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熾烈なサバイバルの中で募る危機感…背番号10・香川真司の逆襲のとき

2017.10.04

日本代表での激しいポジション争いで危機感を募らせる香川真司 [写真]=三浦彩乃

 2018年ロシア・ワールドカップ本番へ新たな一歩を踏み出した日本代表。今回の10月2連戦(6日・ニュージーランド=豊田、10日・ハイチ戦=横浜)では、国際Aマッチ111試合を数える岡崎慎司(レスター)、105試合の長谷部誠(フランクフルト)、91試合の本田圭佑(パチューカ)がメンバーから外れ、実績ある面々も危機感を募らせている。

 6大会連続で世界切符を手にした8月31日のオーストラリア戦(埼玉)で出番なしに終わったキャップ数87試合の香川真司(ドルトムント)はその筆頭。1カ月前の大一番は6月のシリア戦(東京)で痛めた左肩の状態を考慮され、温存されたという見方もあったが「温存って捉えている感じは全くないですし、この前も出れなかっただけであって。そこでチームが結果を残しているわけなんで、自分自身もすごく危機感はあります」と本人も強調していた。背番号10のプライドをかなぐり捨て、熾烈なサバイバルに身を投じる覚悟を改めて抱き、3日のトレーニングからチームに合流した。

 実際、香川の代表における地位はもはや盤石とは言い難いものがある。最終予選10試合のうち、彼が出場したのは6試合(うち先発5試合)。ゴールは今年3月のタイ戦(埼玉)の1点にとどまった。欠場を余儀なくされた終盤3戦は原口元気(ヘルタ)がトップ下でプレーしたり、インサイドハーフに井手口陽介(ガンバ大阪)、山口蛍(セレッソ大阪)、柴崎岳(ヘタフェ)が入ったりと若手の台頭が目立った。今回も同じ欧州組でコンスタントに試合に出ている小林祐希(ヘーレンフェーン)が参戦。香川は挑戦を受ける格好になっている。絶対的地位を与えられていたアルベルト・ザッケローニ監督体制での4年前とは全く状況が違うのだ。

 それでも、当時よりいい部分も少なからずある。マンチェスター・Uに所属していた2013-14シーズンは試合に出たり出なかったりで、得点もシーズンを通して0だった。2010年夏の欧州挑戦後、最大の挫折を味わった。代表では左サイドを主戦場にしていたため、異なるポジションの適応にも悩み続けた。こうした複雑な環境がマイナスに働き、2014年ブラジル・ワールドカップ本大会では精彩を欠き、第2戦のギリシャ戦(ナタル)でスタメン落ちの屈辱を味わうことになった。

 しかし、現在は所属のドルトムントで試合出場数を徐々に増やしている途中で、9月20日のハンブルガーSV戦、直近の30日のアウグスブルク戦でゴールも奪っている。「コンディションはもっと上がっていくと思う。ただ、出た試合でしっかり結果を残しているという意味ではいいスタートを切れている」と彼自身も手ごたえをつかみつつある。

 ポジションに関しても、クラブの定位置はインサイドハーフが中心。日本代表もヴァイッド・ハリルホジッチ監督が4-3-3を基本布陣にしつつあるだけに、香川のポジションは当然インサイドハーフになるだろう。「あんまりこっちではインサイドハーフをやっていないんで、まずはやってみないと分からないところはありますけど、よりボールに絡めればまた違うよさが出せる。1人1人違うよさがこのチームにはあると思ってるんで、僕は僕なりのものを出せればいい」と彼らしい卓越した技術、創造性やアイディアを発揮して、差別化を図っていくつもりだ。

 11月に対戦するブラジルやベルギー相手だとまず守備を第一に考える必要があるため、オーストラリア戦のように井手口や山口といったボール奪取力に定評のある選手をインサイドハーフに配置する方がベターかもしれない。だが、今回のニュージーランドやハイチは日本が支配する時間が長くなると見られる。ワールドカップ本番でもそういう相手と対峙する可能性は皆無ではない。香川の攻撃センスが活かされる場面は十分あるはずだ。「僕たちがボールを支配する中での課題が明確に出てきている分、そこに対してどれだけトライできるかを特に重視してやっていきたい」と本人も今回2連戦のテーマを掲げたが、確かに強豪相手であろうが日本が主導権を握る時間帯も作れなかったら、ワールドカップでの躍進は難しい。攻撃陣で圧倒的な代表経験を誇る香川にはその担い手として力強くチームをけん引する責務がある。

 4年前と比較してもう1つ大きな強みになるのが、メンタル的な安定だ。ブラジル大会の時は10番の重圧からか「自分がやらなければいけない」と気負いすぎて、全てが空回りしてしまっていた。その後の4年間でドルトムントへの復帰、クラブ内でのポジション争い、ケガ、出場機会減といった数々の困難に直面し、どうやってそれを向き合っていくかという術を体得したのは確かだ。出番なしが続いた昨年末にも「ロシアまで1年半前。それを見据えたらここで苦しんでるくらいがちょうどいい」と1つ1つの出来事に一喜一憂せず、長期的目線で課題を克服しようとする香川がいた。今回、本人が「メンタル的に安定した」と発言したのも、こうした試行錯誤の成果なのだろう。

 こうした紆余曲折をピッチ上にぶつけ、目に見える結果を出してくれれば「香川が代表落ちの危機に瀕している」といった見方はされないで済む。1カ月の悔しさを糧にして、彼には逆襲の力強い一歩を踏み出してもらいたい。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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