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【コラム】長谷部欠場時の“プランB”…山口蛍は中盤の司令塔たり得るか、真価が問われる一戦に

2017.11.13

ベルギー戦は長谷部の欠場が濃厚。山口蛍の真価が問われる [写真]=Soccrates/Getty Images

 FIFAランク2位のブラジル代表に1-3の惨敗を喫した10日のゲームから2日。日本代表は14日の次戦、ベルギー代表戦の地・ブルージュに移動し、12日から新たな環境でのトレーニングを開始した。

 11日夕方の移動時にはバスがぬかるみにはまって立ち往生し、選手たちが車に分乗してホテル入りするというアクシデントが発生。12日のブルージュ近郊での夕方練習でも、照明が暗すぎて途中でピッチを移動した挙句、凄まじいひょうが降ってきて、紅白戦を途中で切り上げる羽目になった。

 試合2日前というのはヴァイッド・ハリルホジッチ監督が事前準備の中で最も重視する戦術確認の日。それを施設の関係で非公開にできなかったばかりか、時間も1時間程度に短縮されたことは想定外だったに違いない。ブラジル戦で露呈したプレスのかけ方も入念に確認できなかったため、ベルギー戦への影響が少なからず懸念されるところだ。

 特に不安が大きかったのは、キャプテン・長谷部誠(フランクフルト)が別メニューとなった中盤。主力組にはアンカーに山口蛍(セレッソ大阪)、インサイドハーフに長澤和輝(浦和レッズ)と井手口陽介(ガンバ大阪)が入り、ベルギーの仮想布陣である3-4-3に並んだサブ組を前からはめに行こうしたが、思うように機能しない。山口は「今日の練習ではホントにほとんど(プレスが)はまらなかった。次(のベルギー戦では)どうやってくかってところだと思います」と神妙な面持ちで語っていた。

 ブラジル戦では、失点が重なった前半途中から「前から行くのか、自陣に引いてブロックを作るのか」という意思統一が曖昧になり、バラバラ感が色濃く出た。長谷部が「個人的に責任を感じる。前から行った時に結構取れていたのでそれを続けたいと思う反面、あまりよくないボールの失い方をしたと気のカウンターがかなりやられていたんで、もう少しブロックを引いてやってもよかったかもしれない」と悔恨の念を吐露した通り、卓越した経験値を誇るキャプテンでさえ、崖っぷちに立たされたチームを1つの方向へと導くのことに苦悩した。

 その長谷部はご存知の通り、3月に手術した右ひざの回復が思わしくなく、「ひざのご機嫌を伺いながらやらなければいけない」と本人も苦笑する状態だ。今季フランクフルトでも何試合かに1回は欠場していて、7カ月後の2018 FIFAワールドカップ ロシア本大会も中3〜4日の連戦をフル稼働するのは不可能だ。来年1月に34歳になる彼に全てのイニシアティブを託し続けるわけにもいかない。

長谷部誠

長谷部不在時のプランが必要に [写真]=AMA/Getty Images

 となれば、誰かが中盤の司令塔的役割を担わなければいけない。今のメンバーでそれができるのは、2014年のブラジルW杯全3試合に出場し、今回のロシアW杯アジア最終予選もレギュラーに君臨した山口蛍以外にはいない。本人も強い自覚を持つべきだ。

「このサッカーはタテに速くて、試合のテンポも速いから、自分たちで修正しようとしても難しい。例えば、前の(インサイドハーフ)2人を呼んで指示することも難しい。そうなる前に自然とこういうシチュエーションになったらこうなるといった(約束事を)チームとして作れたらいいんじゃないかなと思います」と背番号16は問題解決に向けて1つのアイディアを口にした。

 彼の後方に位置する吉田麻也(サウサンプトン)も「どこではめるか、どう相手にボールを持たせるか、どういう守備をするかが明確になっていなかったので、あまりにも不透明な部分が多いんで、監督と話さないといけない」と危機感を募らせていた。山口が吉田とともにハリルホジッチ監督との話し合いに参加し、先陣を切って問題解決に当たるくらいの気概を見せてくれれば、チーム状態も改善に向かうかもしれない。そういうアクションを自ら起こすべき時が来ているのだ。

 実際、ベルギーがベストメンバーを揃えてくるとしたら、最前線にロメル・ルカク(マンチェスター・U)が陣取り、2列目にはエデン・アザール(チェルシー)、ケヴィン・デ・ブライネ(マンチェスター・C)が2列目に入る。彼らの個人能力の高さは世界が認めている通り。ブラジル戦でネイマール(パリ・サンジェルマン)やウィリアン(チェルシー)とマッチアップした背番号16は「前を向かすと速いのでやられてしまう。それをさせないために後ろ向きにさせるのが一番だと思う」と実感のこもったベルギー対策を思い描く。こうした良い追い込み方をするためにも、やはり周囲との連携強化は不可欠なテーマ。代表キャップの少ない井手口、長澤と組むのであれば、彼は関係作りにより大きな力を使うべきである。

「(高い位置でプレスをかけ続けた)オーストラリア代表戦みたいな戦いは1試合ならできるかもしれないけど、中2日、3日で次の試合が来る本大会だと絶対にできない。ブラジル戦だけでも1試合通してできなかったところがあったんで、やっぱり行くのか行かないのかの使い分けはホントにやっていかないといけない」とも山口蛍は話している。確かに相手の出方によってブロックの位置を変えられる柔軟性と臨機応変さを身に着けるのは、今の日本代表にとっての大きな課題。その判断も代表キャップ38試合と中堅に差し掛かってきた彼が率先してやっていい。

 ブラジル、ベルギーといった世界トップクラスと対峙する今こそ、山口蛍が大きく変わる絶好のチャンス。新たな中盤のけん引役としての存在価値を示せるか否か。このチャンスを逃してほしくない。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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