2018.10.09

【海外組の現在地】吉田麻也がようやくリーグ戦初出場、代表戦は復調への近道か

吉田麻也
ようやくリーグ戦初出場を果たした吉田。チェルシー戦での第一歩をきっかけに、先発の座を奪い返すことはできるか [写真]=Getty Images
1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。中央大学卒。2001年より英国ロンドン在住。香川真司のマンチェスター・U移籍にあわせ、2012〜14年までは英国マンチェスター在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。

 シーズン開幕から約2カ月が経過し、サウサンプトンの吉田麻也がようやくプレミアリーグで初スタメンを飾った。第7節までリーグ戦の出場が一度もなく、出番はチームとして優先順位の落ちるリーグ杯の2試合のみだった彼が、7日に行われた第8節のチェルシー戦で先発を果たした。

 吉田の代わりに、これまでCBの位置で起用されてきたのが、オランダ代表DFヴェスレイ・フートと、新戦力のデンマーク代表DFヤニク・ヴェステルゴーアの2人。両者とも「強さと高さ」が武器のCBで、ソリッドで力強いサッカーを志向するウェールズ人のマーク・ヒューズ監督の好みに合っている。

 もっとも、指揮官の采配は、CBだけでなくセントラルMFを含めたチームの背骨部分に「フィジカルの強い」選手を配置する傾向がある。そのため、読みの良さとビルドアップ力をストロングポイントにする吉田は、2人の後塵を拝してきた。

 その証拠に、セントラルMFのポジションでも、昨シーズンまでレギュラーを務めたオリオール・ロメウがベンチメンバーに降格した。機転を利かせた縦パスで攻撃陣を操るスペイン人MFを外し、代わりに、豊富な運動量とボール奪取力に定評のあるMFピエール・エミール・ホイビュルクとMFマリオ・レミナの2人を起用している。ロメウは攻撃のコンダクターで不可欠な存在だったが、このあたりにもウェールズ人指揮官の好みが見て取れる。

 つまり、今シーズンのサウサンプトンは、英国出身のヒューズ監督のカラーが色濃く出ている。ピッチ上で「球際では激しく、縦に速い」サッカーを目指し、人選にも指揮官の志向が反映されているということだ。

 ところが、である。肝心の結果がまったくついてこない。パフォーマンスは乏しく、7節終了時で1勝4敗2分の16位──。特に守備陣は、5節ブライトン戦(2失点)、6節リバプール戦(3失点)、7節ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ戦(2失点)と失点の山を築いている。ヴェステルゴーアもフートも動きは低調で、盤石の守備を見せているとは言い難い。

 そこで、テコ入れを行なったのが8節のチェルシー戦だった。まず、システムを4バックから5バックに変更。ヴェステルゴーアを先発メンバーから外し、吉田を5バックシステムのCB中央で起用したのだ。

吉田麻也

チェルシー戦後、自身のLINEブログに「やっとリーグ戦に出られた。ここからです」と綴った [写真]=Getty Images

 そのチェルシー戦で、吉田は力強い守備を見せた。バイタルエリアにフランス代表FWオリヴィエ・ジルーやベルギー代表MFエデン・アザールが下りてくれば、吉田は前方に飛び出してブロック。敵の攻撃の芽を事前に摘むと、193センチのジルーとの空中戦にも競り勝った。相手のスルーパスに反応し、滑り込みながらクリアした際には、サポーターから大きな拍手が沸き起こった。

 しかし、チームとしての力の差は明らかで、前半20分経過時にはチェルシーが80%のボールポゼッションを記録した。サウサンプトンは5バックシステムを軸に堅守速攻に狙いを定めていたが、前半30分にホイビュルクのボールロストから失点すると、57分、90+3分と立て続けにゴールを許し、0-3で完敗した。

 試合後、吉田は思いの丈を口にした。

「この試合、このチャンスを2カ月待っていた。今日、出番が来るというのは(なんとなく分かった)。長年やっているから読み通りでしたけど、でも、まあもうちょっと……。最低でも0-2で終わりたかった。最後の1点はいらなかった」

「このリーグは、1試合に出るのが本当に大変です。僕だけでなくて、岡ちゃん(=岡崎慎司)もヨッチ(=武藤嘉紀)も苦しんでいるけど……。でも、だからこそ価値があると思っている。何とか巻き返したい」

吉田麻也

コンディションを上げるためにも、コンスタントに試合に出ることが求められる [写真]=Getty Images

 現時点における吉田の課題は、マッチフィットネスだろう。チェルシー戦でも味方の速い弾道のパスをトラップミスし、本人も「ボールもまだまだ足についていない感じがする」と反省点を口にしていた。吉田は、改善していくには試合を重ねることが大事になると説いた。

「なによりも試合に出なければいけない。コンスタントに試合に数多く出ることが大事になると思います。(自分は)いきなり出て、パフォーマンスをパッと出せるタイプではないので。コンスタントに試合を出て、徐々に、徐々に、パフォーマンスが上がってくるタイプだと思う」

 プレミアリーグは、このタイミングで国際マッチウィークに突入した。吉田としては、日本への長距離移動や疲労の蓄積など、チーム再合流後のコンディション調整に難しさを抱えることになるが、それよりもむしろ、日本代表で試合をこなしたほうが自分にとってプラスになると考えているという。来年1月のアジアカップでトロフィーを掲げることを「目標」とし、森保一新体制の日本代表に合流することに「すごくワクワクしている」と前置きした上で、次のように言葉をつないだ。

「もちろん、日本に行って試合に出られる保証はないけど、出られる可能性は広がるだろうし。サウサンプトンに残っても、チームが4連休とかになってしまうので、そうなると厳しくなる。逆に、コンディションが崩れる可能性が高い。代表に帰って、出場する機会を与えられれば、良いパフォーマンスを出せると思う。イングランドに戻ってきても、パフォーマンスは良くなるんじゃないかなと思っています」

 ここまでは、サウサンプトンで出番が限られ苦しんだ。試合を重ねることで試合勘やコンディションを研ぎ澄ましていくタイプなだけに、吉田としてもアピールするには厳しい状況にあった。

 しかし、チームの結果がついてこないことから、ヒューズ監督の考えが少しずつ変わり始めている。ようやく風向きが変わりそうな様相だが、指揮官の志向やチームの不振、吉田自身のコンディション次第で、どちらに転んでいくかはまだ分からない。

 その意味では、複数の要素が複雑に絡み合った状況に置かれているのが、「吉田の現在地」と言えるだろう。プレミアリーグ在籍7シーズン目となった吉田の挑戦は、今後もまだまだ続いていく。

取材・文=田嶋コウスケ

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