会場となる埼玉スタジアムで練習を行った浅野(左)[写真]=新井賢一
運命の一戦でヒーローになる。その決意を持って、FW浅野拓磨(シュトゥットガルト)がオーストラリア戦に挑む。
昨夏にドイツへ移籍した22歳は、今シーズンから昇格した1部で戦っている。「ゲームのレベル差は、まだそんなに感じていない。昨年、2部でやってきたことに意味があったと思っています。1部でやれるという実感があるし、それは2部でシーズンを通してやってきたからだと思う。2部で戦った1年間は大きかった」。そう語る表情にはたくましさが漂う。
成長している自覚はある。しかし、開幕から2試合無得点。日本代表でも昨年9月のタイ戦以来、ゴールから遠ざかっている。焦りがないといえば嘘になるだろう。浅野は「(代表チーム内の)競争は激しくなっていると思います。僕自身も確立された選手ではないので、危機感や緊張感を感じている」と素直な心境を明かした。
目に見える結果が欲しいところだが、オーストラリア戦は勝てば6大会連続6回目のW杯出場が決まるという大一番。目の前の敵以外に、「今までに感じたことのないような緊張感と責任感があると思う」とプレッシャーとの戦いもあるようだ。
もっとも、プレッシャーがかかることは悪いことではない。浅野はこれまでも「大一番には強い人間だ」と言い聞かせ、ゴールネットを揺らしてきた。例えば、リオデジャネイロ・オリンピック出場権を懸けて戦ったAFC U-23選手権が挙げられる。「あの時も緊張感はかなりありましたよ。一発勝負でしたし」と笑うが、韓国との決勝では途中出場から2ゴールを決めて大会制覇に貢献。ここ一番で勝負強さを発揮した。
31日、W杯出場に王手がかかった大舞台でヒーローになれるか。「こういった時こそ、FWは力を出さないといけない。ワールカップに出場させて、自分の立ち位置を確立させたい。一発逆転ではないですけど、『ここで一発やったろか』という気持ちはある」。ゴールに飢えたストライカーが、牙を鋭く研ぎすませていく。
取材・文=高尾太恵子
By 高尾太恵子
サッカーキング編集部