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U-21日本代表、繰り返された“ミス”からの失点…チームで共通の絵は描けているのか

2018.08.20

ベトナムに敗れ、グループ2位通過となったU-21日本代表 [写真]=Getty Images

 開始3分の失点で試合のベクトルは定まってしまった。そう言っても過言ではないかも知れない。90分を終えて、スコアは0-1から動くことなく、U-21日本代表は敗れた。

 アジア競技大会男子サッカー競技グループステージ、ベトナムとの第3戦は首位通過を懸けての一戦だったが、相手の士気は立ち上がりから非常に高く、プレーも猛々しかった。ベンチから試合を観ていたFW岩崎悠人(京都サンガF.C.)は「ベトナムは技術もあって、気持ち的にもすごく表現してくるし、予想を上回るチームだった」と驚きを語る。

 とはいえ、「あの失点さえなければ」というのが、日本側の偽らざる心境だろう。

 状況としては日本のビルドアップから。後方からの繋ぎを重視する森保式の生命線とも言えるパートに対し、開始からベトナムが仕掛けてきたのはハイプレス。1トップ2シャドーと両ウイングバックの計5枚が前に張り出していく日本に対して同数しか残さず、前からボールを追い詰める。元よりシステムには同じ3-4-2-1の形なので、噛み合いやすくもあった。

先制点を喜ぶベトナム代表 [写真]=Getty Images

 失点は相手のプレスに押されて俗に言う第一プレッシャーラインを越えられない状況の中で、いったんGKにボールを戻したシーンから始まる。負傷の小島亨介に代わって日本ゴールを預かっていたGKオビ・パウエル・オビンナ(流通経済大学)は、相手FWのプレッシャーを受け、これをワンタッチでボランチの神谷優太(愛媛FC)に預けに行った。

 だが、完全に狙われていた。すかさず神谷には通常のマーカーに加えて右サイドの一枚も食らいつく。神谷は自分に元から付いていた選手は認識できているので、そのプレッシャーとは逆方向へボールを止めてのターンを試みるが、そこにはもう一枚。神谷が「自分のトラップミス」と強調したように、タッチが大きくなってしまったことが直接的なボールロストの要因だが、相手が前からハメに来ている状況でボランチにターンを促すようなパスを入れてしまったこと自体がミスだった。

「自分が大きく蹴っておけばよかった」

 オビはそのシーンをこう振り返る。神谷の状況がそれほど良くないことが見えてなかったわけではない。「リターンでいいと思った」という言葉からもそれはわかる。ただ、リターンを受けようとゴールから外れて左方向へステップを踏んだことは別のリスクも生んでいた。奪ったボールをすかさずシュートに行くベトナムの選手に対するポジショニングが間に合わず、逆サイドへと決められてしまった。

[写真]=Getty Images

 このとき、日本の前線にいるのは快足自慢のFW前田大然(松本山雅FC)である。この日もスペースに蹴り込まれた五分五分未満のボールをマイボールに変えるシーンがあり、スペースへのラフなロングボールが大好物の選手だ。そして相手は後ろが薄くなるのを承知でプレスに来ている。ここで注文どおりに細かく繋ぎ続ける必要はやはりなかった。「第2戦ではそれができていたのに」と森保一監督が嘆いたのも無理はない。

 ビルドアップでミスが出て失点するというパターンをこのチームは繰り返している。今年1月のAFC U-23選手権でもそうだったし、先日のトゥーロン国際大会でもそうだった。

 ミスをする選手自体は一貫しているわけではなくてバラバラなので、これを単純に個人の問題と片付けることはできない。もしもチーム内でこれを個人の問題として切り捨てる空気があるのだとしたら、そしてそれゆえに同じミスが繰り返されているのだとしたら、それこそ大問題だ。

 チームとして相手を観てサッカーをできるかどうか。試合の入りで冒す価値のあるリスクだったのかどうか。

 相手がこの狙いならば、この時間帯ならば、このスコアならば、こうすべきという共通の絵を持てているのか。言うまでもなく、これを持っているチームが強いチームであり、持てていないチームが勝てるほど国際大会は甘くない。ここで味わった「痛い思い」(森保監督)は、ミスをした当人が胸に刻むだけでなく、チームとして共有されるべきだ。

取材・文=川端暁彦

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