2017.11.23

【ライターコラムfromG大阪】二兎を追う井手口陽介…21歳の若武者に芽生えた中心選手の“自覚”

井手口陽介
G大阪と日本代表の両方で活躍が期待される [写真]=Getty Images
雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。

 この1年、新たな背番号『8』を背負い、ガンバ大阪では圧巻の存在感を示してきた。シーズン序盤こそ、AFCチャンピオンズリーグの済州ユナイテッドFC戦で負ったケガの影響でやや戦列を離れたものの、4月1日の明治安田生命J1リーグ第5節のアルビレックス新潟戦で先発のピッチに返り咲いてからは、ほとんどの試合でフル出場。疲れ知らずの圧巻の運動量を示しながら、中盤の「外せない選手」として君臨してきた。それが日本代表デビューにもつながり、6月7日のキリンチャレンジカップ・シリア代表戦では待望のAマッチデビュー。昨年末初めて日本代表に選出された際は出場機会を与えられず「練習では感じることもあったけど、試合には出られなかったので面白くなかった」と話していた若武者は、水を得た魚のようにピッチを駆け、それは6日後の2018 FIFAワールドカップ ロシア・アジア最終予選のイラク代表戦での初先発にもつながった。

 以降、その評価は右肩あがりに。8月31日、ロシアW杯出場を決めたアジア最終予選のオーストラリア代表との大一番でも先発としてピッチに立ち、攻守に圧巻の存在感を示す。しかも82分には強烈なミドルシュートで代表初ゴールを挙げ、日本のロシアW杯出場を後押し。一躍、時の人となり一気に周囲は騒がしくなった。

「急に取材も、サインを求められることも増えた。以前から応援してくれる人には喜んで応えますけど、僕のことをほとんど知らない人に『またゴールを決めてください』とかって声をかけらると『もともとゴールを取るタイプの選手じゃないねんけどな』って戸惑います(笑)」

井手口陽介

豪州戦の強烈ミドルで一躍知名度が上がった [写真]=Getty Images

 あまりの喧騒にそう漏らしたこともあったが、もともと周囲に踊らされる男ではないからだろう。自身を冷静に判断しながら、やるべきことに淡々と向き合ってきた。

 それはチームでの結果が思うように出せない日々が続いたからでもある。今年のシーズン前に話を聞いた際は「周りの選手に引っ張ってもらって、自分はその陰でひっそりと頑張りたい」と笑っていたが、時間の経過とともに、チームの中心選手としての自覚が芽生え、その意識の変化は責任感へと変わっていた。

「昨年以上にコンスタントに試合に出場するにつれ、周りに頼りっぱなしだった自分に『僕がしっかりチームを引っ張っていかなアカン』という責任が芽生えるようになった」

 そんな風に意識の変化を実感する発言が目立ち始めたのは夏を過ぎた頃からだ。と同時にそうした立場になって始めて、彼自身もコンスタントに結果を出すこと、自分のパフォーマンスをチームの結果につなげること、チームを勝たせられる選手になること、それらを代表チームとの行き来の中でも当たり前にやり続けることの難しさを痛感し、自分の物足りなさや遠藤保仁今野泰幸らの偉大さを痛感したという。

「ヤットさんや今さんは代表とチームの行き来の中でも大きな波もなく、チームの軸として存在感を発揮してきましたからね。特にヤットさんに至っては10年以上ですから。その難しさを知った今は、驚きでしかない。それに比べたら僕なんてまだまだ……。まだまだ、まだまだです」

 ただ、遠藤や今野がそうであったように、そうした自覚の芽生えが、この先も彼のプレーや意識に大きな変化を与え続けることは間違いないはずだ。しかも井手口が日本代表に初選出されたのは20歳のとき。遠藤の日本代表選出は2002年、当時22歳だったことを思えば、2年早い代表デビューはさらなるアドバンテージになることだろう。いや、そのアドバンテージを生かすも殺すも井手口次第。遠藤が3度のワールドカップを含め日本代表の座に長きにわたって君臨し、日本の顔と呼ばれる存在になったのは、彼が真摯にサッカーに向き合い、過ごしてきた『過程』があったからこそ。その姿を間近で見てきた井手口が、彼のサッカー人生にとっては大きなキーになった今シーズンを境に、今後どんな道を歩くのか。そこにはきっとたくさんのいい驚きが満ちている。

文=高村美砂

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