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【コラム】移籍前に代表でアピールを…本田圭佑に立ちはだかる久保裕也の牙城

2017.06.01

日本代表に合流した本田圭佑 [写真]=元川悦子

 6月7日のシリア戦(東京)、13日のイラク戦(テヘラン)に向け、5月28日から千葉県内で続いている日本代表欧州組合宿。午前中は前日に合流した原口元気(ヘルタ・ベルリン)と右足首痛で別調整の続いている乾貴士(エイバル)が参加。乾は走ること自体は問題ないということだが、依然として様子見が続いている状況で、この日も午前だけでトレーニングを切り上げ、午後はホテルで痛みを取る治療に専念した。

 一方、午後は原口に加え、午前中を休んだ川島永嗣(メス)、吉田麻也(サウサンプトン)、加藤恒平(REC・ペロエ・スタラ・ザゴラ/ブルガリア)ら9人と、同日昼から合流した本田圭佑(ミラン)の11人が参加。本田だけは21分間走などランニングメニューに専念し、他の10人はスクエアパス、25×25メートル程度のグリッドでの5対5、ピッチの3分の1を使った3対3、クロス&シュートなどを2時間にわたって消化した。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は練習回数を減らした分、1回の密度を濃くしたようだ。

 この日の注目はやはり本田。練習場には報道陣が大挙して押し寄せ、スタンドにも1000人近い観客が詰めかけるなど、やはりエースの存在感と人気は健在だった。とはいえ、その大黒柱も今シーズンはミランでセリエA8試合出場1得点、出場時間はわずか262分という悔しい結果に終わった。5月21日のボローニャ戦、28日のカリアリ戦のラスト2試合には先発したものの、ミランとの契約延長を勝ち取れず、退団が決まった。

 新天地については、スペインのレバンテ、イングランドのハル、メジャーリーグ・サッカー(MLS)のシアトル・サウンダーズなどさまざまな憶測が流れているが、「今はあんまり絞っていない。幅を広めに自分の頭の中は柔軟にしていて、どんな話を聞いてみようという心構えでいます。でも現時点では自分が納得いくクラブからのオファーは来ていない」と未知数であることを明らかにし、じっくりと選んでいくつもりのようだ。

 行き先についても「日本は正直、考えていない」とJリーグ復帰だけは否定したものの、それ以外の欧州、アメリカ、中国などは可能性があるようだ。「試合に出ることを優先して移籍をしたことが過去にない。自分が面白い、成長できる、刺激的でつねに挑戦心を持っていけることを大事にしてるんで、それ(出場機会)がトッププライオリティになるわけではない」と本人は語っており、2018年のロシア・ワールドカップを1年後に控えた重要なシーズンでも出番より自分のやり甲斐を重視したいという。

 いずれにしても、より理想的な移籍先に辿り着くためにも、日本代表での活躍は欠かせない。2016年11月の最終予選・サウジアラビア戦(埼玉)で久保裕也(ヘント)に右サイドのポジションを奪われて以来、本田は3試合連続でベンチスタートを強いられている。今シーズンの久保はスイスのヤングボーイズからベルギーのヘントに移籍し、シーズン通算(リーグ・カップ戦含む)で20ゴールを超える得点を叩き出していて、ゴール前の切れ味の鋭さは折り紙付き。その久保から定位置を奪回するのは容易なことではない。

「フィジカル的には問題はないですけど、感覚的なものはやってみなければ分からないところもありますし。そこは(3月の代表戦と)変わらないですね」と本田も自身のパフォーマンスを未知数だと捉えていて、どこまでインパクトを残せるか分からないようだ。ボローニャ戦で直接FKを決めたのは朗報と言えるが、それだけでは久保の牙城を崩せるという説得材料にはならない。だからこそ、欧州組合宿からのいいアピールが求められるのだ。

 さしあたって今回は親善試合のシリア戦がある。それは本田のようなクラブでの出場機会に恵まれていない選手には非常に大きなチャンス。昨年11月の時は、オマーン戦(鹿嶋)で体が重く、動きにもキレがなかったため、次のサウジアラビア戦でスタメンの座を失ったが、その教訓を生かせるかどうかが勝負になってくる。

 ピッチ外ではつねに移籍問題が付きまとうだろうが、原口のように雑音を封印して、日本代表でのプレーに集中すること。それが今の本田に第一に求められるテーマと言っていい。背番号4にはかつてのギラギラ感をピッチで思い切り表現してほしい。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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