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初戦で見せた久保建英の“真骨頂” あらためて認識した17歳の資質/AFC U-19選手権

2018.10.21

得点後、橋岡と喜びを分かち合う久保 [写真]=佐藤博之

「おいおい、3枚でいいのか?」

 久保建英の武器——は、いろいろあるわけだが、左足のキックがその一つであることに異論は出まい。少々距離があったとはいえ、ゴール前右寄りの位置で得たFKである。狙わないはずはなく、U-19北朝鮮代表が並べた壁が3枚、しかも長身選手を含んでいなかったのは、少々「久保」を侮り過ぎていたように思う。

「入るなと思った」

 蹴る態勢を整える時点で、久保は直観的にそう思ったとも言う。実際、左足から放たれたFKは狙いどおりの軌道でニアサイドを射抜き、ゴールネットを揺らした。

「ゴールが入って良かったです」

 そう微笑みながらゴールシーンを振り返った日本の9番は、得点直後は喜びを爆発させてチームメートたちと熱い抱擁を交わした。2-0とリードしながら、2-2に追い付かれる展開から生まれた決勝ゴールとなる3点目である。まさにチームを勝利に導く一撃だった。

久保建英

勝ち越し点を決め、ベンチへと走る久保 [写真]=佐藤博之

 U-20ワールドカップのアジア最終予選を兼ねて開催されるAFC U-19選手権。その初戦で日本と対峙したのは隣国の北朝鮮。各年代で対戦すると、必ず激戦になる難敵である。U-19年代では、2大会前の2014年大会準々決勝でFW南野拓実、MF井手口陽介、GK中村航輔らを擁したチームが苦杯をなめたのが記憶に新しい。

 今回の北朝鮮も既にA代表へピックアップされている選手を含めた陣容を整えてきており、決して油断できない相手なのは分かっていた。前半の入りは北朝鮮が中途半端に日本をリスペクトしてくるようなプレーに終始したところにつけ込んで2点を奪うことができたが、そこから反撃を許して2失点。「どこかにみんな気の緩みがあった——と言い切るわけじゃないですけれど、結果から見るとそうしたことになってしまうかなと思う」と久保は振り返る。

 ただ、「前半も悪い試合をしていたわけではないと思います」という久保の感触にも異論はない。確かに前半の終盤になってからの流れ自体に猛省すべき材料はあるが、相手の土俵と言うべき空中戦でも各人が踏ん張り、エアリアル・デュエル(空中戦での1対1)の勝率は62.5対37.5と日本が圧倒。主導権を譲った時間も限定的だった。

 同時に久保はこうも言う。

「逆に『2-0で勝っているときからで良かったな』というのが自分の感覚。あれが1-0からだったら、もっと難しくなっていたと思う。そういうことをポジティブに捉えつつ、次に向けてみんなで話し合って、ああいうことがないようにしていきたい」

久保建英

[写真]=佐藤博之

 試合の中で変に悲観してしまっても良いことは何もないわけで、状況を前向きに捉え、訪れる好機を狙えるメンタリティも、久保の隠れた武器だろう。そして巡ってきたチャンスで慌てふためくことも恐れることもなく、堂々と決め切る力もあることは、冒頭で触れた決勝点のシーンに象徴されるとおりである。

 MF斉藤光毅の先制点を演出した場面がそうだったように、周りを活かす力も備えた選手であることは言うまでもない。ただ、やはりプレッシャーのかかるシチュエーションで「決め切れる」部分こそが久保の真骨頂である。今回のU-19代表は久保以外にも「強烈な個が揃っているチーム」(久保)なのは間違いないが、この2001年生まれの17歳が特別な資質を持っていることもまた確かなこと。あらためて、そんなことを認識させられる初戦となった。

取材・文=川端暁彦

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