2018.07.08

【コラム】「結果」にこだわり続けた7年間…酒井高徳、27歳の若さで代表引退を決意

酒井高徳
日本代表からの引退を表明した酒井高徳 [写真]=Getty Images
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

「次の(2022年カタール)ワールドカップを目指すつもりはない。未来と希望のある選手が目指した方がいいと思います」

 2-0とリードしながら3点を奪われ、まさかの逆転負けを喫した2018 FIFAワールドカップ ロシア・決勝トーナメント1回戦のベルギー戦後、酒井高徳(ハンブルガーSV)が衝撃的な発言をした。

 2012年9月のUAE戦で国際Aマッチデビューを果たしてから足掛け7年。高徳の代表キャリアは紆余曲折の連続だった。左右のサイドをこなせるマルチプレーヤーとして大きな期待を寄せられていたが、当時の日本代表には内田篤人(鹿島アントラーズ)と長友佑都(ガラタサライ)という絶対的な地位を築いている両サイドバックがいた。すでに高徳自身もブンデスリーガ1部・シュトゥットガルトの一員になっていたが、当時シャルケに所属した内田とインテルでプレーしていた長友はチャンピオンズリーグ(CL)の常連。アルベルト・ザッケローニ監督からも強固な信頼を勝ち取っていて、酒井宏樹(マルセイユ)を含めて若い世代の出る幕は皆無に等しかった。実際に2人は揃ってブラジルW杯は出番なしに終わった。この時の悔しさを本人は忘れていないという。

酒井高徳

2014年はW杯メンバー入りも出番なし [写真]=Getty Images

 その後の4年間は代表定位置獲得へチャレンジの旅だった。ハビエル・アギーレ監督が率いた2015年のアジアカップは初めて右サイドバックのレギュラーに固定されて挑んだ大会だった。内田が右ひざの負傷で長期離脱を強いられたことで巡ってきたチャンスだったが、メディアからはどうしても3つ年上の先輩と比較される。その度に彼はこう語気を強めた。

「僕は内田篤人ではないし、内田篤人にもなれない。僕が出続けるために必要なのはやっぱり結果。それはずっと前から言い続けていることなんで」と本人は自分が代表にいる意味を示したいと躍起になっていた。本田圭佑(パチューカ)との縦関係も時間を追うごとに良くなり、新たな可能性も感じられたが、日本はUAEに敗れてまさかの8強止まり。アギーレ体制も終焉を迎えてしまう。

 直後にヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる新体制が発足したが、そこからは宏樹が重用されるようになる。左サイドバックには長友が君臨しているため、高徳に出番が訪れるのは2人に何らかのアクシデントが起きた時。2017年3月のアジア最終予選・タイ戦では長谷部誠(フランクフルト)と今野泰幸(ガンバ大阪)のケガによってボランチに起用され、山口蛍(セレッソ大阪)とコンビを組むこともあった。が、その試合では不慣れな2人の関係がギクシャク感をもたらし、チームは苦戦を強いられる。「高徳は本職のボランチじゃないから仕方ない」と山口も庇っていたが、全てにおいて完璧な仕事を求める彼自身は納得できなかっただろう。

 そして念願だったワールドカップの大舞台では、2列目の右サイドというまたも慣れないポジションで使われる羽目になる。それはご存じの通り、6月28日のグループステージ第3戦のポーランド戦。西野朗監督は攻撃力のある相手左サイドバック、マチェイ・リブス(ロコモティフ・モスクワ)封じの秘策として高徳の2列目起用に踏み切ったが、蓋を開けてみるとリブスは欠場。これによって役割が中途半端になってしまった。

 走力の高い高徳はある程度の縦への推進力は見せられたものの、原口元気(ハノーファー)のようなフィニッシュの迫力は出し切れない。右サイドバックの宏樹も高徳との縦関係に慣れていないため、2人の連携もなかなか機能しない。こうしてフラストレーションを抱えながら90分間戦った一戦は0-1の敗戦。サポートメンバーとして帯同した2010年南アフリカ大会から数え、8年がかりでようやくたどり着いた世界舞台でこのような結果を余儀なくされれば、いくら気丈な彼でも心が折れるのはよく理解できる。

「今まで代表でやってきたけど思うような結果を出せなかった」という言葉には、深い深い苦悩と屈辱がにじみ出ていた。ドイツの名門・ハンブルガーSVでキャプテンマークをつけてチームをけん引してきた理想高き男にしてみれば、これ以上の代表でのチャレンジは難しかったのだろう。

酒井高徳

ポーランド戦は本職ではない2列目で出場 [写真]=Getty Images

 ただ、酒井高徳という人間がこれまで代表で示してきた強靭なメンタリティやチームへの献身的な姿勢、仲間を思いやる優しさというプラス要素が消えることはない。自己主張を苦手とする選手が多かった2012年ロンドン五輪世代の中にあって、常に物怖じせず自分の意見をハッキリと口にできる勇敢さと大胆さが代表にもたらしたものも大きかった。だからこそ、本来であればもっと日の丸をつけて戦ってほしいのだが、彼自身が区切りをつけてクラブでのプレーに専念すると決めたのなら、それは仕方のないこと。決断を尊重するしかない。

 この先、高徳に課せられるのは、史上初のブンデスリーガ2部降格を強いられたハンブルガーSVを1年で1部に復帰させること。その大役を担えるのは、過去2シーズンにわたりリーダーとして奮闘したこの男しかいない。そうやって代表から離れても戦い続ける姿を多くの若い世代に見せることで、彼のメンタリティは必ず引き継がれていく。まだ27歳と若いだけに、選手としての大輪の華を咲かせるのはこれからだ。今後のキャリアが高徳の納得いくものになることを切に祈りたい。

文=元川悦子

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