代表初先発で結果を残した前田大然 [写真]=川端暁彦
「結果で判断されるのは別に嫌いじゃない。FWは分かりやすくていい」
パラグアイで開催中のスポーツ・フォー・トゥモロー・プログラム南米・日本U-21サッカー交流大会の第2戦を前にして、FW前田大然(松本山雅FC)はそう言ってのけた。元より各年代を通じて初めての代表入りを掴み取った理由も、昨季の水戸ホーリーホックで「結果」を残したからである。前田の中にはそういう認識があるし、実際それは事実だろう。
チリとの第1戦では途中出場で無得点。「チャンスはあったのに決められなかった」のだから、代表デビューはある意味ホロ苦いものではあった。ただ同時に「やれるな」という手応えもあったと言う。「昔から知っている選手となると、自分は大阪出身なので、小学校時代に知り合った初瀬亮くらい」という状態での選出ではあったものの、「自分は分かりやすいので」と笑って言うように、自慢のスピードを活かしてどん欲にゴールへ迫るプレースタイルを他の選手が理解するのに大して時間は要らなかった。ベネズエラとの第2戦を前にしても、MF藤谷壮(ヴィッセル神戸)は、前田に「狙うからな」とクロスのイメージを伝えてきていた。
初めて代表のユニフォームを着て先発のピッチに立った前田は、開始早々の2分にドリブルから強烈な左足シュートでゴールを狙う。相手GKに阻まれてしまったものの、むき出しの意欲と野心がみなぎるプレーぶりは昨季の好調時を彷彿とさせるもの。直後の3分にCKから先制点が生まれると、余計に期待感は高まった。そして迎えた15分である。中盤に落ちてボールを触ってから前へと動き出す。1トップのFWとしては一つ理想的なリズムである。この流れから右サイドで持った藤谷は予告通りGKと最終ラインの間に絶妙のクロスを送り込んだ。
「相手DFも触られへんで、こっちも触るので精一杯みたいな感じでした。体を投げ出していった。泥臭く点を取るのは得意な形なので」(前田)
ゴツいボディのスキンヘッドが弾丸のようにニョキッと抜け出してきて頭でボールを押し込む。見事な一発がゴールネットを揺らし、記念すべき代表初ゴールが生まれた。
前半終了間際に凡ミスからボールロストして失点を誘発してしまったのは「反省するしかない」大失敗だったが、もう1回前田は見せる。2-3とビハインドを負って迎えた70分だった。MF三好康児(北海道コンサドーレ札幌)のスルーパスからスピードという「分かりやすい」個性を活かして裏へと抜け出す。
「康児くんからいいボール来るだろうなというのは分かっていた。とりあえず走ればいいかなという感じで走った」(前田)
ペナルティエリア内へ侵入してきた男をたまらず倒して、これがPKの判定に。当然、威風堂々自ら蹴ることになった――のかと思ったが、ちょっと事情は違った。
「いやあ、実は両方の足に来ていて、あんまり蹴りたくなかったんですよ、本当は(笑)。まあでも、せっかくなんで蹴らせてもらいました。足は動いてなかったですけれど、入ってよかったです」(前田)
意外なソフトタッチでのキックは「力が入らなくなっていたので、逆にそれが良かった」という一発だった。
前田にとっての初めての代表先発試合は「2得点“1アシスト”ですね」という結果に終わった。まだまだ課題も多いものの、魅力たっぷりのストライカーぶりがアピールになったのも確かだろう。
前日、「結果を出さないと生き残れない世界だと分かっている」と語っていた前田はこうも言っていた。
「FWはやっぱり結果を出すかどうか。それしかないから」
その意味で言えば、「代表の前田大然」がパラグアイの地で大事な一歩を刻んだのは間違いなさそうだ。
文=川端暁彦
By 川端暁彦