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【コラム】底力を見せた“唯一の国内組”…昌子源、家族からパワーをもらい真価発揮へ

2018.06.24

大きな勝利を挙げたコロンビア戦で唯一の国内組だった昌子源 [写真]=Getty Images

「初戦を数的優位な状況の中で戦い切れたということもあるので、基本的に(セネガル戦の)スタートメンバーはコロンビア戦に(準じる)というのを現時点では考えています」。2018 FIFAワールドカップ ロシアのグループステージ突破がかかる第2戦・セネガル戦(エカテリンブルク)を翌日に控えた23日、日本代表の西野朗監督は公式会見でそう断言した。

 海外メディアもいる状況下での発言だっただけに、必ずしも言葉通りの陣容を送り出すとは限らないものの、指揮官が勝ち点3を手に入れた19日の初戦・コロンビア戦(サランスク)の先発をベースに考えているのは間違いない。歴史的勝利と称賛されたこの一戦で相手エースFWラメダル・ファルカオ(モナコ)を完封した昌子源(鹿島アントラーズ)もおそらくスタメンに名を連ねるだろう。

 その昌子は、初戦のスターティングメンバー11人の中で唯一の国内組だった。

「自分には『Jリーグを背負ってる』とか、そういう全く意識はなかった。あの状況では、俺でもマキ君(槙野智章=浦和レッズ)でもナオ(植田直通=鹿島)でも、誰が出ても『国内組唯一』だったから。年齢的にも最年少で、注目もあったかもしれないけど、相手が10人になってプレッシャー的なものが和らいで一気にやりやすさが出てきましたね」と本人は改めて述懐していた。

 昌子があれだけファルカオを嫌がらせる守備をしたことで、国内でプレーする選手に希望を与えたのは確か。鹿島のチームメートはもちろんのこと、Jリーグでしのぎを削るDF陣も前向きな刺激を受けたに違いない。

「コロンビア戦の仕事は僕1人でやったわけじゃない。たまたま自分が出た試合で、先輩の支えたサポートがあって勝ったわけだから。相手の名前がすごい選手であるほど、自分が話題になるだけ。ホントに1回の出来事に過ぎないんです。正直、危ない場面もあったし、プレー自体は満足いくものではなかった。ただ、あの試合を他のJリーガーが見て『昌子がやれるんやったら僕たちもできる』と思ってくれたら嬉しいですけどね」と本人は自分にダメ出しをしつつも、ロシアの大舞台に立つ自身が日本のDFのレベルアップの一助になればいいと考えている様子だ。

昌子源

ファルカオ(中央)と対峙した昌子源(右)。相手エースに決定的な仕事をさせなかった [写真]=Getty Images

 そんな昌子の一挙手一投足をモルドヴィア・アリーナのスタンドから冷静に見守っていたのが父の昌子力さん(姫路獨協大学監督)だ。JFA公認S級指導者ライセンスを持ち、兵庫県サッカー協会技術委員長の要職を務める父は「相手が1人少なくてあんまり来なかった分、落ち着いてやれたと思う」と一応の合格点を与えた。「ただ、人数が同じ時にどれだけ落ち着いてやれるかだと思う。守備陣は経験豊富な年長の選手が多いけど、やっぱり若い選手がいい仕事をしないといけない」と息子のさらなる奮闘にエールを送っていた。

「(20日のフリータイムに)親父を含めた家族に会いました。サッカーの深い話はしなかったけど、いろんなパワーは注入してもらいました。今回は3試合来てくれるんで、『自慢の息子』か分からんけど、そう思ってもらえるプレーをしたいですね」と昌子自身も気合を入れた。

 その家族、そして日本で応援してくれる多くの人々に成長を示すためにも、セネガル戦ではコロンビア戦以上のパフォーマンスを見せる必要がある。長友佑都(ガラタサライ)が「正直言って、このグループではセネガルが最強だと思っていた」と本音を吐露するように、次戦の相手はフィジカルと組織力を兼ね備えた強豪だ。

 攻撃陣にはマメ・ビラム・ディウフ(ストーク)とエムバイェ・ニアン(トリノ)という185センチ前後の2トップが陣取り、両サイドにはイスマイラ・サール(レンヌ)とサディオ・マネ(リヴァプール)という爆発的な速さを誇るアタッカーが陣取っている。19日のポーランド戦(モスクワ)はその並びだったが、前線が1トップになり、2列目に右からサール、マネ、ケイタ・バルデ・ディアオ(モナコ)という3人が並ぶ形も考えられる。いずれにしても、日本の守備陣には高度な対応力が求められるのだ。

ポーランド戦はエースのマネ(10番)やクリバリ(3番)らがスタメン [写真]=VI Images via Getty Images

 セットプレーの守備にしても、最終ラインを統率するカリドゥ・クリバリ(ナポリ)とサリフ・サネ(ハノーファー→シャルケ)の195センチ前後の2人が上がってくると見られるだけに、182センチの昌子は単純に競り合ったら勝てない。そこは本人も熟知している点だ。

「守備に関してはしっかり体をぶつけないといけないと思うし、弾いた後のセカンドボールにも注意しないといけない。自分のマークを注意しながらラインを上げたりもしたいですね。西野監督になってからもセットプレーだったり、こぼれ球だったりでやられていて、無失点で戦えていないので、次はより注意深くやっていかないといけないと感じてます」と25歳のDFは自分のやるべきことを脳裏に刻み込んでいるようだ。

 ここで昌子がセネガルという高い壁を超えることができれば、日本のセンターバック問題にも光明が見えてくる。吉田麻也(サウサンプトン)も「日本のDFは選手層が薄い。もっと若い選手が出て来なければいけない」と前々から苦言を呈していたが、昌子の台頭によってさらなる若返りが図られるかもしれない。彼にはアフリカンパワーに頭脳と読み、駆け引きで対抗できるところを示し、日本の2連勝の原動力になってほしいものだ。

文=元川悦子

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