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【コラム】目指すは先輩・柿谷と同じ道…W杯出場へ強烈なインパクトが求められる杉本健勇

2017.10.10

ニュージーランド戦に途中出場した杉本健勇 [写真]=三浦彩乃

 10月日本代表2連戦のラストとなるハイチ戦(横浜)がいよいよ10日に迫ってきた。6日のニュージーランド戦(豊田)は川島永嗣(メス)、長友佑都(インテル)、吉田麻也(サウサンプトン)、大迫勇也(ケルン)ら2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選の主力に、しばらく試合から遠ざかっていた槙野智章(浦和レッズ)や武藤嘉紀(マインツ)らを加えた陣容で挑み、2-1で辛くも勝利した。しかし、今回はヴァイッド・ハリルホジッチ監督が「明日はこれまであまり出ていない選手をトライすることになる。いろいろな選手が入ると思う」と前日会見で公言した通り、スタメンが大幅に入れ替わることになる。

 代表初招集から足掛け7年が経過しながらまだ2試合しか出ていない東口順昭(ガンバ大阪)、ニュージーランド戦で途中出場して異彩を放った乾貴士(エイバル)、決勝点を奪った倉田秋(G大阪)のスタメン入りが確実視される中、最近2戦連続で後半出場している大型FW杉本健勇(セレッソ大阪)も満を持して先発1トップに陣取る見通しだ。

「最初から出た方がやりやすい? 当たり前でしょ(笑)。今季は代表でしか途中出場してないし」と本人も9月のサウジアラビア戦(ジェッダ)と前試合のニュージーランド戦とは異なる一面を見せようと躍起になっている。「セレッソは2トップだけど、代表は1トップなんで、あまりサイドに流れると中で勝負する人がなくなる。なるべく真ん中で勝負できるようしたい」と杉本は最前線の大黒柱として得点に強くこだわる考えだ。

 ハイチはFIFAランク48位と40位の日本とほぼ同格とはいえ、昨年9月のロシアW杯北中米カリブ海4次予選で敗退。今年3月以降は国際試合をしていないチームということで、杉本はよほどのインパクトを残さない限り、指揮官の心を揺さぶることはできない。それだけ代表1トップのハードルは高い。今回は複数ゴールなど強烈なインパクトが求められるのは間違いなさそうだ。

 そもそも、ハリルホジッチ監督は、2015年3月の就任当時から彼に特別な期待を寄せていた。187センチ・79キロという世界基準の体躯とスピード、技術、得点センスを兼ね備えた日本人FWはそうそう見つからないからだ。最近、ロシアへの切符をつかんだ欧州強豪国を見ても、イングランドにはハリー・ケイン(トッテナム)、スペインにはアルバロ・モラタ(チェルシー)、ポーランドにはロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン)という大柄な絶対的エースが君臨している。現在の日本代表でその立場をつかんでいるのは大迫だが、ハリル監督基準だと182センチ・71キロというサイズはやや小柄。だからこそ、杉本の成長を注意深く見続けてきたのだ。

 けれども、2015年は川崎フロンターレでレギュラーをつかめず、古巣・セレッソに復帰した2016年はJ2で左アタッカーとしてプレーしていて、注目の男が表舞台に浮上することはなかった。しかしながら、J1に復帰した今季、尹晶煥監督が就任したことで、彼の運命が劇変する。「現代サッカーでは前線で体を張れる大柄なFWが必要」と考える韓国人指揮官は、キャプテン・柿谷曜一朗ではなく、杉本を最前線に抜擢。その潜在能力の高さに賭けた。

杉本健勇

杉本(右)は今季J1で16得点を挙げ、エースの柿谷(左)とともにセレッソをけん引している [写真]=Getty Images for DAZN

「前をやるに当たっては時間を作ることやポストプレーも必要。サイドの時はつねに前を向いてプレーできるけど、FWになると後ろ向きのプレーも多くなってきますし、そこでいかに前を向いて勝負できるかが一番大事になってくる。今年はそういう仕事もできるとことを見せて、昨季J2での14点を上回るゴールを取りたい」と今季開幕前、杉本はFWとして一本立ちする覚悟を示した。その思いにチームメートも応え、後押ししたことで、大型FWはJの舞台でゴールを量産。ロシアへの切符のかかる8月のオーストラリア戦(埼玉)直前に代表に抜擢されるに至った。

「大一番で仕事をする自信? 自信がなかったら辞退した方がいいんじゃないですか。ワールドカップ行けるか行かれへんかという戦いなんで、自分からもしっかり要求したい」と杉本はかつてないほどの闘争心をみなぎらせ、ハリルジャパンに合流した。だが、肝心の決戦はまさかのベンチ外。簡単に序列を上げてもらえるわけではないことを本人は痛感したはずだ。

 それでもフランス人指揮官は彼を外すことなく、少しずつチャンスを与えている。サウジ戦は67分、ニュージーランド戦は60分に出場とプレー時間も着実に増えている。豊田ではセレッソの先輩・乾や同じ92年生まれの小林祐希(ヘーレンフェーン)も「健勇を狙ってボールを上げた」と発言。彼らを筆頭にチーム全体が「早く杉本に代表初ゴールを取らせたい」という雰囲気になっている。

「周りの期待? メッチャ嬉しいですよ。明日取りたいです」と本人も笑顔を見せたが、ハイチ戦でのゴールはロシアへの生き残りの最低ノルマと言っても過言ではない。

 セレッソの先輩・柿谷も4年前の東アジアカップ(韓国)で得点王に輝き、アルベルト・ザッケローニ監督の信頼を一気に引き寄せ、ブラジル行きを果たした。本大会では凄まじい重圧に押しつぶされて不完全燃焼に終わったが、その一挙手一投足を杉本は近くで見続けてきた。

「曜一朗君は予選はほとんど出てないけど、最終メンバーに入った。自分もほとんど同じ状況。同じようになるかは分からないけど、しっかり最後まで残っていけるようにしたいです」と大型FWは決意を口にした。先輩の悔しさを知る男には、ロシアに行くだけでなく、1トップとして世界の舞台で活躍できるレベルに到達してほしい。大迫、岡崎慎司(レスター)、武藤と競争相手のレベルは高いが、彼にしかない個性と長所を強く押し出すこと。それしか代表に残る術はない。

文=元川悦子

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