2019.05.14

若き日本代表の“ラストピース”…中村敬斗が取り戻した「本来の感覚」

ガンバ大阪は中村敬斗のトゥウェンテへの期限付き移籍を発表した [写真]=Jリーグ
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

「(U-20ワールドカップの代表メンバー入りは)ガッツリ諦めずに狙ってました。久保(建英=FC東京)と安部(裕葵=鹿島アントラーズ)選手が上に行くってことで、ポジション的に2つ空く可能性があった。そこをスレスレ狙ってやろうというのは常に考えてました。それでルヴァンカップで結果を残したから、今ここにいると思いますね」

 13日の流通経済大学との練習試合、U-20日本代表の左MFで先発出場した19歳のアタッカー・中村敬斗ガンバ大阪)は「ラストピース」という自らの立ち位置を自覚していた。同時に、チームに貢献することを第一に考えながら、攻撃の迫力を出そうとしていた。

 序盤からタッチライン際でアップダウンを繰り返し、時には左サイドバックの東俊希(サンフレッチェ広島)の後ろまで下がってカバーリングに入った。守備意識の高さは以前とは比べ物にならない。前半終了間際には、右サイドを駆け上がった喜田陽(福岡)のクロスにファーから猛然と飛び込んで右足を一閃。強烈なシュートをゴールネットに突き刺した。

 最終的にU-20代表は5-0で勝利したが、フル出場した中村の一撃がチーム全体の活力になったのは明らかだった。今月23日おに開幕するU-20ワールドカップへ向けて、弾みをつけることに成功した。

「『逆サイトからクロスに入ることが大事』と言われていて、それを今が課題なんですけど、今日はその形からゴールを決めることができた。練習したところの形が出たかなと思います」と嬉しそうに語った得点は、影山雅永監督にとっても明るい材料になったはず。というのも、上述の通り久保建英と安部裕葵が招集外となった上に、滝裕太(清水エスパルス)がケガで離脱。日本はサイドアタッカーの人材が手薄になっている状態だからだ。

 斉藤光毅(横浜FC)や郷家友太(ヴィッセル神戸)らが名を連ねたが、高さと力強さ、傑出した得点感覚を誇る中村起用のメドが立ったことは大きい。後半には右サイドでプレーし、「左右はそんなに大差ない」と本人も言い切るほどの手応えをつかんだだけに、本大会でのブレイクの期待はいやが上にも高まってくる。

順風満帆ではなかったプロキャリアのスタート

レヴィ―・クルピ監督に高く評価されJ1デビューを飾った [写真]=Getty Images

 2017年のU-17ワールドカップでは4得点を挙げ、森山佳郎監督率いるチームのエースに君臨。2018年には飛び級でガンバに入団。香川真司(ベシクタシュ)や柿谷曜一朗(セレッソ大阪)の才能を見抜いたレヴィ―・クルピ監督に高く評価され、名古屋グランパスとの開幕戦でJ1デビューも飾った。さらに、ルヴァン杯ではプロ初ゴールを記録。弱冠17歳の少年は順調なキャリアを歩み始めたかに思われた。

 ところが、宮本恒靖監督が就任すると状況は一変した。

「得点感覚以外のところはプロの平均以下。走れないし、戦えないし、球際も行かないし、オフ・ザ・ボールの動きも足りない」と指揮官から厳しく指摘され、ベンチメンバーからも外された。そこからは自分を見つめ直す時間を強いられ、守備面やハードワークなどの課題と向き合った。その成果が出て、倉田秋が出場停止になった昨年11月24日のV・ファーレン長崎戦で初のJ1フル出場を果たした。同試合では念願のゴールも決め、「プロ2年目の2019年はJ1でレギュラー争いができる」と中村自身も手応えをつかんでいたという。

 しかし、プロの世界は甘くなかった。今季序盤もトップチームでプレーできず、U-23での活動がメインになった。そんな彼を支えたのが、森下仁志監督(ガンバ大阪U-23)だった。

「森下監督には本当に鍛えてもらったし、メチャメチャいい恩師だと思ってます。守備とかハードワークをやっていくと、自分の一番大事な武器を忘れてしまうんですよね。『それを発揮しなきゃいけない』と言われて、実際に出せたのが、ルヴァン杯(4月24日のジュビロ磐田戦、5月8日の清水戦)の2つのゴール。左から切れ込んで決めるっていう形が作れたのは、“本来の感覚”が戻ってきてる証拠だと思います」と中村は目を輝かせた。

“一番大事な武器”は流経大との練習試合で随所に発揮された。持ち味の推進力からゴールという結果も手にし、いよいよ世界との戦いに挑もうとしている。

U-17W杯で対戦したイングランド代表たちは…

U-17ワールドカップはPK戦の末、ラウンド16で敗退した [写真]=Getty Images

 同世代たちは大舞台で活躍している。U-17W杯・ラウンド16でPK負けを喫したイングランド代表には、今シーズンのブンデスリーガで33試合出場11ゴールを記録したジェイドン・サンチョ(ドルトムント)やプレミアリーグを制したフィル・フォーデン(マンチェスター・C)らが名を連ねていた。彼らとの距離を詰めるためにも、ここから一気に成長スピードを上げていく必要があるのだ。

 振り返ってみれば、遠藤保仁は1999年ナイジェリアで開催されたワールドユース(現・U-20W杯)で準優勝の立役者となり、今野泰幸もキャプテンとして2003年のUAE大会でベスト8へとチームを導いた。2人とも若き日に世界で結果を残し、Jリーグや日本代表でも活躍してきた。偉大な先輩たちの後を追うべく、中村にもポーランドでの大ブレイクが期待される。「影山ジャパンのエース」へと飛躍するべく、天性のゴールセンスを遺憾なく発揮してほしいものだ。

文=元川悦子

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