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【コラム】酒井宏樹がハリルと“個人特訓”…イラク戦に向け久保との右サイド連携強化を

2017.06.03

日本代表の久保(左)と酒井宏樹(右)[写真]=野口岳彦

 28日にスタートした千葉県内での日本代表欧州組合宿も1週間が経過した。3日は2日前合流の本田圭佑(ミラン)と前日から参加の香川真司(ドルトムント)、長友佑都(インテル)の3人だけが午前練習に参加。500人の観客が集まる中、ハードな走りのメニューを精力的にこなした。

 午後はファンの数が2000人に膨れ上がる中、午前中不在だった川島永嗣(メス)、吉田麻也(サウサンプトン)ら13人が参加。DFBポカール決勝のフランクフルト戦で打撲した臀部の痛みを訴えた香川と右アキレス鍵の軽い痛みを抱える浅野拓磨(シュツットガルト)が欠席し、右足を痛めている酒井宏樹マルセイユ)が別メニュー調整となった。他の12人は2対2のサッカーバレーを行うなど、リラクゼーション的な軽い練習をするにとどめた。「今日は軽かったんで、だんだん調整してきている感じです」とベルギーリーグでフル稼働した久保裕也ヘント)もコンディションが上向いている様子だ。

 こうした中、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は酒井宏樹を直々に呼び出し、右サイドバックの動き方を熱っぽく指導した。右FWに一旦ボールを預け、その選手が中に入った瞬間に大外を上がっていく形のみならず、自らリターンパスをもらってドリブルで中央に入り込み、ペナルティエリアまで侵入していくような積極的な動きも要求されていた。

「ああいうオプションもあるということだと思います。フランスのサイドバックを見ても、中に切り込んで行ける選手が多い。モナコの選手(アンドレア・ラッジ)なんかはホントに点につなげたりしてますし、やれれば理想。ただ、自分はあくまでサイドバックなんで、スペースが空いたから行くっていうプレーにしたいですし、前の選手の動きがあってこそなんで、そこは順序は変えずにやりたいと(ハリルホジッチ)監督とも話してます。ただ、そういうプレーを見たいってことなんでしょうね」と酒井宏樹は指揮官の意向を受け止め、実践すべく努めていく構えだ。

ハリルホジッチ監督から直接指導を受けた [写真]=元川悦子

 実際、彼と久保が形成する右アウトサイドは日本の新たな生命線になりつつある。3月の2018 FIFAワールドカップロシア・アジア最終予選のUAE戦(アルアイン)でも酒井宏樹の縦パスに反応した久保が相手DFの背後に侵入。そのまま電光石火の先制点を叩き出している。6月13日のイラク戦(テヘラン)はピッチの悪さが問題視されているだけに、UAE戦の先制点のようなシンプルな攻めが有効になってくる。そこは酒井宏樹もしっかりと認識しているという。

「(イラク戦では)ホントにチーム全体としてゴールに直結するプレーが大事になってくると思います。簡単にシュート打つところで打つとか、セカンドアクションも大事になってきますし、アクシデントが起きた時の対応力も求められてくる」と彼は言う。

 久保自身も「前回のタイ戦(埼玉)の時は自分なりに(連携が)うまくいったかなという感じはしますけど、もっとボールを受けられる気がするし、いい状況でチャンスを作れるとも思います。自分が右サイドの経験が浅い分、もっとできる感じはしてます」と前向きに言う。酒井宏樹からの縦パスがより多く入るようになれば、久保自身がベルギーで培った個人的な仕掛けや突破力を生かせる場面も増えてくるだろう。

「裕也はガンガン行くタイプで、自分で仕留める気持ちが強いんで、そこは生かしてあげた方がチームのためになる」と左サイドに陣取る原口元気(ヘルタ・ベルリン)も強調していたが、今の日本代表攻撃陣は久保をどう使うかが重要なポイントになってくる。そのキーマンを一番近くでサポートする酒井宏樹の頭脳的かつ戦術的プレーはやはり必要不可欠だ。

 アルベルト・ザッケローニ監督時代は右の内田篤人(シャルケ)と岡崎慎司(レスター)、左の長友と香川がそれぞれの持ち味を出していいコンビネーションを築いていた。とりわけ長友と香川は「日本の生命線」と言われ、2014年のワールドカップブラジル大会でも対戦国に徹底マークされたほどだった。あれから3年が経過して、日本代表の世代交代は本格的に進みつつある。酒井宏樹・久保という新コンビは新たな流れの象徴の1つと言っていい。

 ハリルホジッチ監督は5日の全メンバー集合時から具体的なイラン戦対策に入ると見られるが、その中でこの2人がそれぞれの特徴をより理解して、息の合った動きを披露していくことが肝要だ。今回の6月2連戦は右サイドにフォーカスしながら、チームの成否を見極めるべきだ。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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