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【コラム】「まだまだ甘い」…中盤で孤軍奮闘の井手口陽介、敗戦を糧にさらなる成長誓う

2017.09.06

2試合連続フル出場を果たした井手口陽介

 6大会連続のワールドカップ出場を決めた8月31日のアジア最終最終予選・オーストラリア代表戦(埼玉)で神出鬼没な動きを見せ、勝利を決定づける豪快ミドルシュートで2点目を叩き込んだ井手口陽介ガンバ大阪)。日本代表3試合目にして瞬く間に主力級の存在感を示した21歳の若きダイナモが、本大会への新たな一歩となる9月6日のサウジアラビア代表戦(ジェッダ)でどのようなパフォーマンスを見せるのか。それは非常に興味深い点だった。

 日本は今回も4-3-3の布陣を採用。井手口は前回同様、左インサイドハーフに入り、約2年ぶりに代表戦復帰を果たした柴崎岳(ヘタフェ)とコンビを組む形でスタート。序盤は前回同様、豊富な運動量と鋭い出足で相手との間合いを詰め、アグレッシブにプレスをかけていく。開始13分には左FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)から受けたボールをペナルティエリア外側から思い切って打ちに行く。これはGKにキャッチされたものの、大胆さと強心臓ぶりは相変わらずだった。

 しかしながら、気温32度・湿度80%の酷暑、移動を伴う中4日の超過密日程が重なり、選手たちは20分を過ぎた頃からじわじわと足が止まり始める。前半は何とか0-0で乗り切り、後半頭から本田圭佑(パチューカ)が浅野拓磨(シュトゥットガルト)と交代。攻撃の活性化が図られると期待されたが、相手の切り札・アルムワラドの凄まじいスピードに守りが翻弄され、チーム全体が統率を欠くようになってしまう。

「前半の方が形は作れていましたけど、後半ガクッと落ちてしまったなと。もっと(前に)蹴るんやったら中盤全体でセカンドを拾わないといけないのに、何をするにもバラバラだったと思うんで、そこは考えなきゃいけなかった」と井手口本人も悪い流れを止めきれない。案の定、日本の守りにポッカリと穴が開き、63分にに与えてはいけない1点を奪われた。

 先制点を取られるのはアジア最終予選初。6万超の大観衆の後押しを受けるサウジが一気に勢いを増し、日本はズルズルと自陣に下がらざるを得なくなったが、苦境の最中でも背番号2は躍動感を失わなかった。

 59分に右サイドの浅野を走らせるパスを送り、61分には左に開いて岡崎慎司(レスター)にチャンスボールを上げ、直後には右の高い位置まで攻め込んでファーサイドから走り込んできた原口に鋭いクロスを上げるなど、短時間で立て続けにチャンスを作る。そればかりでなく、攻め上がった直後には一目散に自分の持ち場へ戻って守備のバランスをしっかりと保つ。「ずっと90分通して(前へ行くの)は無理。結局は『行かない』っていう選択肢の方が多かった」と井手口自身は反省の弁を口にしていたが、疲労困憊のチームの中で最も走り、献身的姿勢を前面に押し出していたのはチーム最年少の彼だった。それは誰もが認めるところだろう。

中盤で攻守にわたって存在感を見せた [写真]=Getty Images

 終盤に柴崎と久保裕也(ヘント)が交代。背番号11がトップ下の位置に陣取ると、井手口は山口蛍(セレッソ大阪)とボランチを形成した。ポジションが1つ下がった分、攻めに出ていく回数は減ったが、相手をつぶしに行く出足の鋭さ、寄せの激しさは最後まで落ちなかった。過酷な環境下でそこまで高い機動力とインテンシティーを発揮できる選手はそうそういない。

 だからこそ、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はこの若武者を最終予選終盤3戦連続スタメン起用したに違いない。0-1で苦杯を喫した今回は不完全燃焼感が色濃く残ったかもしれないが、井手口が未来への希望を示したのは紛れもない事実。持ち前のダイナミックさを9カ月後の本大会までに一段階、二段階、引き上げていけば、井手口が日本の中盤を担う存在になる可能性は少なくない。

「(ワールドカップでは)こういうアウェイの環境で自分たちのサッカーをして勝ち切る強さが絶対に大事。やっぱりそこはまだまだ甘いんじゃないかと思います。自分は守備でも攻撃でもどこにでも顔を出せる選手になりたいので、まずはJリーグに戻ってしっかりやりたい」と彼は自分に言い聞かせた。

 今後の井手口に求められるのは、21歳という年齢に関係なく、周りに的確な指示を出し、要求していく力。もともと喋りはあまり得意でない彼だが、A代表でプレーするようになって自分の考えや意思をしっかりと表現するようになってきたのは大きな前進だ。この日も「もっともっと(自分から)要求していかないといけないと思いますし、求めて求めあってっていう関係を構築できればいい」と語り、より貪欲さに高みを目指していくつもりだ。今回の2連戦でコンビを組んだ山口とは遠慮なくコミュニケーションできるようになってきた様子だが、離脱したキャプテン・長谷部誠(フランクフルト)ら年長者を自分から動かす領域には至っていない。そこまで達してこそ、日本の大黒柱と言うにふさわしい選手になれるのだ。

 井手口の劇的な成長がロシアでの日本の戦いぶりを大きく左右すると言っても過言ではない。この悔しい敗戦経験をバネに、所属するG大阪で自己研鑽に励んでほしい。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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