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【コラム】日本代表の攻撃に加わった“彩り”…乾貴士が示した新たな可能性

2017.06.08

2年2カ月ぶりに代表復帰の乾。シリア戦はドリブルで観客を魅了した [写真]=兼子愼一郎

 背番号11が左サイドでボールを受けると、東京スタジアムに詰めかけた4万人を超える観客がざわめく。

 煮え切らない試合展開の中で、ボールが収まる“安心感”とゴールを予感させる“期待感”を与えてくれたのが、2年2カ月ぶりに代表へと戻ってきたMF乾貴士エイバル)だった。

 カットインからのスルーパスで意表を突けば、サイドバックのオーバーラップをシンプルに使って好機を演出することもできる。また、ロングレンジのボールをピタリと足下に止め、絶妙な間合いを保っていたDFを抜き去ったかと思えば、緩急を使ったドリブルで相手守備陣を翻弄する場面も――。

 戦うところは戦いながらも、そのプレーからはどこか「余裕」が感じられる。それは、スペインの地で得た「自信」と言い換えられるのかもしれない。

 指揮官からは「どんどん裏を狙え」という指示を受けてピッチに送り出されたが、「ミスが続いていたので、落ち着かせるところは落ち着かせながらやらないといけない」、「(長友)佑都くんが裏を狙ってくれていた」と状況を冷静に分析し、自身の立ち位置を考えながらゲームをコントロールした。

 また、左サイドの連携について、乾が「中に入ったときに佑都くんが良いタイミングで上がってくれる」と語れば、長友も「あいつが上手いから僕は走ればいいだけ。好きな形でやらせれば走ればボールは出てくる」と全幅の信頼を寄せる。

 同じ左サイドを主戦場とする原口元気とは、また違うリズムと感性で日本の攻撃に“彩り”を加え、新たな可能性を示した。この日は30分ほどのプレー時間だったが、痛めていた右足首も「問題ない」とのこと。13日のイラク戦で先発する可能性は低いかもしれないが、試合の流れを変える重要な存在になることは間違いないだろう。

取材・文=平野由倫

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