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【コラム】命運を左右する大一番…イラク戦、DFリーダー・吉田麻也の統率力にかかる期待

2017.06.13

前日練習に臨んだ吉田麻也 [写真]=元川悦子

「ホントに我々のチームにとって最も大事な試合がやってきました。全てを出して、勝つためのトライをしなければいけません」

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が試合前日の公式会見でこうj切り出したように、13日の2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選・イラク戦(テヘラン)は日本の命運を左右する大一番と言っても過言ではない。

 8日にオーストラリアがサウジアラビアを3-2で下し、勝ち点を「16」まで伸ばしたことから、日本、サウジアラビア、オーストラリアの3チームが同勝ち点で並んだ。日本は得失点差で上回って暫定首位に立っているが、ラスト2試合が両国との直接対決だけに、最後の最後でひっくり返されることもあり得る。ここで勝ち点を積み重ねておけば、そのシナリオを回避できる可能性は一気に高まる。それゆえイラクからは最低1ポイント以上を確保する必要があるのだ。

 決戦を控え、日本代表は12日の17時過ぎから試合会場のシャヒード・ダストゲルディ・スタジアム(通称パススタジアム)で公式練習を実施。前日は別メニューでランニングしていた山口蛍(セレッソ大阪)も合流した。メディアをシャットアウトする中、24人全員で全体練習を消化した模様だ。

 その山口を含め、気になるのがイラク戦の先発メンバーだ。GK川島永嗣(メス/フランス)、最終ラインは酒井宏樹(マルセイユ/フランス)、吉田麻也サウサンプトン/イングランド)、昌子源(鹿島)、長友佑都(インテル/イタリア)の守備陣は7日に行われたキリンチャレンジカップ 2017のシリア戦から不変だろう。

 気がかりなのは、指揮官が「問題を抱えている」と嘆く中盤。引き続き4-3-3を採用するのであれば、アンカーに山口を入れるか、若い井手口陽介(ガンバ大阪)を入れるかで判断がわかれるところ。前日練習で山口がどこまで鋭さを取り戻したかどうか、それ次第での判断になりそうだ。インサイドハーフは右に本田圭佑(ミラン/イタリア)、左に今野泰幸(G大阪)が有力。ただ、今野がシリア戦以降ずっと元気がない様子だけに、彼ではなく井手口をインサイドハーフに上げて使う可能性も考えられる。中盤の構成と陣容は大いに注目される。

 3トップはシリア戦と同じ顔ぶれで、右に久保裕也(ヘント/ベルギー)、左に原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)、1トップに大迫勇也(ケルン/ドイツ)という並びが濃厚。岡崎慎司(レスター/イングランド)、乾貴士(エイバル/スペイン)、浅野拓磨(シュトゥットガルト/ドイツ)の3人はジョーカーとしてベンチに控えることになりそうだ。

 いずれにしても、第一に考えなければならないのはシリア戦と同じ轍を踏まないこと。後手を踏んだ守備に関しては特に大きな改善が求められる。キャプテンマークを巻くDFリーダーの吉田は「イラクはほとんどの選手がリオ世代の若手で、次のワールドカップを見据えて監督も代えて新しいスタートを切ったところ。どの選手も監督にアピールしたいという高いモチベーションを持ってくる。彼らを勢いに乗らせたくないし、先制点を与えないことがすごく大事になってくる」と、手堅い守りが勝利のポイントになることを改めて強調していた。

 イラクは同国初のセリエAプレーヤーであるアリ・アドナン(ウディネーゼ/イタリア)を筆頭に個人能力が高い。1対1で簡単に負けてしまったら、相手に押し込まれることになりかねない。そしてクロスボールを次々と入れられた場合、身長180センチメートル以上の選手を多数揃えるイラクの方が明らかに有利だ。もともとクロスへの対応には脆さが感じられる日本だけに、簡単にサイドからの突破を許さないことが肝心。ゴール前で吉田、川島を中心にしっかりと相手を跳ね返すことも重要になってくる。

 昨年10月のホームゲーム(埼玉)ではFKから打点の高いヘディングシュートを決められた通り、リスタートも細心の注意を払わなければならない点だ。

「ムダなファウルを与えないことが一番。この前のシリア戦も、前回のイラク戦もそうだけどど、不用意なファウルが多かったので、そこは注意しなきゃいけない。セットプレーはマンマークなので、一人ひとりが集中力を欠かさず、責任を全うできるかどうかが大事になってくる」と吉田も話すように、チームの全員が各々に課せられた仕事をキッチリと果たせば、自ずから相手もペースダウンし、流れが日本に来るはず。そういった頭脳的な試合運びをすることが、過酷な環境での一戦を制する絶対条件となる。

 DFリーダーである吉田は、チーム全体が一体感と結束力を持って戦えるように仕向けて行くべき。今回は彼の統率力に改めて大きな期待を寄せたい。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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