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【コラム】久保裕也、最終予選3戦連続弾ならず…次こそ日本をロシアへ導くゴールを!

2017.06.17

次戦の得点が期待される日本代表FW久保裕也 [写真]=Getty Images

 気温35度超、湿度10%、標高1200mの高地という三重苦の中、13日の2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選第8節のイラク代表戦(テヘラン)に挑んだ日本代表。香川真司(ドルトムント)ら負傷者続出を受け、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はトップ下に原口元気(ヘルタ・ベルリン)、ボランチに遠藤航(浦和レッズ)と井手口陽介(ガンバ大阪)という新たな中盤を編成。両サイドアタッカーも右に本田圭佑(ミラン)、左に久保裕也ヘント)という予想外の配置で戦った。

 過去に何度もコンビを組んでいる本田と酒井宏樹(マルセイユ)の右サイドのスムーズさに比べて、長友佑都(インテル)と初めてタテ関係を形成した左の久保は苦戦。見せ場らしい見せ場は、開始3分のドリブル突破からの折り返しくらいしか出せなかった。試合前から指揮官とミーティングを重ね、「裏へどんどん抜け出せ」と指示を受けていたが、持ち前のタテへの推進力は影を潜めた。

「ただただ守備に追われて攻撃の部分では何も出せずに終わったかなと。自分は守備の割合が多かったかなと思いますし、攻撃に出ていくパワーがあまりなかった。監督からもフィジカル的にキツいゲームになると言われていましたし、特に僕と本田さんのサイドのところは運動量が求められていた。もうちょっとうまくできたかなと思います」と本人も不完全燃焼感を吐露した。

 久保にとって痛かったのが、原口と倉田秋(G大阪)が代わった直後の後半26分に起きた足の痙攣だ。「打撲が入って、そこがちょっと攣ったかなという感じ」と説明したが、同時に酒井宏樹も右ひざを負傷。より深刻な右サイドバックを代えざるを得ず、久保は最後までピッチに立つ羽目になった。その状況では走りたくても走れない。チャンスボールが出てきても反応できない自分自身へのふがいなさを新背番号11は痛感したことだろう。

 ハリルホジッチ監督がそこまでして久保を使い続けたのも、もちろん交代カードがなくなったからだが、3月のUAE代表(アルアイン)、タイ代表(埼玉)2連戦での2ゴール3アシストの大爆発の再現もどこかで期待したはず。1月に移籍したベルギーのヘントでも17試合11得点という凄まじいゴールラッシュを披露。その勢いをイラク戦につなげてほしいという願望を、彼は指揮官のみならず、チーム全体から寄せられた。

シリア戦では精彩を欠いた [写真]=Getty Images

 けれども、3月代表戦以降、クラブで重圧のかかるタイトルプレーオフを10試合消化した目に見えない疲労が重くのしかかり、今回の久保は明らかに動きが悪かった。7日のシリア代表戦(東京)でもシュート1本と本来のゴール前の鋭さを出せずに苦しんだ。イラク戦も決定機は皆無で、最終予選3戦連続ゴールは幻に終わった。「裕也は昨オフもリオ・デ・ジャネイロ五輪のために負荷の高いトレーニングしていたんで、丸々2シーズン休んでいない」と代理人のマウリツィオ・モラーナ氏も強調していたが、本人も欧州と代表と掛け持ちする難しさを再認識するいい機会になったのだろう。

 とはいえ、中田英寿氏や中村俊輔(ジュビロ磐田)、本田、香川真司(ドルトムント)といった面々はこうした難しさに直面しながら、解決策を見出し、代表で結果を出してきた。久保が真のエースになろうと思うなら、このハードルは絶対に超えなければならない。

 さしあたって重要なのは、来シーズンをどのように過ごすかだ。目下、彼は完全休養に入っていて、今月末には欧州に戻り、ヘントでの開幕に備えることになる模様だ。ヘントの新シーズン開幕戦は7月27日のUEFA ヨーロッパリーグ(EL)予備戦3回戦。30日にはリーグ開幕のシシト・トロイデン戦があるため、久保はいきなりの過密日程を余儀なくされる。8月末までは他クラブへの電撃移籍の可能性も残されており、いつ何が起きても迅速な対応ができるように備えておく必要もある。

久保裕也

所属するヘントでの活躍にも期待が掛かる [写真]=Getty Images

 ただ、最終予選ラスト2連戦(オーストラリア代表&サウジアラビア代表)のある8月末から9月頭の時期はすでに1カ月実戦をこなしてコンディションも上がっている頃。8月に開幕を迎えるプレミアリーグ(イングランド)、ブンデスリーガ(ドイツ)勢に比べると、かなりフィットしている状態ではないか。香川が左肩脱臼からいつ復帰できるか未知数で、本田の新天地も決まっていない今、年長者たちに頼っているわけにはいかない。イラク戦で値千金の先制弾を叩き出した大迫勇也(ケルン)、最終予選前半戦で4連続ゴールを挙げた原口らとともに、絶対的な得点源になることが久保には強く求められるのだ。

「ハリル監督はとにかく裏を狙えと言ってるけど、それだけじゃダメだと思う」と本人も話すだけに、いかにして自分のプレーのバリエーションを広げ、得点パターンを増やしていくのか。そこが直近の課題となってくる。久保がどんな相手からも点を取れるようになってくれれば、日本にとっても鬼に金棒だ。次の大一番こそ、鋭いナイフのような決定力を発揮すべき時。日本をロシアに連れていく一撃をぜひともオーストラリア戦で奪ってもらいたい。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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