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斉藤光毅「結果を残さないと同世代の人たちは…」…17歳のアタッカーが見据える世界との戦い

2019.04.23

横浜FCに所属する17歳の斉藤光毅が躍動している [写真]=金田慎平

「ドリブルしている最中に、自分の中で『(シュートを)打つ』って決めていた部分があった。うまく縦で相手を抜けて、(シュートの)角度を作ってGKのニアを抜けたのはよかったと思います」

 21日のJ2リーグ・ジェフユナイテッド千葉戦。17歳のアタッカー・斉藤光毅横浜FC)は85分、味方GKのロングボールに反応。一瞬のスピードで抜け出し、左サイドでボールを受けた。ゴールライン際で相手DFを突破すると、右足を振り抜いて、豪快に右足を一閃。ゴールネットを揺らした。


 4月3日にプロ初ゴールを記録したばかりの若き点取屋にとって、自身2点目はチームの勝利を決定付ける貴重な追加点となった。

ドリブル突破から右足を振り抜きプロ2点目を決めた [写真]=Getty Images

 横浜FCは1点ビハインドを背負っていたが、斉藤が流れを変えた。54分にピッチへ送り出されると、前線での推進力が攻撃陣を活性化し、試合のリズムはガラリと変わった。直後にイバのゴールで同点に追いつくと、82分には田代真一のゴールで逆転に成功。そして、最後は斉藤自らが決めて横浜FCは勝利を手にした。

 この華々しい活躍を間近で見ていた20歳年上の松井大輔も「シュートもすごくうまいし、自分の形を持っている。試合をこなすごとにだんだん強くなってきた。性格的にもすごい真面目だし、大きく成長するんじゃないかな。本当にいい選手だよね」と手放しで喜んだ。斉藤自身は、「チームが苦しい状態で自分が入って3点を取れたのは、自分のおかげってわけではないかもしれませんけど、結果が出たことはすごくポジティブに捉えて、今後の自信につなげられたらいいかなと思います」と安堵感をにじませた。

原動力は久保建英ら同世代たちの存在

[写真]=Getty Images


 最近の際立った活躍の原動力には同世代の存在がある。久保建英(FC東京)や松岡大起(サガン鳥栖)、西川潤(桐光学園高/セレッソ大阪入団内定)らは斉藤と同じ2001年度生まれの同級生。一足先にJ1の舞台で経験している。

「結果を残さないと周りの同世代の人たちはすぐ上に行ってしまう。危機感はずっと持ってます。今シーズンは二桁得点を目標にやっているので全然満足してないですし、練習からもっともっと突き詰めてやっていきたい。自分のストロングポイントは狭いスペースを打開できることだったり、1対1や裏への飛び出しですけど、全部をもっと伸ばしていかないといけないという自覚はあります」(斉藤)

 千葉戦を視察に訪れていた日本代表の森保一監督も、「ハングリーにプレーしている。そういう若い選手がどんどん出てきてほしい」と、斉藤のひたむきな姿勢を評価していた。これには本人も「ありがたいです(笑)」と満面の笑みを浮かべた。

 見据える先には“世界”が待ち受けている。5月にポーランドでU-20ワールドカップが開幕する。斉藤は「メンバー当確」と目されているが、現在の代表チームでは“ジョーカー”として起用がメインとなっている。

 一部で噂されるように、仮に久保が同時期に開催されるコパ・アメリカに招集された場合、彼は安部裕葵(鹿島アントラーズ)や藤本寛也(東京ヴェルディ)、宮代大聖(川崎フロンターレ)らとともに、攻撃陣を牽引していかなければならなくなる。17歳ながら背負うものは非常に大きいのだ。

ポテンシャルへの期待を表す大先輩たちの助言

来月からU-20W杯が開幕する(写真は3月に開催されたU-20アメリカ代表との親善試合) [写真]=Getty Images

 来る大一番を前に、斉藤は「自分のサッカーキャリアの中でU-20ワールドカップが大きいものになるように結果を残したい」と意気込みを語った。2017年大会で活躍した堂安律(フローニンゲン)は、欧州への移籍を実現し、20歳でA代表に定着した。世界各国のスカウトが押し寄せるアンダーカテゴリーの国際大会は、その後のキャリアに大きな影響を及ぼす可能性がある。

 かつて、Jリーグから海外へ移籍し、日本代表として活躍した松井大輔は「光毅に一番必要なのは、試合経験を積み重ねること。今はカズさん(三浦知良)や自分みたいな先輩、イバやレアンドロ・ドミンゲスみたいな外国人選手と一緒にやるのがすごく大事。18~19歳になった時にJ1とか上のレベルに行くのもいいことだと思います。そこでまた悩むかもしれないけど、うまく乗り越えて行ってほしいですね」と、経験の重要性を語った。若いスターが順調に飛躍し、日本代表の主力へ上り詰めた例が過去には少ないだけに、彼には勢いに乗り始めた今を大事にしつつ、結果を残し続けてほしい。

「17歳で若いとか、試合に出ているだけでは何の意味もない。今日のゴールのように数字に残る活躍をしたかどうかが全て。今日の斉藤くんは本当に素晴らしい得点を決めた。そこに注目してほしいと僕は思います」

 これは、対戦相手・千葉のベテランFW佐藤寿人の試合後のコメントだ。Jリーグ通算得点で2位の記録を持つ男は、17歳の活躍を目の当たりにして、厳しくも愛のある言葉を口にした。大先輩たちが期待を寄せるのも、『斉藤光毅』という未完の大器が秘める大きなポテンシャルを感じているからに他ならない。

 果たして、この若武者がどのようなステップアップを遂げるのか。まずはポーランドでのブレイクを楽しみに待ちたい。

[写真]=Getty Images

文=元川悦子

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