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【コラム】若手三銃士を支えた遠藤航、自らが熱望したボランチで示した進化とは

2018.09.12

「勝負したい」と言い続けたボランチでフル出場。以前に比べ、前を向くプレーが増えた [写真]=Getty Images

 水を得た魚のように、パナソニックスタジアム吹田のピッチを動き回った。マイボールになればコスタリカ代表の選手たちの間に何度も顔を出し、パスを引き出しては縦へつける。相手ボールになれば素早いアプローチをかけて、球際の攻防に持ち込む。森保ジャパンの初陣となった11日のキリンチャレンジカップ2018で、遠藤航(シント・トロイデン)がボランチとして存在感を放った。

 ハイライトは1点をリードして迎えた66分。敵陣でセカンドボールを回収し、相手のプレッシャーをかいくぐりながらボールを前へ運び、左側にいた中島翔哉(ポルティモネンセ)へ預ける。そして自らはそのまま縦へスプリントし、ペナルティーエリア内の左側へと侵入していく。

「ああいう形は常に意識しています。最初は僕が縦に引っ張ることで、カットインした翔哉にシュートを打ってもらうイメージがあったんですけど、自分がフリーになったところで本当にタイミング良くパスを出してくれた」

 遠藤に追い越された中島が、一瞬プレーを止めてタメを作る。シュート、ファーサイドへのクロス、そしてパスと選択肢が複数あったから相手も迷う。ゆえに「10番」の一挙手一投足に釘付けとなり、遠藤へのマークが疎かになった。そこへ絶妙のスルーパスが入った。

 遠藤がほぼノールックの状態で左足を振り抜き、マイナス方向へパスを送る。ゴール中央へ入り込んできた南野拓実(ザルツブルク)が、少ないタッチでボールを整えてから強引に左足を一閃する。鮮やかに決まった代表初ゴールに、アシストを決めた遠藤も言葉を弾ませた。

「セカンドボールや奪ったボールをワンタッチで縦に入れるプレーだけではなくて、ボールを持って少しタメを作って展開するプレーも中盤には求められるので、両方の選択肢を持てるようにイメージしています。あのシーンでは拓実のシュートが素晴らしかったし、ゴールに関わることができたのはすごくうれしかったですね」

遠藤航

南野の代表初ゴールを演出。二人で喜びを爆発させた [写真]=Getty Images

 南野、そして中島とは2年前のリオデジャネイロ・オリンピックをともに戦った。グループリーグ敗退を喫した後に、キャプテンを担っていた遠藤は全員へ声をかけた。「A代表で再会しよう」と。

 この時点で南野は、セレッソ大阪からザルツブルクへ移籍して1年半が経過していた。中島も昨夏にFC東京から新天地を求めたポルティモネンセで飛躍を遂げ、シーズン終盤に完全移籍を勝ち取った。遠藤自身はワールドカップ・ロシア大会に臨んだ西野ジャパンに名前を連ねたが、ベルギーとの決勝トーナメント1回戦を含めて、出場機会を得られないまま終わった。

「中途半端に5分、10分と出るよりはまったく出ないで、その悔しさを(次へ)ぶつける。それはそれで自分にとって良かったのかな、と今では思っています」

 そのロシア大会をもって、2008年5月から不動のボランチを担ってきた長谷部誠(フランクフルト)が代表引退を表明した。3つのワールドカップでキャプテンを務めた長谷部の後継者に名乗りをあげるには、まだまだ実績で足元にも及ばない。ただ、以前から熱望してきたボランチのポジションが一つ空いたことで、自然とモチベーションを駆りたてられた。

「そこに誰が食い込んでいくのかというのは、日本代表にとっては大事なポイントになる。もちろん僕自身もそこで出たい、と思う中でベルギーに行った」

 突然のオファーを受けたシント・トロイデンへの移籍が発表されたのは7月末。熟慮を重ねた末に、ボランチとしてプレーできる可能性がより大きい新天地へ挑む決断を下した。

「まだ1カ月ですけど、それでも僕にとっては1カ月続けて中盤でプレーすること自体が初めてなので。その意味ではすごく充実しているし、中盤でやれるという自信も大きくなったからか、視野も少しずつ広がってきている感覚はあります。3バックの最終ラインでプレーしていると、代表期間中にボランチとしての自分の感覚を取り戻す作業というのは、どうしても難しい部分もあったので」

 リオ五輪でもボランチを務めたが、コンビを組んだ大島僚太(川崎フロンターレ)を生かそうと考え過ぎるあまりに、自分本来のプレーに対して真正面から向き合えなかった。

 しかし、今は違う。とにかくシンプルに、ボランチとして自らが持っている良さを前面に押し出す作業に集中できると屈託なく笑う。目標の一つとして掲げてきた海外でプレーしていることも、メンタル面を成長させたのか。心なしか表情に精かんさも漂わせている。

「個人的には今日のようにボールにしっかり関わっていきながら攻撃でチャンスメークしていきつつ、守備でも存在感は見せていくようなイメージでやっていきたい。もちろん、まだまだこれから良くしていかないといけないですけどね」

 中島や南野、代表デビューを飾った20歳の堂安律(フローニンゲン)の若手三銃士が脚光を浴びたコスタリカ戦で、彼らを後方で支える遠藤もまた、未来へとつながるいぶし銀の輝きを放った。

文=藤江直人

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By 藤江直人

スポーツ報道を主戦場とするノンフィクションライター。

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