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【コラム】右ひざ回復で連戦も可能に…キャプテン長谷部誠、改めて存在価値の証明を

2018.03.19

日本代表欧州遠征メンバーに選出された長谷部誠 [写真]=Getty Images

 ネイマール(パリ・サンジェルマン)、マルセロ(レアル・マドリード)、ガブリエル・ジェズス(マンチェスター・C)に前半のうちから3点を奪われ、1-3と惨敗した2017年11月のブラジル戦(リール)から4カ月。日本代表のピッチにキャプテン・長谷部誠フランクフルト)が満を持して戻ってくる。

 当時は昨年3月に手術した右ひざの状態が不安定で連戦出場が叶わず、11月の代表2連戦は初戦・ブラジル戦のみにとどまったが、「もう(クラブで)連戦もこなしていますし、足は全然問題ないですね」と本人も断言。今回のマリ・ウクライナ2連戦(リエージュ)はフル稼働が期待されるところだ。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が「日本代表は少しケガ人が多い」としばしば嘆いている通り、この2連戦に向けても守備の要・吉田麻也(サウサンプトン)が不参加。復帰を目指していた香川真司(ドルトムント)や清武弘嗣(セレッソ大阪)も長期離脱を余儀なくされている状態だ。ボランチに関しても2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選終盤に定位置をつかんだ井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)が新天地でコンスタントな出場機会を得られていないために選外となっている。選手層の薄さという事実はあるだけに、これをどう克服していくか。そこは今回の重要テーマになるだろう。

「代表って場所は毎回、本当に誰が入るか分からないし、選ばれた選手はそこでしっかりそれぞれの立場や役割を考えてやっていくことが大事。ケガ人に代わって入る選手にとってはチャンスだと思うし、本大会でもケガは起こり得る。1人2人がケガをして日本代表っていうチームがダメになってしまうようではよくないし、成り立たないと思います」と長谷部はメンバー26人全員に自覚を促した。

 今回は昨年12月の東アジアカップ(E-1選手権)で初キャップを飾った三竿健斗(鹿島アントラーズ)、A代表初招集の中島翔哉(ポルティモネンセ)のような経験値の少ない面々もいるだけに、彼らをけん引していく人間が必要だ。加えて、冒頭のブラジル戦を含む11月欧州遠征の連敗、E-1選手権惨敗と、最終予選突破後の最近の日本代表は暗雲が立ち込める状態に陥っている。そんな苦境脱出のためにも、この男のかじ取りに託される部分は大きい。今回、改めて長谷部の存在価値がクローズアップされそうだ。

長谷部誠

ブラジル戦は3失点完敗だった [写真]=Getty Images

 こうした状況の中、彼にはフランクフルトでセンターバックとボランチを臨機応変にこなしている経験値を最大限生かしてほしいところ。直近のマインツ戦でも、スタートは3バックの中央だったが、早々と2点を失い劣勢に立たされた相手が3バックから4バックへと布陣変更してくると、ニコ・コヴァチ監督が4バックへとスイッチ。長谷部は40分からボランチに上がってジョナサン・デ・グズマンとコンビを組んだ。そこで確実に攻守のバランスを取り、長短のパスで攻撃を演出する。フランクフルトが前半の段階で3-0とリードを広げたことも追い風となり、背番号20の一挙手一投足は90分間を通して終始安定していた。

「試合の中でディフェンスにも中盤にも入れるし、相手が変えてきたら自分たちも変えられるっていうところで、僕がいる意味は大きいと思う。そういう力を示さないと、このチームは競争が激しいので、簡単には出られなくなってしまう。2つのポジションをやるうえで大事なのは頭のスイッチをしっかりと切り替えること。自分の中ではそんなに難しい役割だとは思っていません」と彼は自身の適応力と柔軟性に自信をのぞかせた。

 目下、フランクフルトはホーム6連勝中で、ブンデスリーガ1部で4位をキープ。チャンピオンズリーグ出場権獲得も現実味を帯びてきた。その原動力になっているのは、やはりクロアチア人指揮官の絶対的信頼を背負う34歳のベテランにほかならない。

長谷部誠

フランクフルトで安定したパフォーマンスを披露している長谷部 [写真]=Soccrates/Getty Images

 もちろん日本代表で最終ラインに入る可能性は低いものの、吉田不在の今回、ハリルホジッチ監督が新たなオプションを試すことがないとは言い切れない。本人は「3バックなら……。4バックだとちょっときついです」と遠慮がちにコメントしていたが、国内組のセンターバック陣の状況次第ではひょっとするかもしれない。仮にこうしたサプライズ起用があったとしても、要求されたパフォーマンスを確実に示してしまうのが、傑出したインテリジェンスを誇る長谷部誠の強み。彼がコンスタントに代表のピッチに立っているだけでチーム全体の安心感が高まるはずだ。

 それだけ重要な人間がこの2連戦でフル稼働できるメドが立てば、ロシア本大会の3試合連続出場への希望も見えてくる。昨年の状態では長谷部を酷使することは難しいと見られていたが、本人も言うようにフランクフルトで連戦をこなせる状態になっているのは確か。代表という精神的重圧が重くのしかかる舞台でも右ひざを含めて問題ないところを示してくれれば、日本代表にとって朗報だ。

 代表キャプテン歴丸8年という長期政権を担う長谷部誠には、ピッチ内外での奮闘を今一度、強く求めたい。

文=元川悦子

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