの招集メンバーに入ったが、カポーネはグループステージから参戦することが許可されている。

カポーネ

10番を背負うのはカポーネ [写真]=Getty Images

 U-20イタリア代表は、昨年9月から欧州8カ国によるエリートリーグに参戦し、強化を図ってきた。しかし、初戦のポーランド代表戦に3-0と勝利を収めた以降は勝ち星に恵まれず、最終成績は最下位と悔やまれる結果に終わった。ただ、これらの試合は実験的な意味合いが強く、今大会に招集しなかった選手の起用も多くあった。グループステージでは、南米王者のエクアドル代表、北中米準優勝のメキシコ代表、そして日本代表と厳しい戦いが予想されるが、アッズリーニ(アンダー世代のイタリア代表の愛称)もまた列強が集う欧州で準優勝し、本大会への切符をつかんできたチーム。強豪国の一角として、前回大会以上の成績を残そうと気概に溢れているに違いない。

文=佐藤徳和/Norikazu Sato


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