2017.12.15

心身ともに進化を続ける三竿健斗、プレースタイルに加わった熱と激しさ

三竿健斗
今季、鹿島では競争の激しいボランチで定位置を確保した [写真]=三浦彩乃
スポーツ報道を主戦場とするノンフィクションライター。

 朱に交われば赤くなる。ハリルジャパンに初選出された21歳のMF三竿健斗の現在位置を表すうえで、環境次第で人は変わる、という意味のことわざほどぴったりくるものはないだろう。

 理由は「朱」を「深紅」に置き換えてみると、より鮮明になってくる。ディープレッドとも表現される「深紅」は、所属する鹿島アントラーズのチームカラー。ファンやサポーターを含めて、クラブに携わるすべての人間の中で熱く脈打つ常勝軍団の伝統とプライドが、三竿を身心両面でたぎらせる炎と化したからだ。

 小学生年代のジュニアから育った東京ヴェルディを旅立ち、完全移籍で鹿島の一員になった2016シーズン。試合には絡めなかったものの、鹿島の真骨頂を目の当たりにして魂を震わせた。

 シーズン終盤で不調に陥った鹿島は、リーグの年間王者決定戦を迎えて鮮やかに復活。準決勝で川崎フロンターレ、決勝では浦和レッズを撃破して8度目のJ1王者を獲得し、クラブチームによる世界大会決勝でレアル・マドリードと死闘を演じ、元日の決戦も制してシーズンを終えた。

「タイトルを取り続けているベテランの選手やスタッフが大勢いる。試合で出た課題を次の練習ですぐに改善しく点でも、選手一人ひとりの向上心もものすごく高い」

 毎日のように刺激を受けていた三竿に、転機が訪れたのは今年5月末。石井正忠前監督(現大宮アルディージャ監督)の解任を受けてコーチから昇格した大岩剛新監督の下で、ボランチのファーストチョイスとなった三竿は最終節までの22試合のうち、累積警告で出場停止となった1戦を除いた21試合で先発フル出場を果たした。

「以前よりも駆け引きをして、意図をもった守備からボールを奪う回数が増えてきた。周囲との関係が良くなっただけでなく、個人戦術の部分でも守備力が上がってきたと思う」

 リーグ戦における経験が増えるごとに、プレースタイルに熱と激しさが加わってくる。先輩選手からかけられる声やアドバイスを気にするあまり、思い描いたプレーができなかったことが少なくなかった東京V時代から、明らかに積極性が出てきた自分にも気がついた。

「シュートを打つ回数が増えてきたし、守備でも自分がやりたいように周りの選手たちを動かせるようにもなった。何を言われてもぶれることなくプレーできている点で、徐々にですけど、成長できているのかなと思います」

 眩い輝きを放つホープは、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督の目にも留まる。東アジアの王者を決める、2年に1度の国際大会に臨む代表メンバーに大抜擢された。

「彼はボールを奪えるし、ファーストパスも面白い。他の選手より力強さがあるかもしれない」

 予期せぬ吉報に喜んだ直後に、どん底を味わわされた。ジュビロ磐田との最終節で引き分けたことで、王手をかけていたリーグ優勝を川崎にさらわれた。敵地ヤマハスタジアムのピッチで、三竿はしゃがみ込んで号泣した。

 人前でこんなにも感情を露にしたのは、ほとんど記憶にない。積み重ねてきた自信と勝利に対する責任がいつしか熱き思いを芽生えさせ、20個目のタイトルを逃したショックから魂を慟哭させた。

 だからといって、立ち止まるわけにはいかない。深く刻まれた悔しさはさらなる成長を導く深紅の炎と化し、捲土重来を期す鹿島をけん引し、確固たる居場所をA代表の中に築いていく糧になる。

文=藤江直人

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