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【コラム】明確な結果を残した“攻撃ユニット”…本大会で日本代表の軸となるのは?

2018.06.13

攻撃面で存在感を示した柴崎(左)、香川(中央)、乾(右)[写真]=Getty Images

 日本代表のポジション争いが面白くなってきた。ロシア・ワールドカップ前最後のテストマッチで、日本代表はパラグアイ代表に逆転勝ち。合宿で控え組に回ることが多かった選手たちが次々と結果を残し、西野朗監督は頭を悩ませることとなった。

 スタメン奪取に向けて大きくアピールしたのは、勝利の立役者である乾貴士だ。1点ビハインドで迎えた51分、香川真司のパスを受けて左サイドから中央にドリブルで持ち込むと右足を一閃。「狙いどおりの形だった」という豪快な一発でゴールネットを揺らし、西野ジャパンに待望の初ゴールをもたらした。続く63分には、右サイドを抜け出した武藤嘉紀のグラウンダーのパスに反応。香川が手前で薄くフリックしたボールをダイレクトで蹴り込み、一気に試合をひっくり返した。

 得意のドリブルで攻撃にアクセントを加えながら、トップ下の香川と息の合ったコンビネーションで相手DFを翻弄していく。セレッソ大阪時代のチームメートでもある香川とはやはりプレーのテンポや波長が合うのだろう。試合後には「(2人の連係で)崩せるという手応えがあった」と胸を張った。先発したスイス戦で結果を残せなかった宇佐美貴史に対し、乾がこの試合で与えたインパクトは大きい。

 乾のゴールをお膳立てした香川も連係面での手応えを口にする。「乾とは長年一緒にやっているので、プレースタイルを知っている。(2人の連係が)チームの武器になることを証明できたし、武器を持てることはチームとして非常に大事なこと」

 何よりも、自らにゴールが生まれたのは大きい。日本代表でのゴールは昨年10月のハイチ戦以来、約8カ月ぶり。「その前に数多くのチャンスを外していたので、最後に決めて得点のイメージを持てたのは自信になる」と本人は安堵の表情を見せたが、この得点がメンタル面に好影響を与えるのは言うまでもない。スイス戦でノーインパクトだった本田圭佑と序列が入れ替わった可能性もある。

 香川と好連係を見せたのは乾だけではなかった。ボランチの一角を担った柴崎岳もその一人だ。試合後には「トップ下が真司さんだったので、攻撃のスイッチを入れるパスをより意識して、しっかり預けようと。反転が得意で、多くのアイデアを持っている選手なのでやりやすかった」と、背番号10のトップ下起用を歓迎するコメントを残した。

 柴崎自身も司令塔として長短のパスを巧みに使い分け、攻撃を活性化させた。「リスクと隣り合わせではありますけど、縦パスを通せるか、通せないか、で展開は大きく変わる」。独特な緊張感を伴う本大会でも、その冷静な状況判断と強心臓ぶりは相手にとって脅威となる。

 柴崎はスイス戦に続いてセットプレーのキッカーとしても存在感を示した。40分にクロスバーをかすめる際どい直接FKを放つと、77分には再びFKから相手のオウンゴールを誘発。「最近は良いイメージで蹴れている。もう少し磨きをかけたい」と本人が話すように感触も悪くない。これまでボランチはガーナ戦が大島僚太と山口蛍、スイス戦は長谷部誠と大島が先発起用されてきたが、柴崎を軸とした組み合わせを再考すべきかもしれない。

 西野体制下で未勝利、無得点のまま本番を迎えるという最悪の事態は免れた。スイス戦から先発10人を入れ替えたことが結果としてポジション争いの活性化を促し、ようやく手にした勝利は選手たちの自信回復にもつながった。本大会のレベルを考えると決して手放しでは喜べないが、この1勝がチームに漂っていた閉塞感を打ち破ったことだけは確かだ。

取材・文=高尾太恵子

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