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レギュラーの座を懸け“新ビッグ3”とのサバイバルへ…原口元気「必ず勝てる」

2018.10.23

[写真]=Getty Images

「いやあ、パーフェクトでしょう。あんないいプレーがたくさん見られた試合は日本代表の中でもそうそうないし、僕自身も見ていてすごく楽しかったし、物凄く刺激をもらえた。彼らに負けないようにしないといけない」

 南野拓実のゴールに始まり、大迫勇也、堂安律が得点して、4-3で打ち勝った16日のウルグアイ戦(埼玉)。試合後、原口元気は若手の活躍を素直に認め、最大級の敬意を払った。

 4カ月前、ロシアの大舞台で活躍した男は、今回の日本代表2連戦で世界トップレベルの経験値を伝える役割を託されたはずだった。ところが、原口が先発で起用されたのは12日のパナマ戦。メインと位置付けられたウルグアイ戦はベンチスタートとなり、後半ラスト3分間ピッチに立っただけだった。長友佑都や吉田麻也など他のロシア組がピッチに立つ中、彼だけが控えに回されたのは、「堂安、南野、中島翔哉の2列目トリオをロシア組と融合させる」という森保一監督の狙いがあったからだ。そして、その3人が期待以上の強烈なインパクトを残したのだから、原口自身も安穏とはしていられない状況になってきた。

 それでも、「彼らがこれ以上ないくらいの勢いでしたから、面白いし、このくらいがいい。楽しみになった。ロシアの時には誰もこんな状況、想像していなかったでしょ。ホントに自分にとってすごくいいことだよね」と、どこまでもポジティブだった。むしろ新世代から負けじ魂を掻き立てられる状況を楽しんでいるかのようだった。

“世代間の融合”に必要な人材

10月の代表戦、原口に与えられた出場機会はメインのウルグアイ戦ではなくパナマ戦だった [写真]=Getty Images

 原口が“新ビッグ3”とも言われる彼らとのポジション争いを制するためには、所属クラブで結果を出すしかない。ロシア・ワールドカップ後に移籍したハノーファーでは背番号10を与えられ、アンドレ・ブライテンライター監督からも高評価を受けていた。が、新天地合流直後に太ももを痛め離脱を余儀なくされ、悪循環が始まった。

「練習の45分くらい前まで車の手続きとかをさせられてバタバタして、ちゃんと準備できないまま『何か嫌だな』と思いながら入ったんです。アップも違うやり方で『これ、温まんないな』と思っていたら、案の定ケガをしてしまった。筋肉系ってそういう時にやるから」

 約2週間で復帰し、8月25日のリーグ開幕戦(対ブレーメン)には後半から出場したものの、「100%の状態じゃない選手は使えない」と指揮官に言われ、完全復帰まで1カ月もの時間を費やしてしまったという。それらの紆余曲折が日本代表の10月シリーズにも微妙に影響したのかもしれない。

 ただ、香川真司や乾貴士の招集を見送りながら、ケガから復帰したばかりの原口をわざわざ呼んだことからも、森保監督は原口が新生ジャパンに必要な人材だと位置付けているはずだ。指揮官がテーマに掲げる“世代間の融合”を実現するためにも、原口がトップコンディションを取り戻すことは急務となる。もちろん本人も強い自覚を胸に秘めている。

「僕も1年ぶりくらいにブンデス1部が戻ってくるなという感じがしている。この半年プレーしたフォルトゥナ(・デュッセルドルフ)は2部でしたからね。まあ自信はあります」と不敵な笑みを浮かべたが、振り返ってみると1部でフル稼働したのは2シーズン前に遡る。そのシーズン終盤には、契約延長問題の影響で出場機会が減少。2017-18シーズン突入後は飼い殺しに近い状態にまで追い込まれた。2シーズンぶりとなる1部でのプレー。負傷も相まって難しいスタートとなったが、原口は前だけを見据えている。

「ブンデスで自分の力を示して、例え代表に入れなくてもそれがフェアな競争。でも必ず勝てるようにしますよ」

“ぶっつけ本番”のフル出場

20日のリーグ戦では今季初のフル出場を果たした [写真]=Getty Images

 新ビッグ3が躍動する今、目に見える結果を残せなければ、森保ジャパンの2列目をスタメンで担うことは難しいだろう。それでも原口には、中島にも堂安にもない武器がある。鍛え上げたフィジカルと走力だ。

 ドイツに渡り、屈強な選手たちと対峙することで、フィジカルの弱さを痛感した。そこから肉体改造と走り方の改善に着手した。地道で辛いトレーニングを続けると、肉体はより強固になり、ハードワークや献身的な守備を可能にするスタミナとスプリント力を手にした。

 20日のリーグ戦(対レヴァークーゼン)は右サイドで先発出場した。本職の左サイドは真逆のポジション、さらに日本からドイツに戻った直後のぶっつけ本番だった。試合はアウェイのハノーファーが退場者を出し、原口も守備に奔走する時間が続いた。チームは終了間際に追いつかれ2-2のドローとなったが、原口は持ち前の走力で最後まで戦い抜いた。そして、これが今季初めてのフル出場だった。

 あとは結果だ。与えられた出番でゴールに直結する仕事を増やせば、10番として認められる。その先に、日本代表のスタメンの座が待っている。

 原口元気の逆襲はここからが本番だ。

文=元川悦子

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