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【コラム】市丸瑞希と原輝綺…“ほこ×たて”コンビが敗戦の中で見出した可能性

2017.05.25

ボランチでコンビを組んだ市丸瑞希(左)と原輝綺(右) [写真]=Getty Images

 市丸瑞希(ガンバ大阪)と原輝綺(アルビレックス新潟)。攻撃センスに関してこのチームで随一のものを持つ市丸と、守備と運動量に関しては傑出した力を持つ原。内山篤監督がウルグアイ戦に向けて選んだ先発のボランチは、言ってみれば“ほこ×たて”コンビ。「役割分担が明確になる二人」(原)だった。

 このコンビ自体は機能した。強力なウルグアイの中盤に対し、市丸はボールを持てば違いを作って危険なパスを供給し、原は潰し役として存在感を示した。


「消極的になったらもっとやられていたと思いますし、丸くん(市丸)も自分も積極的に縦パスだったりを入れられていたと思います。守備の部分でも積極的に奪いにいけていたというのは、消極的になるよりは良かったと思います」(原)

 特にハーフタイムで「丸くんが『ビルドアップはお前に任せて、俺は一個前に上がる』という話をしてきた」(原)と、後ろに原が残って、市丸が前に出るという関係性をハッキリさせてから二人の機能性は高まった。原は何度もボールを奪い取り、市丸は前線に近い位置で怖さを出す。逆に原が普段は後ろに残るからこそ機を見て前に出るプレーの実効性も上がり、攻撃に加わってサイドの崩しを演出するようなシーンも見せた。

 そこは原が「いい関係をこの短時間で築けた」と語り、市丸は「(原が)バランスを取ってくれるんで、自分は結構自由にやれた。好きにボールを受けてさばいて、前に出て行けたりもできた」と前向きに語る小気味良いリレーションシップが成立していた。

 とはいえ、結果は0-2。敗北である。二人ともその結果をシリアスに受け止めていたのも印象的だった。

「相手はワンチャンスで点を決めてきた。そういう差がワールドカップではある。アジアの時はそれで通用したかもしれないですけど、W杯ではやっぱり通用しないと感じました」(市丸)

「違いを見せ付けられた。組織で守れば(チームとしては)やれない相手ではないと思いますけれど、個で観たときには圧倒的な差がある」(原)

 そろって淡々とした語り口で試合を冷静に振り返るタイプだが、言葉の端々には悔しさがにじんだ。狙いとしたサッカーができていた時間帯は確かにあって、組んだ経験の浅い二人とは思えぬコンビネーションも見せていた。しかしそれでも、届かないと感じさせる差があった。

 これがチームとしての狙いを外され、コンビネーションが機能せずに負けたのであれば、違った感想も出てきただろう。試合を通じて突き付けられたのは紛れもなく「個人の差」(原)。世界の壁などというフレーズは軽々しく使うべきではないが、しかし二人が感じたのはまさにそうした言葉で表現されるべきギャップだったのも間違いない。

 そして、この二人が持つ資質が問われるのはこれからだ。この試合の中でも二人は相手を観ながら、お互いを観ながらプレーを修正し、調整しながらチームパフォーマンスを向上させていた。あらためて次戦に向けては、さらなるバージョンアップを考えてくれるはず。個の身体能力では勝てない相手かもしれないが、思考力や修正力でも勝てないとは限らない。

 少々急造気味に誕生した“ほこ×たて”コンビが確かな可能性を見せたウルグアイ戦。真に注目すべきは、突き付けられた結果を受けて、さらなる進化と変化をしていけるかどうか。その一点にこそある。

文=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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