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【コラム】マリに苦戦で日本代表に募る危機感…「潤滑油」槙野智章に求められる役割とは

2018.03.26

マリ戦に先発した槙野智章 [写真]=Getty Images

 仮想・セネガルと位置付けられた23日のマリ戦で、この日初キャップを飾った宇賀神友弥(浦和レッズ)が前半終了間際にまさかのPKを献上。このビハインドをなかなか跳ね返せないまま、日本は敗色濃厚の状況に追い込まれてしまう。後半アディショナルタイムにヴァイッド・ハリルホジッチ監督期待の中島翔哉(ポルティモネンセ)が同点弾を叩き出したものの、誰もが危機感を抱かざるを得ない内容だった。「今、修正しないと手遅れになって終わる」と長友佑都(ガラタサライ)もあえて苦言を呈していた。

「試合が終わって長友選手と長く話しましたけど、2010年の南アフリカの時のような戦い方をするのか、自分たちが攻撃を掲げた2014年のブラジルみたいな戦い方をするのか、その整理をしないと。みんなが共通意識を持ってやらないとバランスも考え方もバラバラになってしまう危険性がある」と吉田麻也(サウサンプトン)に代わって最終ラインを統率する槙野智章(浦和)も神妙な面持ちで話した。

 今の日本代表は指揮官の求める戦い方に縛られるあまり、選手個々の判断力が著しく低下している印象がある。山口蛍(セレッソ大阪)も「みんなが疑問を持ちながら戦っていた」と苦渋の表情を浮かべていた。そんな時こそ、チームの一体感とまとまりがより重要になってくる。槙野はワールドカップ経験こそないが、今年5月に31歳になるベテラン。周囲への影響力も大きい。今こそ彼のような人間が率先してチームの支えていく必要がある。

「相変わらず槙野君がムードメーカーだなと感じた」と昨年6月のオマーン戦以来の代表合流となった宇佐美貴史(デュッセルドルフ)が笑みをのぞかせた通り、確かに彼がもたらす明るさと活力は貴重だ。

 重苦しさが残っていたマリ戦翌日。練習前に行われたブリュッセル日本人学校の生徒との記念撮影時に槙野は原口元気(デュッセルドルフ)と雰囲気を盛り上げた。サブ組がハードメニューに取り組んでいる間にも、大迫勇也(ケルン)や山口らと積極的にコミュニケーションを取っていた。こうした気配りを見せられる選手が若い世代にはなかなか見当たらない。だからこそ、ハリルホジッチ監督も彼を重用するのだろう。

「今のチームがバラバラになっているとは思いませんし、他の世代の選手からも意見はもらっている。うまくいかない試合がある中でもしっかり前を向いてまとまってる兆しはある。僕も経験ない選手を支えてあげるような雰囲気を出していくことが大事だと思ってます」と、槙野はサバイバル色の強い今回のベルギー遠征においても「潤滑油」になることを第一に心がけている。

 それも吉田という守備の大黒柱不在を誰よりも深刻に捉えているから。これまでのハリルジャパンはアジア最終予選全試合出場の長身DFなしには戦えなかったが、吉田不在の状況はこの先も起こり得る。そこで失点を繰り返したら本当にロシアで惨敗を喫してしまう。最悪のシナリオを回避するためにも、27日のウクライナ戦は失点をゼロに抑え、守備陣の自信回復を図らなければならない。それが槙野に課せられた重要命題と言っていい。

槙野智章

マリ戦は昌子とともに最終ラインを形成した [写真]=Getty Images

「マリ戦では一番失点してはいけない時間帯で、一番犯してはいけない場所でファウルを冒してしまった。ディフェンスとしてはゼロで終えたかったのが本音です。結果的にはシュートを2~3本ほどしか打たれていないので、DFとしては物足りなさもあった」と本人はマリ戦で自らの役割を完全に遂行し切れなかった悔しさをにじませる。それを繰り返したくないなら、次は一つのミスも犯してはならない。PK献上は宇賀神だったが、開始早々の時間帯には相手のスピード対応で後手を踏んだ場面も見て取れた。今季Jリーグでも槙野は似たようなミスが目立つ。まずは1対1の対応を徹底させ、守備陣に綻びを生じさせないように努めていくべきだ。

 マリ戦でハリルホジッチ監督が後半に入って突然、ロングボールを蹴るように指示を出したことでチーム全体が混乱に陥ったが、ウクライナ戦でも同様のことが起きるかもしれない。気分や感情がコロコロ変わる指揮官のことだから、意外な要求を突き付けてくる可能性もある。そこでピッチ上にいる仲間を落ち着かせ、臨機応変な対応ができるように仕向けていくことも、彼に課せられた仕事。キャプテン・長谷部誠(フランクフルト)がピッチにいない状況であれば、なおさらだ。

 もう一つ、槙野に求められるのがリスタートからの得点。11月のブラジル戦でも自らのヘッドで一矢報いているが、前線が迫力を出し切れない今はセットプレーの攻めが一段と重要になる。彼がブラジル戦の再現を見せてくれれば、チームがどれだけ楽になるか分からない。キッカーも毎回のように変わるだけに難しさはあるが、今回は名手・柴崎岳が先発濃厚で確実にチャンスは広がる。そこを仕留めることができれば、槙野の存在価値はもっと上がる。

 欧州組を含めたチームでは昨年10月のニュージーランド戦から未勝利の続く日本にとって、ウクライナ戦の戦いぶりは今後の動向を大きく左右する。「危機感があることは非常にポジティブだと捉えています」と語気を強める男がピンチをチャンスに変えられるのか。背番号20のピッチ内外での一挙手一投足にさらなる期待を寄せたい。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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