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【コラム】長友佑都が見るインサイドハーフ・本田の可能性…新たな可能性を秘めるイラク戦

2017.06.08

本田の新境地に期待を寄せる長友 [写真]=Getty Images

 2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選の大一番・イラク代表戦(13日=テヘラン)を控えた7日のシリア代表戦(東京)を1-1のドローで終えた日本代表。内容ある勝利を得られなかっただけでなく、香川真司(ドルトムント)が左肩脱臼で離脱が決定。イラク戦には帯同しないことが明らかになった。

 さらに翌8日のクールダウンでは、吉田麻也(サウサンプトン)、酒井宏樹(マルセイユ)、山口蛍(セレッソ大阪)の3人が欠席。吉田は腰の張り、酒井宏樹は右ひざ痛で宿舎で静養に努めただけで大事はない模様だが、山口は右スネを強打し病院で検査を受けたという。状態によってはイラク戦出場が険しくなる可能性もゼロではない。追加招集されていた宇佐美貴史(アウクスブルク)も同日を最後に離脱が決定。代表チームは総勢24人で8日夜の便で現地に赴くことになったが、戦力的な手薄感はやはり否めない。

 シリア戦で今野泰幸(ガンバ大阪)の同点弾をアシストした長友佑都(インテル)も「今の真司が抜けるのは、2~3人いなくなってるくらい痛い」と正直な思いを吐露した。

 それでも、目下最終予選B組で勝ち点4の5位に沈んでいるイラクに万が一、不覚を取るようなことがあれば、8月のオーストラリア代表、9月のサウジアラビア代表とのラスト2戦を前にして、一気に苦境に陥ることになる。

「イラク戦にどういう形で行くか分かんないですけど、相手にエネルギーのある状態の前半に苦戦しているんで、そこで何ができるかを考えなければいけない。同じような前半の戦いをしてしまったら、次はアウェイだし、得点を捉える可能性はあるかなと。ちょっと危機感を抱いていますけどね」と長友はチーム全体に警鐘を鳴らした。

CKの流れから失点を喫した [写真]=Getty Images

 敵地でのゲームで絶対にやってはいけないのが、先に失点することだ。シリア戦では後半立ち上がりの重要な時間帯に、課題のリスタート絡みの攻めから右のアムロ・ジェニアト(6番)にクロスを入れられ、2年ぶり先発の昌子源(鹿島アントラーズ)の頭を超えてマルデク・マルドキアン(19番)に叩き込まれるミスを犯してしまった。

「まずサイドでかわされてフリーの状態で入れられたってことが問題。そこを修正しないと。中では何でも起こり得るんでね」と長友はクロス対策をより徹底していくことの重要性を口にした。試合会場のパススタジアムはピッチ状態が悪く、少しのミスが致命傷にならないとも限らない。シリア戦以上に守りの共通意識を持って戦う必要があるだろう。

 攻撃の方は香川不在の穴をどうするかが問われるところ。前日は倉田秋(G大阪)が代役として出場。前半は今野とインサイドハーフを形成した。後半からは本田が入って倉田・本田という並びになったが、この時間帯が日本の攻撃が最も機能した。それは長友も認めているポイントだ。

「圭佑が代表でインサイドハーフをやったことがあるのか、初めてなのか分かんないですけど、チームに左利きがいるってことは大きい。僕の左サイドからしたら、彼が中で左足でボールを持って左サイドにサイドチェンジできる分、やりやすかった。あれは大きな武器にあるというか、また違った展開が生まれるなと感じました。あそこを極めたら、あいつ面白いことになるんじゃないかと個人的には思いますけどね。チームとしても良さが生きるんじゃないかなっていうのは感じました」と同じミラノで励まし合った盟友も本田の右インサイドハーフでの起用に太鼓判を押していた。

本田圭佑

後半開始から久保に代わりピッチに立った [写真]=Getty Images

 実際、イラク戦は香川が不在。4-3-3を継続するのであれば、今野、倉田、本田のうちの2人を選ばなければならない。今野はピーク時に比べるとまだコンディションが上がり切っていないものの、ゴールという結果は確実に残すなど、ここ一番で絶対的な勝負強さを発揮する。その彼と本田が組むのが最も安心感の高い組み合わせと言えるかもしれない。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督がどんな決断を下すかは未知数だが、本田のインサイドハーフが現実となれば、長友はより親友を献身的にサポートしていく役目を担うことになる。奇しくも6月13日は本田の31回目の誕生日。本田も長友もこの1年、辛く過酷な時間を過ごすことが多かっただけに、新たな1年の一歩は清々しいものにしたいはず。日本代表をロシアへ導く行くべく、彼ら30代の2人には次のイラク決戦でより強固な結束を示してほしいものだ。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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