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40年もの支援が続く「キリンチャレンジカップ」…知られざる大会誕生秘話|日本代表のマーケティング

2018.03.24

40年にわたる日本代表とキリンの関係に迫る

 サッカー日本代表の強化と言えば「キリンチャレンジカップ」の名前を思い浮かべないわけにはいかない。3月27日には「キリンチャレンジカップ2018 in EUROPE」でウクライナ代表と対戦。初の海外開催となったベルギーでの試合を経て、5月30日にはガーナ代表との「キリンチャレンジカップ2018」が開催される。

「キリンチャレンジカップ」を協賛するキリンビール株式会社とキリンビバレッジ株式会社、そして同グループのキリン株式会社は、日本代表を財政面で支援し続けてきた企業の草分け的存在だ。そのサポート歴は今年で40周年を迎える。公益財団法人日本サッカー協会でマーケティング部部長を務める野上宏志(のがみ・ひろし)さんは「私たち日本サッカー協会と日本代表は、キリンさんとともに成長してきたと言っていいでしょう」と話す。

構成=菅野浩二
写真=野口岳彦
協力=公益財団法人日本サッカー協会、一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル

■「キリンチャレンジカップ」は強豪国と対戦する貴重な機会

日本代表はキリンチャレンジカップを通じて多くの強国と対戦する機会を得てきた[写真]=Getty Images


 3月27日、ベルギーで実施されるサッカー日本代表のウクライナ戦は「キリンチャレンジカップ2018 in EUROPE」と銘打たれています。ロシア・ワールドカップを目前にした5月30日にはガーナ代表を迎え、日産スタジアムで「キリンチャレンジカップ2018」が開催されます。

「キリンチャレンジカップ」という名称は、サッカーファンに限らず、誰しも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。もともとは「ジャパンカップ」という名前で、日本代表の強化を目的に、今から40年前の1978年にスタートした大会です。

「ジャパンカップ・キリンワールドサッカー」「キリンカップサッカー」「キリンチャレンジ」「キリンビバレッジ・サッカー」「キリンチャレンジカップ」と改称するなかで、日本代表はエリック・カントナを擁するフランス代表や、ドラガン・ストイコビッチを中心とするユーゴスラビア代表、あるいはジャンルイージ・ブッフォンがゴールを守るイタリア代表など、多くの強豪国と対戦する機会に恵まれてきました。2010年にはリオネル・メッシを前線に据えるアルゼンチン代表に1-0で勝利するという経験も積んでいます。相手GKが弾いたボールを岡崎慎司が蹴り込んだゴールが決勝点となりました。

「キリンチャレンジカップ」という名前が示すとおり、40年の歴史を誇るこの大会は、キリンビール株式会社さまとキリンビバレッジ株式会社さまのご協力のもと、実施され続けています。

 A代表に限らず、U-23日本代表、日本女子代表、アンダーカテゴリーやフットサル・ビーチまで幅広い代表活動に対して物心両面で御支援くださるキリングループさまの存在は、日本サッカーの歴史と成長において文字どおり不可欠なものと言っても過言ではないでしょう。キリンビール株式会社さまとキリンビバレッジ株式会社さまに加え、キリン株式会社さまの3社さまがオフィシャルパートナーとして日本代表を支えてくださっています。

■キリングループは1978年から40年も日本代表を支援

 現在こそ、公益財団法人日本サッカー協会は年間で200億円超の経常収益を出せるようになりましたが、かつては違いました。Jリーグの開幕よりもっと前、1970年代の台所事情は厳しいものでした。有り体に言えば、日本サッカー協会は資金繰りに苦しむ時代が続いていたと聞いています。

 どこか運営資金をサポートしてくれる企業はないだろうか。当時、上層部の人間が東京都渋谷区の岸記念体育会館内にあった日本サッカー協会の事務所で可能性を探っていると、JR山手線を挟んで向かい側にあるキリンビール本社の看板が不意に視界に入った──そこで「キリンさんに相談しよう」という案が浮かび、当時、日本サッカー協会の専務理事を務めていた故・長沼健さんたちが直談判すると、ほどなくキリンさんが「キリンチャレンジカップ」の原型となる「ジャパンカップ」の支援に応じてくれたという逸話が残っています。

 この歴史にはもう一つ知られざるエピソードがあります。当時、日本サッカー協会の審判業務を手伝っていた方がキリンビールに勤めていました。私たちの先輩はキリンビールさんがビール市場の6割以上のシェアを占めていることに着目し、この方に橋渡し役をお願いしたようです。

 1978年、人と人とのつながりから生まれた私たちとキリンさんの関係は今年で40周年を迎えます。一つのスポーツを40年にもわたってサポートする例は世界中を見渡してもめずらしいもので、私たち日本サッカー協会と日本代表は、キリンさんに支えられて成長してきたと言っていいでしょう。

■多くのパートナーと長期的な関係を築くことが重要

[写真]=Getty Images


 1978年は日本代表が国際経験を積み始めると同時に、日本サッカー協会が成長戦略の一つとしてサッカーというエンターテインメントビジネスの運営に本格的に乗り出した年と言えます。この時、「ロングスパンで支援を続けよう」と感じてくださったキリンさんの決断が大きな決め手となったことは間違いありません。

 40年にわたって協賛し続けていただいたキリンビール株式会社、キリンビバレッジ株式会社、キリン株式会社の3社は、長い時間で培ってきた信頼関係をもとに2015年4月より「オフィシャルスポンサー」から「オフィシャルパートナー」という位置づけに変わっています。パートナーといういわば対等な関係で、ともに成長していこうという共通の思いが両者の間には存在しています。

 現在、日本サッカー協会を支えているのは、オフィシャルパートナーだけに限りません。さまざまな企業さまが、オフィシャルサプライヤー、サポーティングカンパニー、アパレルプロバイダー、プロバイダーといった立場から日本代表の活動や成長を後押ししてくださっています。

 私が所属し、現在30人ほどの職員が働くマーケティング部を中心に、日本サッカー協会は、日本代表の持つ価値や注目度をより高め、各社さまの期待に応えていく必要があります。日本代表にかかわることでブランドの魅力が増し、ファンも増えたと感じていただく。そしてキリンさんと同じように、多くのパートナーさまから長期間で力添えを受けることが、日本代表、ひいては日本サッカーのさらなる発展につながるはずです。


\教えてくれた人/
野上宏志(のがみ・ひろし)さん
公益財団法人日本サッカー協会マーケティング部部長。慶應義塾大学商学部卒業。東京大学大学院修了後、2002年ワールドカップ日本組織委員会事務局のスタッフとして大会運営に携わる。02年に公益財団法人日本サッカー協会に入局。事業部や代表チーム部などを経験後、2022年ワールドカップ日本招致委員会に参画。英国のバース大学で経営学修士号を取得している。

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