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【コラム】ネイマールと白熱デュエル! 酒井宏樹、フランスの地で見せた確かな成長

2017.11.11

ブラジル戦でネイマールとマッチアップした酒井宏樹[写真]=Getty Images

「ネイマールはパリ(・サンジェルマン)でやってる時とブラジル代表でやってる時は全く違う人。連携面を含めると、ブラジル代表のネイマールはさらにすごい選手なので、僕個人で止めるのはほぼ不可能ですね」

 10日のブラジル戦(リール)を控えた現地での練習後、同じフランス・リーグアンでプレーする酒井宏樹(マルセイユ)は、セレソンのエースナンバー10に最大級の賛辞を送った。2012、13、14年の過去3度の日本戦で合計7ゴールをマークしているネイマールとは、10月22日の直接対決で顔を合わせたばかり。だからこそ、実感のこもった発言をしたわけだが、その通りにやられるわけにはいかない。彼は彼なりに対策を練って、この大一番に臨んだ。

 開始早々の4分、マルセロ(レアル・マドリード)の浮き球のパスを左サイドで受けたネイマールが細かいドリブルで中央にカットイン。酒井は必死に対面の相手に食らいついた。この激しい守備を嫌がったのか、背番号10はジュリアーノ(フェネルバフチェ)へのスルーパスを選択。次の瞬間、背番号18が右足でシュートを放ったが、得点には至らなかった。

 最初の危機をやり過ごしたことで、少し自信と手応えを得た酒井はその後も相手エースに思い切って体を寄せ、果敢にデュエルに挑んでいく。13分、21分を筆頭に、前半だけで数多くのマッチアップの場面を迎えたが、決定的なシュートは打たせず。縦関係に位置した久保裕也(ヘント)も献身的なプレスバックでネイマールを挟みに来てくれたことで、仕事らしい仕事をさせずに乗り切った。吉田麻也(サウサンプトン)が献上したPKを皮切りに、リスタート、カウンターから3失点を食らったのは想定外ではあったが、彼自身はフランスでの経験値を遺憾なく発揮したと言えるだろう。

 後半もネイマールとの白熱したバトルは続き、両者にイエローカードが出されるほどヒートアップした。「サッカーは戦いなんでね」とサラリと言う彼はタフなメンタリティを押し出し続け、セレソンの10番が71分に下がるまで、一歩も引けを取らなかった。

相手のキーマンであるネイマール封じに挑んだ [写真]=Getty Images

 加えて、後半アディショナルタイムには攻撃面で大きな見せ場を作る。途中出場の森岡亮太(ワースラント・ベフェレン)とのワンツーから右サイドを抜け出し、ゴール前に絶妙な折り返しを送ったのだ。これを浅野拓磨(シュツットガルト)がミートしきれず、日本の追加点は生まれなかったが、あれだけ守備で力を使いながらラストの時間帯に敵陣深いところまで駆け上がるのは容易なことではない。内田篤人(ウニオン・ベルリン)の控えに甘んじ、ピッチに立てずに終わった2014 FIFAワールドカップ ブラジルの頃とは別人と言ってもいいほどの勇敢さを、彼は90分間にわたって示したのである。

「僕らのゲームプランとしては、守備陣は前半をゼロに抑えることだった。後半、何か起こるかもしれないという状況につなげたかったんで、そこに悔いはありますよね。ネイマールに対しては、1対1になる時の癖は少なからず見ていたけど、そこにマルセロとかガブリエル・ジェズス(マンチェスター・C)とかが絡んでくるともう止められなかった。もっともっと密にコミュニケーションを取るしかないですし、個で負けてる分、連携でカバーしなきゃいけない」と酒井は改めて日本守備陣に必要なポイントを強調していた。

 確かに3つのゴールを奪われた前半は、ブラジルのカウンターに翻弄された印象が強かった。久保がシュートを打ち切れずにボールを奪われ、そこから最終的にジェズスの3点目につながった36分のシーンはまさに象徴的と言っていい。

 一連の流れを振り返ってみると、酒井は久保がマルセロ相手に1対1を仕掛けた際、敵陣ゴールライン付近まで上がり、ボールを奪われた瞬間に一目散で奪取して自陣に戻った。が、ダニーロからジェズスにラストパスが入った時には自身の背後を突かれる形になったしまった。吉田と長友佑都(インテル)もゴール前に戻って人数は揃っていたが、最後の最後にやられるという「詰めの甘さ」を露呈したのだ。長谷部誠(フランクフルト)も「失点してからの前半は自分たちが点を取りに行きたいってことで前から行くのか、もう少ししっかりブロックを作るのかが意思統一されていなかった」と反省していたが、こうしたチームけん引役を長谷部や長友、吉田だけがやっていればいいわけではない。

 酒井もこのブラジル戦で国際Aマッチ40試合目を記録した最終ラインの絶対的レギュラーである以上、行くべきか引くべきかを判断し、指示を送る立場に回らなければいけないはずだ。チーム全体がナーバスになったこの時間帯に、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の求めるコミュニケ―ションを積極的に取れる選手がどれだけいるかで、日本のロシアでの成否の行方は大きく変わる。それを彼自身がより強く自覚すべきだ。

「今日はワールドカップに向けて『行くか行かないか』を見てみたいというのがあって、監督もこういう戦い方をしたと思います。本番ではガッチリ守備ブロックを作ってしのぐという選択肢も一つかもしれない。どうなるか分かんないですけど、両方にトライできるようなチームになっていけばいい。そういうチームにならなきゃいけないと思います」と彼も対応力や柔軟性を養っていくことの大切さを口にした。それを自ら貪欲に取り組んでいくことこそ、酒井自身、そしてチームの大きな成長につながる。この日のネイマール封じで奮闘した実績を武器に彼にはさらに高い領域に突き進んでもらう必要がある。

 さし当たって14日の次戦・ベルギー代表戦(ブルージュ)だ。彼らにもユーリ・ティーレマンス(モナコ)、ナセル・シャドリ(ウェストブロムウィッチ)といった強力な左サイドがいるが、難敵を完封してチームに大きな活力をもたらすことを強く求めたい。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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