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【コラム】シュート0で途中交代…それでも本田圭佑が日本代表に必要な理由

2018.03.28

目に見える結果は出なかったが、存在感を示した本田圭佑 [写真]=Soccrates/Getty Images

「ビルドアップの段階では起点にならないといけないし、最後のところで仕留めるプレーを最低数回は出していかないといけない。守備、ビルドアップ、仕留めるところ、全部やらないと。そしてウクライナ戦はとにかく結果にこだわる。最低引き分けやし、ハッキリ言って勝たないといけないと思っている」

 27日のウクライナ戦で昨年9月の最終予選・サウジアラビア戦(ジェッダ)以来のスタメンに抜擢された本田圭佑(パチューカ)は強い決意を胸に秘め、スタンダール・リエージュの本拠地、スタッド・モーリス・デュフランのピッチに立った。

 試合の入りは悪くなかった。柴崎岳(ヘタフェ)が奪ったボールを右サイドで受け、ゴール前に飛び込んできた原口元気(デュッセルドルフ)に送るという開始6分のチャンスメークから、先発復帰戦は始まった。ボールを受けるとタメを作りながら攻撃を組み立て、守備面でもイェウヘン・コノプリャンカ(シャルケ)のタテの突破に翻弄される酒井高徳(ハンブルガーSV)を献身的にサポートしてみせる。サイドアタッカーとしての運動量と動きのキレを出すため肉体改造を行い、体重を3キロ絞って今回の代表戦に臨んできた本田の一挙手一投足は、確かに半年前とは見違えるものがあった。

 ただ、自身がゴールに迫る回数は少なかった。チャンスらしいチャンスは56分、長友佑都(ガラタサライ)が左サイド高い位置から鋭いループパスをファーサイドに出した場面くらい。本田と杉本健勇(セレッソ大阪)が揃ってペナルティエリア内右隅で待ち構えていたが、惜しくもGKにセーブされ、フィニッシュに持ち込むことはできなかった。すぐ後の64分に久保裕也(ヘント)との交代を命じられたのも、シュートゼロという屈辱的な結果に終わったからだろう。

本田圭佑

指揮官の目に、本田のプレーはどう映ったのか [写真]=Getty Images

「向こうが後半落ちるやり方をしていて、(日本の)最初の布石が後半生きてくる場面での交代だったのは悔しいですよね。それは監督に『もう少し見てみたい』と思わせられなかった自分に非があることは分かっています」と背番号4が不完全燃焼感を吐露した通り、苦境に瀕する日本を勝利へと導く救世主にはなれなかった。

 結局、日本はこの試合を1-2で落とし、23日のマリ戦に続いて未勝利という結果を余儀なくされた。本田自身も強烈なインパクトを残したとは言い切れず、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も彼の序列の変化を問われて「非常にデリケートな判断を下していかないといけない」と言葉を濁した。かつてエースに君臨した男をチームに残すか否か。それは重大な問題だ。指揮官の信条であるタテに速いサッカーばかりを追い求めず、ボールを持って状況を落ち着かせ、メリハリをつけようとした時間帯も、31歳のベテランアタッカーを抜擢することへの危惧として少なからずあるのだろう。

 しかしながら、ハリルホジッチ監督と微妙に異なる考えを持つ選手もいる。その筆頭が長友だ。「裏を狙うだけじゃなくて、圭佑みたいに下りてきてタメを作ったり、ファウルをもらったり、時間を作ったりとすることは助かるプレー。ディフェンスラインから見ていても本当に助かった」と彼は本田効果を如実に感じたという。

「(23日の)マリ戦でも圭佑が入ってリズムが出てきたし、タメを作れるからサイドバックも上がれて、中盤もディフェンスラインも押し上げられる。地味で見えないかもしれないけど、チームに与える効果は絶大だと。別に本田圭佑だからとか、ずっと戦ってきた戦友だから言っているわけじゃなくて、チームが変わった部分があったと思うんです」と長友は改めて背番号4の存在価値に太鼓判を押した。

本田圭佑

強豪相手にもボールをキープできる本田の存在はチームにとって貴重だ [写真]=Getty Images

 そう感じたのは彼だけではない。負傷で大事を取った絶対的1トップ・大迫勇也(ケルン)も「本田さんが入ることによってサイドで起点が作れた」と前向きにコメントした。何度も前線でコンビを組んでいる彼には本田がいることのプラス効果を実感しているはず。だからこそ、そんな発言が口をついて出たのだろう。

 実際、サイドで起点やタメを作る仕事というのは、日本代表が勝利を目指すうえでやはり必要だ。この日後半途中から出てきた小林悠(川崎フロンターレ)が「監督からは『背後を狙え』と言われたし、そういう気持ちでピッチに入りましたけど、受け手と出してのタイミングが合わなければ難しい」と振り返ったように、タテに速いハリル流の攻めばかりで得点を奪えるほど、世界最高峰の戦いは容易ではないのだ。

 実際、前へ前へ行き過ぎると、ボールを失ってカウンターを食らったり、相手と走り合いになってエネルギーを消耗することにもつながりかねない。それは、ウクライナ戦で一矢報いるゴールを挙げた槙野智章(浦和レッズ)も感じていること。「杉本選手も間違いなく守備に力を注ぎこんで途中でガス欠してしまった。彼の仕事は守備じゃなくて攻撃。それを踏まえて、自分たちがボールを持つ時間をもう少し増やしていかないといけない」と彼も語気を強めていた。チーム内にこうした意見が広がっているのは、間違いなく本田の追い風になるはずだ。

「今の日本はより個をさらけ出すようなプレースタイルになっているけど、それを消して、うまくチームとしてカバーするには、試合を支配することが大事だと僕は思っています」と彼自身も言うように、単なる個を前面に押し出す戦い方だけでは、日本のロシアでの成功はあり得ない。

 昨年11月のブラジル(リール)・ベルギー(ブルージュ)2連戦と今回のマリ・ウクライナ2連戦で未勝利という厳しい現実を踏まえて、ハリルホジッチ監督は日本の戦い方と本田の必要性をどう判断するのか。今後のパチューカでの彼自身のパフォーマンスによる部分も少なからずあるだろうが、多くの代表選手たちの意見を無視するような最終結論だけは出さないでもらいたい。

文=元川悦子

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