2018.03.23

2018年度の予算は過去最大、日本代表の価値はいくらなのか|日本代表のマーケティング

取材に応じてくれたJFAマーケティング部部長の野上宏志さん
サッカー総合情報サイト

 2018年6月、我らがサッカー日本代表が6度目のワールドカップに挑む。前哨戦として3月23日にはマリ代表と、27日にはウクライナ代表との試合を実施。5月30日にはガーナ代表との一戦をこなし、更に6月に2試合の強化試合をヨーロッパで行い最終目的地であるロシアへと向かう。

 日本代表の活動や戦いは選手たちのみで行われているわけではない。さまざまな企業で働く社員たちが日々汗水を流して生み出した資金があってこそ、選手たちは充実した環境や条件で目の前の試合に臨める。公益財団法人日本サッカー協会でマーケティング部部長を務める野上宏志(のがみ・ひろし)さんが「ブランディング」の重要性を教えてくれた。

構成=菅野浩二
写真=野口岳彦
協力=公益財団法人日本サッカー協会、一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル

■日本サッカー協会の年間収益のうち約70%は日本代表関連

 日本代表は文字どおり、日本サッカー界の大黒柱です。トップクラスの選手たちが集結するという意味だけではありません。日本サッカー界におけるマーケティング部分においても、大きな屋台骨となっています。

 創立から95年目となった2016年度以降、おかげさまで私たち公益財団法人日本サッカー協会の経常収益は200億円を超える年度もあります。私たちは公益財団法人ですので、狭い範囲で収益を使うわけではありません。社会全般の利益になるための公益的なサッカーへの投資を常に念頭に置いています。

 平たく言えば、日本サッカーの発展のために約200億円の収益を費やす形で、ロシアでワールドカップが開催される2018年度は約236億円という支出を予算に計上しています。収益も支出も過去最大の金額ですが、これはW杯でベスト8に進出することを想定しているためです。ベスト8に進めば、賞金などを含め約19億円の収入増となります。

 日本サッカー協会の年間収益において、日本代表は大きな役割を果たしています。一年の経常収益のうち約70%が日本代表関連による収入となっています。つまり、約235億円の収入を想定している2018年度であれば約165億円前後の財源は日本代表がもたらしているという構造です。もっとも、この165億円前後のすべてが日本代表の活動に直接的に費やされるわけではありません。支出予算の振り分けは日本サッカー協会全体の取り組みを見たうえで適切に予算配分されます。

■5つのカテゴリーの企業が日本代表チームを支援

 日本サッカー協会の経常収益における約60%、およそ199億円の責任を負っているのが私の所属しているマーケティング部です。現在30人ほどの職員が働く当部には、大きくわけて4つのグループが存在しています。

 マーケティング部において多くの人材を配置しているのが、日本代表のパートナーシップやスポンサーシップの業務を手がけるグループです。日本サッカー協会の経常収益において、多くがパートナー企業さまのご支援によるものであるためです。私たちはより安定的な財源を確保すべく、日本代表のブランド価値を高めたり、新たにパートナーとなっていただける企業さまと向き合ったりしています。最大10社で構成されるサポーティングカンパニーは今のところ8枠となっており、マーケティングパートナーである電通と一緒に現在は新規開拓にも力を注いでいます。

画像はJFA公式ホームページより

 日本代表のパートナーに関して言うと、一業種一社というポリシーを採用し、現在は5つのカテゴリーを用意しています。オフィシャルパートナーとオフィシャルサプライヤー、サポーティングカンパニー、そしてチームが移動時に着用するスーツ等をご提供いただくアパレルプロバイダー及びチームが活動時に必要とする商品やサービスをご提供いただくプロバイダーという分類で、契約内容はカテゴリーによって異なります。

[写真]=Getty Images

 決して少なくはない費用を投資してくださったり、自社の商品やサービスを快く提供してくださったりするパートナー各社さまの存在は本当に心強いものです。ファンの皆さんと同様、日本サッカーの未来に期待してくださっている企業さまも日本代表をしっかりと支えているという事実を広く知っていただくことも私たちの使命だと考えています。

 当然、私たちマーケティング部を窓口に、日本サッカー協会は各企業さまの思いに応えるだけの価値を提供する必要があります。皆さんがよく目にするもので言えば、代表戦のピッチの看板や練習着やビブスに入ったロゴが代表例でしょう。日本代表を支えてくださる企業さまにはスタジアムの大型ビジョンでCM映像を流せたり、代表監督・選手の肖像を各社のマーケティングに使用できたりといった権利もお渡ししています。

■日本代表には「人の心を動かす力」がある

昨年8月の豪州戦で日本代表が6度目のW杯出場権を獲得。スタジアム、日本中が熱狂した[写真]=Getty Images


 もちろん、各社のロゴの露出やプロモーションへの協力だけで対価をお返しできているとは考えていません。

 日本代表に手を差し伸べる目的は企業さまによって異なります。自社の認知度を上げたいという会社もあれば、インナーブランディングを通じて社員の一体感を強めたい、あるいは日本代表を通じて消費者にストーリーを語りたい、という会社もあります。私たちとしては、日本代表チームと日本代表のサッカーを通して、各企業のブランド価値向上に貢献できる施策は取り組んでしかるべきものと考えています。

「ブランディング」はあらゆるビジネスに必要なマーケティング戦略です。日本代表も例外ではありませんが、ブランド価値を高めることがめぐりめぐって収益増につながっていきます。「ブランディング」とは社会全般に共通イメージを浸透させ、特別感や信頼性を高め、「ファン」を増やすことに他なりません。

 日本代表ブランドは非常にユニークでして、「グローバル」「ライブ」「ソーシャル」という側面を備えています。「ファン」という存在はある種の絆のようなものを日本代表に持っていただいていて、いまはテクノロジーがスポーツとヒトをつなげる役割を劇的に進化させて絆を深めることに寄与しています。私たちマーケティング部は、各社さまのブランド戦略や要望を踏まえて、ソーシャルプラットフォーム等自社メディアの活用を担うコミュニケーション部など他部署とも連携しながら、日本代表の存在や価値をどう有効活用すれば日本代表のファンベースがそれぞれのパートナーさまのファン拡大につながるかをご提案しています。

 日本代表チームに共感していただけるのは、選手が様々なものを犠牲にしてより高みを目指して懸命に戦うこと、だと考えています。そういう日本代表がより強くなり、より人気を得ることもマーケティングの推進力となりえます。トップクラスの選手たちが集結したチームが勇敢に勝利をめざして世界の舞台でプレーする姿には、間違いなく人の心を動かす力があります。

「人の心を動かす力」は企業の成長にとっても不可欠な要素です。「人の心を動かす力」が消費を喚起したり、市場を広げたりする魅力と言い換えることができるでしょう。懸命で強く、世界に向かって挑戦している日本代表を支援している──パートナー各社さまにそう誇っていただくのが私たちの理想の一つでもあります。日本代表の挑戦する姿や成長が各ブランドへの関心を高め、短期的には商品購入やサービス利用の促進につながり、中長期的には信頼感と好感度を向上させることになると私たちは考えています。


\教えてくれた人/
野上宏志(のがみ・ひろし)さん
公益財団法人日本サッカー協会マーケティング部部長。慶應義塾大学商学部卒業。東京大学大学院修了後、2002年ワールドカップ日本組織委員会事務局のスタッフとして大会運営に携わる。02年に公益財団法人日本サッカー協会に入局。事業部や代表チーム部などを経験後、2022年ワールドカップ日本招致委員会に参画。英国のバース大学で経営学修士号を取得している。

Jリーグ順位表

サンフレッチェ広島
41pt
FC東京
34pt
川崎F
33pt
Jリーグ順位をもっと見る
松本
44pt
町田
43pt
横浜FC
42pt
Jリーグ順位をもっと見る
琉球
35pt
沼津
32pt
鹿児島
30pt
Jリーグ順位をもっと見る